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10月1日   月曜日

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俺は、社長の鶴の一聲で、無事、企畫部に異することができた。

その初日の18時。

さて、無事、企畫部に異にはなったけど、どうやって園部 爽を落とそう！？

俺は、休憩時間にコーヒーを飲みながら、ひとり思案していた。

すると、そこへ、彼、園部 爽が現れた。

「あ、部長、こんな所にいらっしゃったんですね！

探しましたよ〜！

先程の資料、こんなじで大丈夫ですか？」

彼は、明るい笑顔を浮かべて、人懐っこく歩み寄ってくる。

企畫部全員が、俺を恐れて、腫れをるように近づいてくるのに、彼1人だけが、平気な顔で話し掛けてくる。

俺は、きっと、彼のこんなところに惹かれたんだ……

「手直しする所があったら、すぐに直すので、おっしゃってくださいね」

にこにこと笑顔を浮かべて話す彼は、やはり誰よりもかわいい。

「いや、よく出來てる。

數字はここでは確認できないが、完璧か？」

俺は、うっかり緩みそうになる頬の筋を引き締めて、いつも通りの厳しい上司を演じる。

「はい！

數字だけは、何度も確認したので大丈夫なはずです」

し褒めるだけで、とても嬉しそうに笑う。

このままこの笑顔が、俺のものになったら……

そう思うけれど、そんな簡単にいくものじゃないことくらい、俺にだって分かってる。

「得意なのは、男漁りだけじゃないんだな。

安心した」

思わず口をついて出たのは、全くかわいげのない憎まれ口だった。

好きな子に無意識に意地悪するなんて、俺は小學生か！

「あ、あの、部長………」

一瞬で彼の顔から、笑顔が消えて、あたふたとうろたえた表を浮かべる。

でも、焦る彼もかわいくて仕方ない。

「俺は、仕事さえ出來れば、プライベートに首は突っ込まん。

堅でも軽でも構わないから、気にするな」

なおもめるとは、我ながら大人げない。

これじゃ、彼を落とすどころか、嫌われてもおかしくない。

けれど、ずっと仕事漬けで経験値の低い俺は、こんな時、気の利いた言葉のひとつも持ち合わせていない。

「あの、それについては、出來れば言い訳をさせていただきたいです」

言い訳？

何か理由があるのか？

合コンに？

「俺は、構わないと言ってるんだから、言い訳は必要ないだろ？」

好きなが合コンに行く理由なんて、聴きたくはない。

「いえ！

私の尊厳に関わりますから。

部長、この後、お時間ありますか？」

これ、どういう意味だ？

社で…ってことか？

それとも社外で…ってこと？

「俺は、プライベートでいくら男漁りしても構わないと思ってるが、社でナンパはいただけないな」

彼がほぼ初対面の男をうだとは思いたくはない。

けれど、社外だとすれば、またとない初デートのチャンスでもあるわけで……

「っ！！

違います！

誰が、部長なんかナンパするんですか！？」

これ以上、怒らせちゃダメだ。

俺の頭の中で、何かが警告を鳴らす。

けれど、これまでの全てを、なかったことにする技量も、持ち合わせてるわけでもなく……

「くくっ

  『部長なんか』？」

結局、ツッコミをれることしかできない。

「あ、いえ、今のは言葉のあやで……

とにかく、説明させてください！」

俺は、卑怯だとは思ったが、必死になる彼の弱みに付け込むことにした。

というより、他にと接點を持つ方法を知らなかった。

「まあ、いい。

30分後に駐車場で待っててやるよ」

俺は、偉そうに待ち合わせ場所を指定する。

「ありがとうございます」

彼は、ぺこりとお辭儀をして席に戻っていった。

あれ？

これは……

もしかして、初デート！？

だったら、今度こそ、ちゃんと彼を思いやってかわいがらなくては！

そもそも、俺は、社での評判は、はっきり言って、全く良くない。

むしろ、悪い。

ただでさえ、不利な條件なのに、これ以上、自分の株を落とすわけにはいかない。

俺は、殘ったコーヒーを一気に飲み干すと、席に戻って、さっさと殘った仕事を片付ける。