《冷たい部長の甘い素顔【完】》將軍編 第4話 短いドライブ

30分後、俺が席を立つのを見て、彼はパタパタと後をついて來た。

俺は、駐車場で追いかけてくる彼を待つ。

車の助手席のドアを開けると、彼に乗るように促した。

は、張した面持ちで、おずおずと乗り込む。

そうだよな。

普通、ほとんど面識のない男の車には、乗らないから、張するよな。

上司だから信用してるんだろうが、そうじゃなきゃ、何をされるか分からない危険もあるんだし。

俺は、助手席のドアを閉めると、運転席に乗り込み、たまに會食で使う創作和食のレストランに向かう。

ところが、俺が運転していると、彼の俺をじっと見つめる視線をじた。

なんだ?

照れるな……

「くくっ

そんなに見たら、が開くだろ?」

俺は、照れ隠しにそんな事を言ってみる。

すると、

「部長、笑うんですね!?」

と、彼は目を丸くして驚いていた。

まずは、そこからなのか!

「くくっ

お前は、俺を何だと思ってるんだ?

仕事を離れれば、俺だって笑うことくらいある」

俺がそう言うと、

「すみません。

あまり部長が笑ってるイメージがなかったもので……」

し落ち込んだ彼の聲。

しまった……

また、彼を萎させてしまったかもしれない。

「まぁ、會社では、そうかもな」

俺は、しでも優しく聞こえるように、穏やかにトーンを落として話してみる。

すると、なぜか、さっきとは打って変わって、明るく楽しそうな聲で話し掛けてくる。

「ねぇ、部長。

今から、どこに行くんですか?」

それをけて、俺も答えるが、いかんせん、と何を話せばいいのか、よく分からない。

「腹減ったから、メシ」

と、必要最低限の答えしかできない。

けれど、彼は、そんなことお構いなしで、どんどん話し掛けてくる。

「どこですか?

私、あんまり手持ちがないんで、出來れば、リーズナブルな所がいいんですけど……」

そうだ。

は、そういうだった。

変に気負わなくても、彼となら大丈夫だと思えてくる。

「くくくっ

お前、面白いなぁ。

俺にそんな事言う奴、初めて會った」

俺は、田代たちといる時のように、素の自分でいようと、心に決めた。

「え?

私、変な事、いいました?」

が、きょとんと、こちらを見ているのが、運転中の目の端に映る。

「いや、別にいい。

金は気にするな。

奢ってやる」

初めから、金を出させるつもりなんて、頭ない。

「えっ!?

いいんですか!?

やったぁ!

じゃあ、高くてもいいですよ」

かわいい!

素直にはしゃぐ姿は、とても好が持てる。

でも、普通に、普通に……

俺は、自分に言い聞かせる。

「くくくっ

お前、そこは普通、

『えぇ!? いいです。払いますよ〜』

って言う所じゃねぇの?」

俺は、返事をするものの、もう、何が普通なのかも分からなくなってくる。

「部長は、そういうワザとらしい遠慮するが好みなんですか?」

しふてくされたようにも聞こえる彼の返事は、とてもかわいらしい。

「いや、思ってもいない事を言う奴は苦手だ」

そんな風に、こびを売るも。

「じゃあ、いいじゃないですか。

の子は誰だって、奢ってもらえたら

ラッキーって思ってますよ」

は、さも當然と言わんばかりにを張る。

「くくっ

正直だな」

「はい!

それが私の唯一の取り柄ですから」

「くくく……」

の言のひとつひとつに、笑みがこぼれる。

そんなこと、自慢しなくても、ちゃんと分かってる。

それに、お前のいいところは、それだけじゃない。

こんな風に仕事以外の會話ができる日が來るなんて、1ヶ月前には思ってもみなかった。

店の駐車場に車を止め、店にろうとすると、彼は、

「わぁ!

ここ、來てみたかったんですよ!

ありがとうございます!!」

と、とても素直に喜んでくれる。

こんなに嬉しそうにしてくれるなんて、ここに連れてきてよかった。

    人が読んでいる<冷たい部長の甘い素顔【完】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください