《冷たい部長の甘い素顔【完】》その後 第9話 貧

それからしばらくして、將軍さんに、現地視察の出張がった。

2週間、候補地を回り、契約を締結してくるらしい。

當然、あの金髪、西野さんも一緒。

私もついて行きたい。

でも、そんなわけにはいかない。

會食に同行するのとは、わけが違う。

でも…… 

將軍さんは大丈夫だとは思っていても、泊まりで2週間も西野さんと一緒だと思うと、心穏やかではいられない。

そうして心に不安があるせいなのか、ここのところ、食もかなり落ちていた。

將軍さんのために食事は作るものの、私は簡単にお茶漬けとトマトで過ごすことが多くなっていた。

「爽、最近、毎日、トマトだけで生きてないか? ちゃんと食べないと夏バテするぞ。今度、鰻でも食べに行こう」

心配した將軍さんは、そう言ってくれるんだど、鰻なんて、全然食べたくない。

きっと、あの金髪さえいなくなれば、私の食も復活すると思うんだけど……

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7月29日 月曜日

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7月29日。

出張當日の朝、心配しつつも、私は、將軍さんを送り出す。

「いってらっしゃい。気をつけてね」

「爽も、気をつけて。俺がいなくても、ちゃんと食べるんだぞ」

將軍さんは、そう言ってぎゅっと抱きしめてくれる。

そして、昨夜から何度したか分からないキスを繰り返す。

まるで2週間分をまとめてしてるみたい。

「ん……

將軍さん、そろそろ行かなきゃ」

私が、將軍さんのを押し返すと、將軍さんは私の髪をすくように指を差しれる。

「爽も連れていければいいのに」

出來ることなら、私もそうしたいけれど……

私は、將軍さんを見送り、いつも通り、會社へと出勤する。

今頃、將軍さん、空の上かな?

そんなことを思いながら、仕事をこなしていく。

夕方、18時。

仕事を終えた私は、機上を整えて、席を立つ。

「お先に失禮します!」

そう口にした直後、突然、目の前が闇に包まれた。

「爽!? 爽!!」

遠くで、真由がんでる。

そんなに大聲を出さなくても聴こえるのに……

しばらくして、私が目を開けて、驚いた。

何、ここ?

目の前に心配そうな真由の顔がある。

「爽、気がついた? ける?」

けるって、大袈裟な……

けるに決まってるじゃない。

その時、気づいた。

私が、自分の席のそばの床に寢ていることに。

なんで?

私が、床に手をついて起き上がろうとすると、真由がそれを止めた。

「もうすぐタクシーが來るから、もうし、このまま休んでて」

タクシー?

なんで?

そこへ、専務がやってきた。

「爽さん! 良かった。気がついたのね?

タクシーが來たから、一緒に病院に行きましょう」

そこまで聞いて、ようやく気づいた。

私、倒れたんだ。

將軍さんの出張が決まってから、ずっと食がなくて、トマトしか食べてなかったもんな。

將軍さんがいない時で良かった。

將軍さんがいたら、きっと心配させちゃうから。

私は、真由に支えられて、ゆっくりと起き上がる。

帰り支度はしていたので、そのままバッグを持って、専務と一緒にタクシーに乗せられた。

近くの救急外來に連れて行かれ、問診票に記する。

現在の癥狀、通院歴、既往歴……

順に記していき、最後の質問で、手が止まった。

『妊娠の可能

これ、可能はゼロじゃない……よね?

私は、“あり”に丸を付ける。

最終月経は……

覚えがない。

これ、もしかして……

その後、診察の先生は、問診や聴診の前に、まず、尿検査の結果を差し出した。

「この線、見えます?ですよ。

おめでとうございます。

妊娠されてますよ」

なんて言えばいいんだろう。

嬉しい。

でも、それ以上に不安の方が大きかった。

將軍さんに會いたい。

將軍さんに伝えたい。

なんで、こんな時に2週間も將軍さんに會えないの?

「産婦人科へ紹介狀を書いておきますね。とりあえず、検査の結果、鉄欠乏でしたので、増剤を出しておきます」

いろいろ説明をしてくれるけれど、なんだか上の空で、あまりよく覚えていない。

産婦人科……

將軍さんと一緒に行きたかったけど、こんな狀態で2週間も放置して、お腹の子に何かあったら、將軍さんにも申し訳が立たない。

どうしよう……

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