《【完結】苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族~》第3章 家族 兄妹 !?(5)死ぬまで妹

仁の頑張りの果が出て、オイゲンは大満足で契約締結、予定どおり金曜日に帰っていった。

「ただいま」

帰ってきた仁の手には、リボンの結ばれた大きな包みが抱えられている。

また、と私の口からはため息が落ちていった。

「それで今日はなんですか」

いつもどおり額に口付けされたあと、それをけ取ったが、いつもと違いずっしりと重い。

「この一週間は特に、涼夏にも頑張ってもらっただろ?

だから、謝を込めて」

前回はハートの大きな刺繍がった、ラメが眩しいピンクの財布だった。

前々回は恐竜足のぬいぐるみ調スリッパ。

その前は……。

大きなクマのぬいぐるみ以來、仁はちょくちょく私になにかとプレゼントしてくれた。

がしかし、選ぶセンスがおかしい。

小さな子、せめて中學生くらいまでなら喜べるかもしれないが、私は立派な社會人なのだ。

……まあ、普段の格好があれだけど。

「バケツプリン……」

本當に、學校の掃除で使いそうなサイズの、バケツの中にプリンが詰まっていた。

「どうだ?」

って、どや顔されてもどうしていいのかわからない。

これ、何リットルあるんですか?

そもそも、冷蔵庫にるの?

そしてそろそろ腕が限界なので、一度置いていいですか?

「ありがとう、ございます……」

これなら、使うことなくクローゼットに直行のものの方がよかった気がしないでもない。

どうしよう、これ……。

「この間、バケツいっぱいプリンが食べたいなど言っていただろ」

「……」

言った、確かに。

一度でいいから、バケツいっぱいプリンを食べてみたいな、って。

でも限度ってもんがあるんですよ?

「涼夏が喜んでくれてよかった」

仁は満足していますけど、いやいや、全然喜んでいないです。

滅茶苦茶困しています。

「とりあえず、ごはんにしないですか」

「そうだな。

涼夏の夕食を食べるのはひさしぶりだ」

テーブルに著き、ごはんを食べはじめる。

今日はお祝いの意味も込めて、ちょっと豪華にハンバーグにしてみた。

いや、せっかくブラックカード持っているんだから、発してA5ランク黒和牛のステーキなんて考えなかったわけじゃない。

でも、値段を見たら庶民の私には手をばしがたく。

それでも今日は思い切って、黒和牛の合い挽きミンチを使ったけど。

「お仕事、お疲れ様でした」

「うん、これで一安心といったところだな」

今回の契約で、仁を軽んじていた人たちも黙らざるを得なくなった。

社長も満足していると聞く。

「社長に就任したら、次は結婚……ですか」

「……そう、だな」

仁の手が止まり、淋しそうに目が伏せられる。

私はいま、なにか間違ったことを訊いただろうか。

「結婚しても涼夏が妹であることは変わらない。

涼夏は死ぬまで僕の妹だ。

そうだろ?」

気を取り直すように仁が笑う。

けれど眼鏡の向こうの目は同意してくれと縋るようだった。

「そうですね。

仁は死ぬまで、私のお兄ちゃんです」

大丈夫だと私も笑い返す。

でもそんな確約はどこにもない。

ある日唐突に仁と兄妹になったように、別れも突然來るのかもしれない。

けれどいまはそんなこと、――考えたくない。

「それよりですよ。

あのプリン、どうするんですか。

ふたりじゃ食べ切れないですよ」

「むっ。

そうか」

「そうですよ」

プリンはでん!とリビングのテーブルの上に置かれたままだ。

「そうだ、明日は休みだから彪を呼ぼう。

三人ならなんとかなるだろ」

なる……のかな?

かなり厳しい気がする。

「わかりました。

それでお願いします」

これは自分がまいた種と言えなくもない。

なら、観念してどうにかするしかないのだ。

「しかし、涼夏の料理は相変わらずうまいな」

を下げてにへら、と締まらない顔で仁が笑う。

その顔にの中にぽっと燈が點いた。

「今日はいつもより発したからですよ」

「いや。

涼夏と食う食事が一番うまい。

食事がうまいと初めて思った」

「仁……?」

仁はお抱えの一流料理人に食事を作ってもらう生活をしていたはずなのだ。

なのにこれって……?

「どんなに立派な料理でも、ひとりで食べるのは味気ないからな」

ふっ、と小さく笑った仁は、酷く淋しそうだった。

そうだ、この人は私と同じ淋しさを抱えている。

かつての私が、そうだったように。

「私も仁と同じです。

仁と一緒に食べるようになって、食事が楽しくなりました」

「……そうか」

仁の口もとは嬉しそうに緩んでいる。

きっと私も、同じ顔をしていることだろう。

私たちは淋しさを埋めて埋められていく。

だからこそ、こんなにも仁が――おしい。

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