《【完結】苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族~》第2章 キス、プレゼント、ランド!?(6)プレゼントはいいけれど

次の日の仁は、私がごはんの用意が終わった頃に帰ってきた。

「ただいま、涼夏」

「お、おかえりな、さい……?」

リビングのドアは開いたものの、仁の姿が見えない。

いや、足は見えるが。

だって仁は自分の長の半分以上はありそうなクマのぬいぐるみを抱えていたから。

「ただいま」

用に片手でクマを抱き、反対の手で私を抱き寄せて額に口付けを落とす。

「どうしたんですか、それ……?」

「ああ、これか?

涼夏にプレゼント」

差し出されたクマのぬいぐるみをけ取った。

私が抱き上げれば、かろうじてクマの足が床から浮く。

それほどまでに大きいのだ。

「あ、ありがとう、ござい、……マス」

「うん」

クマが邪魔して仁の顔が全く見えない。

とりあえず、ソファーに下ろした。

「今日の晩ごはんはなんだ?」

何事もないかのように仁は食卓に著いているが、いやいや、説明がしいですよ。

最後の仕上げをしてテーブルに料理を並べる。

今日はオムライスとスープとサラダだ。

「いただきます」

手をあわせて仁がスプーンを取る。

「そういえば、オムライスを食べるのは母が死んで初めてだな」

「え?」

オムライスくらい、どこの家庭でも……って、仁のお宅はセレブ家庭。

そんなことはないのかも。

「いや、同級生は家族で行ったレストランで食べた、なんて話していたが、僕にはそういう機會がなかったからな」

「あ……」

仁も私と同じ片親育ち。

私も両親が離婚してからは母がオムライスを作れるほど暇はなく、自分で作るようになっていた。

「お抱えの料理人に頼めばよかったんだろうが、なんだかそんなわがままは許されない気がして言えなかったんだ。

……ん、うまいな」

ぱくりと一口食べた仁が、眼鏡の下で泣きだしそうに瞳を歪めて笑う。

その顔に心臓がきゅーっと切なく締まった。

「オムライスくらい、これからいくらでも作りますよ。

だって、……妹なんですから」

「そうだな」

またぱくりと食べた仁は、今度は本當に味しそうに笑った。

「ところでですよ。

あの、クマはなんですか?」

突然、プレゼントとか言ってあんなものをもらっても、困る。

「兄は妹にプレゼントするものだろ。

それに涼夏には毎日食事を作ってもらっているから、その謝も」

「はぁ……」

そんなの、私の周りでは聞いたことがないんだけど。

それとも、セレブはそれが普通なのか。

「じゃあ、ありがとう、ございます……」

「うん」

これは仁にとって普通のことで、よかれと思ってやっているんだから、斷れなかった。

「で、意外と邪魔じゃないんだよね、これが」

私に與えられている部屋は、前に住んでいたワンルームよりも遙かに広い。

なのでこれくらい大きなクマのぬいぐるみを置いても平気なのだ。

「ふかふか……」

寄りかかって座ると、思いのほか気持ちいい。

これは、ソファー代わりにいいかも。

「名前なんてつけちゃおうかなー」

もらったときは子供扱い、こんなに大きいのは迷、なんて思ったけど、邪魔じゃないとわかったうえに有効活用が思いつくと気分は一転する。

「んー、やっぱりジン、かな?」

と、クマに話しかけたところで、耳に付いたタグに気づいた。

「え、これってシュタイフ……?」

大きなぬいぐるみってだけでかなりのお値段するのに、それがかのシュタイフとなればさらに跳ね上がる……はず。

「考えない。

ううん、考えない」

こんなものを妹へのなんでもないプレゼントにする仁が恐ろしい。

それとも、セレブの覚ってそんなものなの?

その週の金曜、夕食の最中に仁から明日は出掛けると言われた。

「はい、いってらっしゃい」

別に休みの日に仁がいようといまいと関係ない。

先週だって私が試験で出掛けていた間、仁がなにをしていたかなんて知らないし。

「なにを言っている、君も一緒に行くに決まっているだろ」

「えっと。

……どこへ?」

仁と私が一緒に出掛ける必要がわからない。

そもそも、いい年した兄妹は一緒に出掛けたりしないのでは?

「ブラウナランドだ」

箸を置き、仁がくいっと眼鏡を上げる。

途端に私の箸から、コロッケがぽろりと落ちていった。

「えっ、ちょっと、ふたりでブラウナランドですか!?」

「そうだ」

仁は至極真面目な顔をして頷いているけど、さっき、あきらかに照れていましたよね!?

「ええっと……。

普通は兄妹で行ったりしないと思うんですけど……」

「世間の普通など関係ない」

ああ、そうですね。

その理屈で毎日、私に挨拶のキスをしているんだし。

ブラウナランドというのは、世界的に有名なうさぎのキャラクター、コネインがいる、子供から大人まで楽しめる夢の國だ。

デートでだって行くし、大人が行ってもおかしいところではない。

がしかし。

「……」

見つめた先の仁が、あんなところではしゃぐだなんて想像ができない。

なのに本気で行きたいと思っているんだろうか、この人は。

「えっと。

本気、ですか……?」

「ランドに行くのに本気にならなければならない意味がわからない」

至極真面目に仁から返事がきた。

「じゃあ、わかり、……マシタ」

別にブラウナランドに行きたくないわけじゃない。

むしろ、行きたい。

なんといっても私はいままで一度も、行ったことがないのだし。

ただ、仁とふたりでというのが気にかかるだけで。

「明日の朝は早いから、早く寢ろよ」

「はい」

とりあえず、なに著ていくか服を選ぼう……。

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