《【完結】苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族~》第1章 再婚、義兄、同居!?(4)仁と呼べ

食後もまた、パジャマのままソファーに座って八雲専務はタブレットを睨んでいる。

寢食を忘れてゲームに熱中する、ゲーム廃人かと呆れた。

いや、あの八雲専務がゲームに熱中しているだなんて意外すぎるけど。

片付けをある程度済ませ、リビングへ行く。

やはり八雲専務はさっきと一緒で、同じ姿勢のままだった。

「八雲専務」

「……」

「八雲専務!」

「……びっくりしたー」

大きな聲を出したら、ようやく彼が反応した。

その集中力はある意味、尊敬に値する。

「どうした?」

タブレットを置き、しだけ彼が……笑った。

「買い、行きたいんですが」

「ああ、わかった。

ちょっと待っててくれ」

八雲専務がリビングを出ていく。

……笑うんだ、あの人。

人間だから當たり前なのに、そんなことに驚いた。

「なんのゲームしているんだろ」

気になって伏せて置かれたタブレットを裏返してみたが、すでにロック畫面になっていてわからなかった。

「すまない、待たせた」

しして著替えを済ませた八雲専務が戻ってくる。

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ジーンズに白Tシャツ、紺のシャツを羽織っただけというなんでもない格好だけど、背の高い彼が著ると酷く様になった。

「じゃあ行こうか」

「はい」

地下駐車場で彼が私を乗せたのは、セダンタイプの高級外車だった。

通勤著萬歳! とか心の中で思ったのは緒だ。

じゃないと、こんな車に似合わない。

「そういえば」

「はい」

マンションを出てすぐに、八雲専務が口を開いた。

オシャレなジャズが流れる車は、らかに街を走っていく。

「さっき、僕のことを〝八雲専務〟と呼んでいたな」

「ええ、はい。

そうですけど……」

だって、それ以外に呼びようがないわけで。

「プライベート、しかも義兄妹になるというのにそれはないだろう」

確かに家でも専務と呼ぶのは違和があるかもしれない。

「じゃあ、なんと呼べば……」

「そうだな。

義兄妹になるからといって、君からお兄さんなどと呼ばれても嬉しくない」

まさかの兄呼びは回避されてで下ろす。

それだけは私としても、絶対避けたい。

「……そうだな、名前で呼べばいい。

僕もそうする」

「はぁ……。

じゃあ、仁、さん。

スーパー、通り過ぎてしまったんですが」

もうすでに私が晝間行ったスーパーは後方に流れていっている。

いったいどこに、連れていこうと?

私は食料品を買いたいだけなんですが。

「さん呼びはないな。

兄妹なんだから仁でいい。

……それでスーパーはつい通り越した、すまない」

次の差點で八雲専務――仁はUターンにった。

ちらりと顔を見ると、眼鏡の弦のかかる耳が真っ赤になっている。

そういうところはやはり可くて、なんだか気分がよかった。

スーパーでカートにカゴをのせて押そうとしたら、仁に奪われた。

「僕が押す」

けれどそう言ったきり、彼はかない。

「あの……」

「僕はこういうところに來ないから、君に導してもらわないとどこに行っていいのかわからない」

ああ、そうですね。

だって、あの冷蔵庫だもん。

私のすぐ後ろを仁がついて回る。

「今日の晩ごはんはなにが食べたいですか」

「なにが……とは?」

なぜか仁は首を傾げて考え込んでいるが、どうも悩むところがズレている気がしてならない。

「仁の食べたいものはなんですか」

「食べたいもの……」

それっきり、仁は黙ってしまった。

その間に米と最低限の調味料をカゴにれる。

「別に食えればなんでもいい。

……人參以外だったら」

思わず、くすりと笑いがれる。

そういえば食事代わりにお菓子を食べながら、腹にればなんでも同じなんて言っていた。

それでも人參だけはダメなんだ。

「そうですね、生姜焼きとかどうですか」

「人參はらないか」

妙に真剣な顔で、仁は確認してきた。

らないですね」

「なら、いい」

満足げに仁が頷く。

あの専務がここまで人參嫌いだなんて、ギャップがありすぎる。

朝食はどうせ、訊いてもまともな返事がもらえそうにない気がするので、勝手にパンに決めた。

「あとは……」

最後に足を、お菓子売り場に向ける。

「なにを見ているんだ?」

「市場調査です。

スーパーに來たら必ずお菓子売り場を覗くようにしています」

ここのスーパーはし、うちの商品がないようだ。

定番のビスケットはあるが、新商品のチョコレート菓子がない。

話題が低かったのか。

「なるほどな……」

軽く握った手をあごに當て、仁はそのまま口を開かない……どころか、歩きはじめた私の後すらついてこない。

「仁、帰りますよ!」

「ああ、すまない」

し強めに聲をかけたら、仁はきだした。

會計のときはさっきまでと違い、會社でよく見る真顔で立ったままだったので、私のお財布から払う。

まあ、置いてもらうんだし、引っ越し代も浮いたからやぶさかではない。

帰りの車の中もずっと無言だった。

來るときは饒舌に話し、話しすぎてスーパーを通り越した仁と同じ人には見えない。

いや、これが通常モードといえばそうなんだけど。

あれの方が私に言わせれば異常だったわけで。

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