《冷たい部長の甘い素顔【完】》第28話 部長は何で部長?

車は高速に乗る。

「部長は、何で部長なんですか?」

部長は、まだ35歳。部長より年上の社員はたくさんいる。なのに、なんで部長だけ、そんなに出世が早いのか……

「くくっ、

何だ、それ?

ロミオとジュリエットみたいだな」

部長は、ハンドルを握って、前を向いたまま笑う。

「だって、部長、まだ若いじゃないですか? 何でそんなに早く部長になれたのかな?と思って……」

仕事ができるのは間違いないかもしれないけど、それだけじゃ、こんなに突出して出世できない気がする。

「俺は、社が早かったからな。うちの會社、社長が起こしてから、まだ20年しか経ってないだろ? 俺は、10年以上前からいるけど、その頃はまだ家族以外の正社員が5人しかいなくてさ。人が全然足りなくて労働條件も過酷でかなりブラックだったから、その頃いたメンバーで殘ってるのは俺と東堂とうどうさんだけなんだよ。社員が増えるに連れ、古參の社員が必然的に管理職になっただけだよ」

部長は、何でもないことのように、さらりと説明する。

「へぇ〜。そうだったんですね。でも、商品部の東堂部長は、もうし年上ですよね?」

確か、40代って聞いたことがある。

「ああ、俺より6つ上だよ。あの人は28で社してるからな」

ああ、私と真由みたいなものか!

「でも、すごいですね。10年ちょっとで、従業員1000人超えるなんて」

きっと、大変なこともたくさんあったはずなのに。

「パートやアルバイトが多いからな。正社員は300人もいないはずだぞ」

そう言いながら、部長は、ドアミラーに目をやって、車線変更をする。

「それでも、すごいですよ。部長たちが頑張って來てくれたからなんですね」

大勢の社員が頑張りきれなくて辭めてく中、辛くても頑張り抜いたから、部長の今の役職があるってことでしょ。

「すごいのは、社長だよ。あの人がここまでみんなを引っ張って來たんだ」

それまで、冷靜だった部長が、年のように語る。

ふふふっ

微笑ましくて、思わず、笑みがこぼれる。

「部長、社長を尊敬してるんですね」

「お前は、してないのか?」

部長、不思議そうに尋ねる。

「んー、もちろん尊敬はしてますよ。社長は、好きですし、すごい人だとは思います。ただ、仕事での接點がないからでしょうね。部長ほどではないと思います」

私は、正直に答える。

すると、部長は、ちらりとこちらを見遣って、

「まぁ、そうかもな」

と小さく笑った。

無口だと思ってた部長だけど、全然、會話が途切れない。

ドライブ、すごく楽しい。

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