《冷たい部長の甘い素顔【完】》第23話 真由とオフィスにて

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10月5日   金曜日

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水曜日、あんなに私をドキドキさせた部長は、昨日も今日も、平常運転。

銀縁眼鏡の奧から注がれる視線は、私にも真由にも服部さん達にも、変わらず冷たかった。

月曜も水曜も全部が夢だったのかと思う程。

だけど、今日は、約束の金曜日。

嬉しいような、怖いような、複雑な気分。

部長は、何であんなに勘違いさせるような事をするの?

私ばっかり、ドキドキさせられて、ちょっと悔しい。

部長は、堅格に難ありの為、獨だという噂があるけど、もしかしたら、遊びが激しすぎて、未だ獨なの?

じゃなきゃ、私なんかにあの態度はあり得ない。

大人の余裕?

なんか、悔しい。

「そういえば、爽、今日、かわいいね。もしかして、デート?」

仕事が一段落して、席で2人でコーヒーを飲んでいると、真由が尋ねた。

「まさか! 相手がいないよ。」

部長は、そういう相手じゃない。

勘違いしちゃダメ!

「えぇ!? 爽なら、その気になればすぐに彼氏できると思うけどなぁ」

真由はあっけらかんと言う。

「………その気になれないもん」

もうはしないって決めたんだから。

「まだ引きずってるの?」

真由は、心配そうにこちらを見る。

「引きずってるわけじゃないけど、もうは懲りたなと思って。私は一生獨で、仕事を頑張るよ」

うん、それが1番いい。

「ちなみに……」

と真由は聲を潛めた。

「服部さん、絶対、爽の事、好きだよ」

「え!?」

驚いた私は、思わず、大聲を出してしまった。

「ふふふっ。爽、鈍いから、気づいてなかったでしょ? 爽からったら、二つ返事でOKするよ」

……知らなかった。

いや、でも、それって……

「真由の思い過ごしじゃないの?」

「ふふっ、そんなことないよ。あんな分かりやすい態度、爽以外、みんな気づいてるよ」

真由は、けらけらと明るく笑う。

ところが、そこへ、冷たい風が吹き抜ける。

「沖田、園部、喋ってる暇があったら、手をかせ!」

部長の低い聲は、場の空気を凍らせる。

「はい! すみませんでした」

私が謝ると、真由も無言で頭を下げる。

口を閉じた私たちは、再びカタカタとキーボードを打ち始めた。

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