《冷たい部長の甘い素顔【完】》その後 第3話 子育てを早く終えるために……

「初めは、秦野くんのフォローを東堂くんにしてもらおうと思ってたんだ。

けど、東堂くんは、に流されやすいし、秦野くんより年上だから、年下の秦野くんの下で働くのは、的にやりきれない部分もあるかもしれない。

どうしようかと思ってた所に、爽さんが面接で現れたんだ。

それはもう、絶対この子だと思ったよ」

社長は、こちらを見て、うんうんとうなずきながら話す。

「ところが、突然、秦野くんが爽さんを好きだって言うから、まぁ、驚いたのなんのって。

私は、もうこれは運命だと思ったね」

社長は、終始笑顔で、とても楽しそうに話してくれる。

「もちろん、今すぐどうこうと言うわけじゃない。

これから數年は妊娠、出産もあるだろうしね」

そう言って社長は、満足そうにうなずく。

「とりあえず、將來、この會社を背負う覚悟と気概を持って、仕事に取り組んでほしいって事を今日は言いたかったんだ。

秦野くん、爽さん、頼んだよ」

ええ!?

頼んだって言われても……

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する私の橫で將軍さんは、背筋をピッとばし、姿勢を正す。

「はい。

一杯、努力します」

ええっ!?

將軍さん、そんなに簡単に返事をしないでよ。

いまだ困しきりの私は、聲すら出すことができない。

「ま、奧さんを説得するのは旦那様のお仕事と

  いう事にしておこうかな」

社長はこちらを見てにこりと微笑んだ。

・:*:・:・:・:*:・

帰宅後、私はお茶を飲みながら、將軍さんに尋ねる。

「社長、本気なのかな?」

絶対にあり得ないんだけど……

「本気じゃなきゃ、あんなこと、言えないだろ?」

將軍さんは、そう言って、湯呑みに口をつける。

それは、そうなんだけど……

「でも、私には無理だよ」

クラス委員を決めるのとは、わけが違うんだよ!?

會社って、経営者次第で、倒産したりするんだよ!?

「爽は、以前から社長と世間話をする事に、全く抵抗はないだろ?」

「うん」

將軍さんは、なぜか関係なさそうな話を始める。

「沖田とか服部とかはもちろん、他の部署の平社員とも仲良くできてる」

「まあ、それなりに」

だから?

そんなの、誰だってできると思うんだけど……

「そしたら、その間を繋ぐパイプ役ができると思うんだ」

將軍さんは、そう言ってくれるけど……

「でも、そんな事ができても、経営の事は分かんないし」

そりゃあ、データを取り扱ってるから、社の業績や傾向は分かるけど……

「それは、これからおいおい分かっていけばいい事だよ。

爽は、俺が企畫部に行った時、歓迎會してくれただろ?

ギクシャクしてた部長と部員の中を取り持とうなんて、普通は考えないけど、爽は違うんだ。

社長が言ってたのは、そういう事だよ」

そうなのかなぁ。

私は、いまいち、納得出來なくて、せっかく一緒に出したお茶請けのお煎餅も食べる気になれない。

「ま、慌てなくても10年後位の気楽な気持ちでいればいいよ。

子供ができて子育てが落ち著くまでは、きっとこのままでいいから」

そっか。

「うん」

社長も、出産がどうこうって言ってたもんね。

し、ほっとして、私がお茶を飲もうとすると、

「じゃ、そういう事で」

と、言って將軍さんは、私から湯呑みを取り上げた。

へっ!? 何!?

する私を、將軍さんは、突然、抱き上げて寢室へと向かう。

「ちょっと、將軍さん!?」

「子育てを早く終えるためには、まず子作りだろ?」

將軍さんは、にっこり笑って、抱き上げたままの私の頬にちゅっと音を立ててキスをする。

えっ?

ええっ!?

將軍さんは、そのまま私をベッドにそっと下ろすと、會社では絶対に見せない極上の笑みを浮かべる。

「明日も休みだし、ちょっとぐらい夜更かししても平気だよな?」

えっ……それって、つまり……

將軍さんは、すでに私の足をまたいだ狀態で膝立ちになり、そのまま左手を私の顔の橫につき、右手で髪を優しくでながら、嫣然と微笑んでいる。

うん、男なのに、嫣然とって言いたくなるくらい、艶やかな微笑み……

だから、私はこう言った。

「ほんとにちょっと?」

すると、將軍さんはくすりと今度はいたずらっ子のような笑みを見せる。

「んー、爽がかわいすぎるから、ちょっと

  じゃなくなるかも」

敵わないなぁ。

私なんかより、將軍さんの方が何倍も素敵なのに……

私たちは、その晩、心ゆくまで仲良く夜更かしをした。

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