《【完結】苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族~》第2章 キス、プレゼント、ランド!?(3)用もないのに休日出勤、とは?

金曜日は木曜日とほぼ、同じことを繰り返した。

ただ、殘業が終わって帰ってきた私がエレベーターに乗るのと同じタイミングで、仁も帰ってきた。

「今日は遅いな」

「そうですね。

あ、土日も休日出勤なので」

「そうか」

そんな話をしているうちに五階に著く。

「ただいま、涼夏」

玄関をったところで、抱き締められて額に口付けを落とされた。

朝もおはよう、いってきますとされて、悟ったのだ。

もうこれはこういう儀式だと割り切って慣れるしかないと。

「お、おかえりなさい」

とはいえ、一朝一夕で慣れるようなことでもなく。

まだまだ顔から火を噴くけど。

部屋著に著替え、今日の晩ごはんはどうしよう? などと考えながらリビングへ行ったら、仁も來た。

Tシャツにスウェットのハーフパンツなんてラフな格好は、スタイルがいいからか悔しいがよく似合っている。

あんな食生活の癖に、余分な脂肪も下手に痩せすぎとかもないとか、どうなっているんだ。

うらやましい。

「食事はどうする気だ?」

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「なんか作りますよ。

仁も食べますか」

話しながら冷蔵庫を開けたら、いきなり顔の橫に、割れせんよろしく袋詰めされたクッキーが差し出された。

これもきっと、試作品なんだろう。

「よかったらこれを食え」

「あのですね、仁」

これは仁なりの気遣い……なんだろうか。

だいぶ、ズレているけど。

「手早く食えて腹も膨れる」

ええ、そうでしたね。

腹にればなんでも一緒、ですもんね。

「……すぐに食べられるものを作るので、おとなしく座って待っていてもらえないですか」

震える聲でキッチンから見える、ダイニングの椅子を指さしたら、お菓子の袋が引っ込められた。

「……わかった」

言われたとおりにダイニングへ向かい、仁はちょこりんと椅子に座った。

それを見屆け、調理をはじめる。

「悪気はないんだよね……」

こういうのは嬉しいのは嬉しいが、方向が斜め上で戸ってしまう。

「どうぞ」

今日は手早く玉子丼にしたが、文句が出たって気にしないとも。

「いただきます」

今日も律儀に手をあわせて仁はごはんを食べはじめた。

やはり腹にればなんでもいいんだろうか。

「ごちそうさま。

うまかった」

「はい、お末様でした」

今日も仁は食をキッチンまで下げてくれた。

そういうことができるんだから、悪い人ではないと思う。

「おやすみ、涼夏」

「おやすみなさい」

額に口付けを落とし、仁はリビングを出ていった。

私もさっさとお風呂にってしだけ勉強し、寢る。

翌日の土曜、私が起きてリビングにいったときにはすでに、仁も起きていた。

「おはよう、涼夏」

「おはよう、ございます……」

額にキスしてくるのはいい。

でもなぜにスーツ?

仁も休日出勤なの?

「朝食作りますけど、食べますか」

「いらないと言っても涼夏は作るんだろ?」

「そうですね」

くつくつとおかしそうに仁は笑っている。

わかっているなら素直に食べるって言えばいいのに。

宣言どおり仁の分も作って食卓に出す。

「いただきます」

作ったごはんに、手をあわせて食べてくれるのはなんか、気分がいい。

それだけで作ってよかったってなる。

「ごちそうさまでした。

あ、涼夏。

家を出るときは教えてくれ」

「はい……」

を下げた仁は、リビングのソファーに座って再びタブレットを手に取った。

今日はもしかして、休日出勤だから早く行く必要がないのかな。

朝活を済ませ、そのままリビングにいたであろう仁に聲をかける。

「そろそろ出ますけど」

「じゃあ、行こうか」

仁が立ちがあり、傍に置いてあった鞄とジャケットを手に取った。

「いってきます、涼夏」

を屈めて額にキスしてくるのはいい。

どうして仁も、一緒に家を出るんだろう?

「ほら涼夏、行かないのか」

リビングのドアに手をかけ、著いてこない私に仁は聲をかけるが、まだちょっと狀況が摑めていない。

「あのー、仁も一緒に出勤するつもりですか」

「そうだ。

別に僕は用はないが、涼夏が……いや、なんでもない」

こほん、と急に咳払いして誤魔化してきたけど、用はないとか言わなかったですか。

なのになんで會社へ?

「なんでもいいからさっさと行くぞ。

じゃないと遅刻するだろ」

「ああ、そうですね」

ここで仁の行の謎を解こうなんていうのがすでに、無駄なのだ。

この人の行は全くもってわからない。

し前まではアンドロイドかと思っていたけれど、同じ人外でもたぶん宇宙人の類いだ、きっと。

ちょん、と仁の車の助手席に納まって出勤する。

この時期に駅まで徒歩十分の道を歩かないでいいというだけですこぶる楽だ。

「おはよ。

なんで仁まで出勤してんだよ」

車を降りたらちょうど、向こうから千里部長が歩いてきた。

彼も仁と同じく、車通勤だ。

「あっ、ふーん。

そういうこと」

私と仁の間に視線を往復させ、ひとりで納得した彼はニヤニヤと意地悪く笑っていた。

「なにがそういうことだ」

平靜なフリをしながらも、仁が眼鏡を上げる。

ここでなにか、照れるようなことでもあるんだろうか。

話しながら三人でエレベーターに乗る。

でも人気の高いツートップと一緒だなんて、誰かに見られたら……なんて考えたけど、休日出勤で人はあまりいないから、心配はなさそうだ。

仁は格に難ありだが、その顔と次期社長の肩書きで狙っているお姉様方がたくさんいる。

「どーせ、會社來たって暇なんだろうが。

仕事、手伝え。

まあもっとも、この休日出勤はお前のせいなんだから當たり前だけど」

「……。

わかった、あとで行く」

いくら親友だとはいえ、専務をあごで使う千里部長が恐ろしい。

仁は彼に、弱みでも握られているんだろうか。

「じゃあ、待ってるからなー」

仁にひらひらと手を振って千里部長はエレベーターを降りていく。

私もペコペコとあたまを下げて降りた。

「あっ、あの。

ああいうのって……」

「よくない?

いいの、いいの。

あいつに暇な時間を與えたらどんどん企畫立ててきちゃうから。

それ全部俺たちが実行したら、過労死しちゃうよ?」

「は、はぁ……」

にしにしと白い歯を見せ、愉快そうに千里部長が笑う。

そういえば一時期、企畫が立て込んで連日殘業、なんて時期があったけど、あれって仁が暇だったから……?

なんて迷な。

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