《冷たい部長の甘い素顔【完】》その後 第14話 帰宅

私たちは、西野さんを見送ると、仲良く手を繋いで帰路に就く。

電車に乗ると、將軍さんは優先席にひとつだけ見つけた空席へと、真っ直ぐに向かう。

「爽、ほら」

將軍さんは、勧めてくれるけど……

「ダメだよ。ここ、優先席だから」

私は手を振って斷る。

お年寄りが來たら、立てばいいのかもしれないけど、なんとなく白い目で見られる気がして、座る気にはなれない。

すると、將軍さんは、首を振って、さらに続けてる。

「優先席だからだろ? ここは、妊婦も座っていいんだよ。っていうか、むしろ、妊婦は座るべきなんだよ。そのお腹に守るべき命を宿してるんだからな」

ふふふっ……

あまをにも力説する將軍さんが珍しくて、思わず笑ってしまう。

「うん、じゃあ、しだけ」

私は、將軍さんの好意が嬉しくて、素直に従う。

「今日から、食事は俺が作るよ」

最寄駅から手を繋いで歩きながら、將軍さんが唐突に言い出した。

「えっ?」

私は、意味が分からなくて、首を傾げる。

「爽が、ずっと食がなかったのって、きっとつわりだろ? だったら、俺が料理した方が、爽の負擔もなくていいと思うんだ。爽ほど、うまくは作れないけど、どうせ2〜3ヶ月のことだし、大丈夫だろ?」

將軍さんは、さも當然だと言わんばかりに、ひとりで納得している。

「でも、將軍さんの方が忙しいのに……」

仕事だって、いつも遅くまで頑張っているのに、この上、家事までお願いしたら、將軍さんが大変だよね?

「だから、手抜き料理だぞ? コンビニ弁當の日もあるかもしれないし。それでも、爽に無理させるよりは、ずっといい」

將軍さんは、優しく微笑むと、繋いだ手をギュッと握った。

「ふふふっ」

私は思わず、笑みをこぼす。

「なんだ?」

將軍さんは、バカにされたと思ったのか、何か不満顔で尋ねる。

「違うの。將軍さんのお嫁さんになれて、良かったなって思って。絶対、世界一の旦那さまだよね」

私がそう言うと、將軍さんは照れ臭そうに目を逸らして、空を見上げた。

「ありがと。將軍さん」

私は、將軍さんの腕を、両手で抱き込むようにして、寄り添って帰る。

將軍さんが、反対の手で引くキャリーケースの車のガラガラいう音が、なんだか楽しげに、私たちの後を追いかけるように響いている。

1年後には、キャリーケースじゃなくて、ベビーカーが同じような音を立ててるのかな?

ふふふっ

想像するだけで、なんだか幸せな気分になるから不思議。

私たちは、マンションのエントランスを抜け、エレベーターに乗り込む。

行き先階ボタンを押し、ドアが閉まると、將軍さんは私をギュッと抱きしめる。

「爽、會いたかった」

將軍さんがそう思ってくれることが、何より嬉しい。

「私も、ずっと會いたかった」

私も、將軍さんの背に両手を回し、將軍さんのに頬を寄せる。

トクトクトクトク……

將軍さんの鼓が頬を通して伝わってくる。

けれど、その鼓じられたのも束の間、私の背は、冷たいエレベーターの壁に押しつけられ、そのままを將軍さんのそれで塞がれてしまった。

ん……

久しぶりのキスは、一瞬で深くなり、応えるのがやっと。

エレベーターの中なのに、息が上がりそうなほどの激しいキスは、將軍さんが2週間押さえた思いのような気がして、嬉しくなる。

ポン……

らかいエレベーターの到著音が聞こえると、名殘惜しそうに、將軍さんのが離れていく。

「続きは、部屋で……」

えっ……

    人が読んでいる<冷たい部長の甘い素顔【完】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください