《【完結】苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族~》第2章 キス、プレゼント、ランド!?(9)お土産って、誰に?

「夕方でも暑いですね」

ちらほらとパレードの場所取りをしている人たちが見える。

いい場所で見るためにはそろそろした方がいいのかも。

「まだ大丈夫だ」

仁はかまわずに、私を次のアトラクションに連れていった。

別にどうしても好條件でパレードが見たいわけじゃないが、それでも不満は殘る。

「夕食は食って帰る」

アトラクションの後も、仁はパレードなんか気にせずに歩きだした。

疲れているのに帰って作らないでいいのはいいが、仁にはパレードを見る気がないんだろうか。

レストランは予約ができるらしく、待たされることなくテラス席へ案された。

「……パレード、見たかったのに」

「……」

仁は黙ったままなにも言わない。

料理が屆いた頃、遠くにパレードの音楽が聞こえてきた。

あーあ、殘念。

今日一日楽しかったのに、最後がこれだなんて。

心の中で文句を言いつつ顔を上げると、チカチカとるものが見える。

「え……?」

次第に、パレードが近づいてくる。

思わず顔を見たら、仁がくいっと眼鏡を上げた。

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「……ここは食事をしながらパレードが見られるレストランなんだ」

目の前に立つ人など遮るものもなく、目の前を通り過ぎていくパレードに目を奪われた。

キャストもこちらに向かって手を振ったりしている。

食事も、さっき心の中で不満を言っていたことも忘れて、楽しんだ。

「仁、ありがとうございます!」

遠ざかっていく音楽の余韻に浸りながら、現金にもお禮を言う。

「……いや」

また仁が、ブリッジを押し上げた。

「でも最初から言ってくれたらよかったのに。

おかげで不満なんて言ってしまいました。

ごめんなさい」

「涼夏の喜ぶ顔が見たかったからな」

そっと、仁の手が私の髪にれる。

するりとでて離れていく手。

眼鏡の下では目が下がって目が細くなり、眩しそうに私を見ている。

「えっ、はい。

……嬉しかった、です」

全力疾走でもしてきたかのように心臓の鼓が早い。

仁はときどき、あんな顔をして私をわせる。

ランドを出る際、仁は係の人から大きな紙袋をけ取っていた。

「誰かにお土産ですか」

「まあ、そんなところだな」

後部座席にそれを乗せ、出発する。

どうしてか、そのお土産がもらえる人にイラッとした。

私は仁と一緒にここに來て、たくさん楽しんだというのに。

「涼夏、著いたぞ」

仁から揺り起こされて目を開けた。

「す、すみません!

ひとりでグーグー寢て!」

結局、帰り著くまでぐっすりと寢ていた自分が恥ずかしい。

「いや、いい。

疲れているだろうから、明日はゆっくり寢たらいい」

例の大きな紙袋を抱えた仁と一緒にエレベーターに乗る。

「でも、仁の朝ごはん……」

「気にすることはない。

腹が減ったらなんか食う。

それに一食ぐらい、菓子でもかまわないだろ。

最近は涼夏の手料理でバランスの取れた食事をしているし」

珍しく、皮るように仁が片頬だけを歪めて笑った。

「そう、ですね。

なら、お言葉に甘えて……」

ちゃんと食事を取れとやっぱり、し口うるさすぎただろうか。

いや、でもそうじゃないと、仁の健康が心配だし。

「ただいま、涼夏」

いつものように仁から抱き締められ、つい腕の中から逃げてしまう。

「なんで逃げるんだ?」

不満そうに仁が迫ってくる、が。

「だ、だって。

汗臭い、ので」

ぴたっ、と仁の足が止まった。

そのままくんくんと自分のを嗅いでいる。

「すまない」

仁は詫びてくるがそうじゃない。

私が言いたいのは。

「私が汗臭い、ので。

仁は臭くない、です」

「そうか」

「えっ、あっ」

次の瞬間にはまた、仁から抱き締められた。

「だ、だからっ!」

「涼夏は臭くなんかないぞ。

むしろ、いい匂いがする」

これは、本気で言っているんだろうか。

絶対、臭いと思うのに。

ジタバタと暴れる私を目に、仁は額に口付けを落としてようやく離れた。

「これは涼夏にお土産だ」

「えっ、私に……?」

仁が手に持っていた紙袋を差し出してくる。

なにも買わなくていいと言ったのに、なんで?

「兄からのプレゼントだ、け取ってくれるよな?」

「そ、そうですね……」

有無を言わせず差し出されたら、斷れない。

それに、し嬉しくもある。

「ありがとうございます」

「うん」

け取った紙袋を抱き締めた。

仁の手がびてきて、くしゃくしゃとらかく私のあたまをでる。

「仁?」

「あ、いや。

涼夏は可いな、と思って。

……先に風呂を使え、僕はあとからる」

「はい、そうします……」

足早に仁は去っていき、すぐにドアが閉まるバタンという音がした。

「なん、だったのかな」

そっと、自分のあたまにれてみる。

さっき、仁の手がここに……。

なぜかみるみる顔が熱くなっていき、ボフン!と火を噴いた。

仁をあまりお待たせするわけにもいかず、手早くシャワーを浴びる。

「あがりました」

「ああ、わかった」

廊下から聲をかけたら、すぐに返事があった。

自分の部屋へ戻り、もらった紙袋を開けてみる。

中から出てきたのは、コネインとコネインチェの、ペアのぬいぐるみだった。

しかも、私が一番悩んでいた、ランド限定コスチュームの。

「なんでわかっちゃったんだろ」

棚の上に並べて置く。

ほどよい大きさなので邪魔にはならない。

明日の朝になったら、仁に改めてお禮を言おう。

一日、楽しかったし、最後にはこんなプレゼントまで。

こんな兄ができて私は幸せ者だ。

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