《【完結】苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族~》最終章 社長、婚約者、結婚!?(2)高価なプレゼント

食後はリビングに移してお茶となった。

「まずは。

仁、オイゲンとの契約、ご苦労だった」

カップをソーサーに戻し、仁が姿勢を正す。

今日はお晝に呼ばれたわけじゃなく、大事な話があると言われていた。

「ありがとうございます」

「この結果に私は、大変満足している。

來月の取締役會で承認されれば、九月からおろち製菓の社長はお前だ、仁」

瞬間、仁の目が大きく見開かれた。

「ありがとうございます」

さっきとは違い、今度は膝よりもあたまが下がるほど、仁が深々と禮をする。

そのためにいままで頑張ってきたんだ、嬉しさもひとしおだろう。

「うん。

お前の今後の活躍に私は期待しているよ」

「ご期待に応えられるよう、頑張ります」

巌さんが満足げに笑い、仁も頷いた。

本當によかった、仁の努力が報われて。

ほんの二ヶ月足らずだけど、それでも近くで仁の頑張りを見てきた私としてもがじーんと熱くなる。

「これで私の肩の荷も下りるし、十月くらいにささやかな式を挙げ、ひと月ほど新婚旅行に行ってこようと思う」

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そっと、巌さんが母を抱き寄せる。

寄り添った母は本當に幸せそうに笑っていて、見ているこっちも溫かい気持ちになってきた。

「なあ有希。

どこに行こうか。

パリか、ロンドンか。

バリやモルディブもいいな。

時間はたっぷりあるんだし、ゆっくり豪華客船で回るとするか」

巌さんの手が軽く母のあごを持ち上げる。

「私は巌さんと一緒だったら、どこでもいいです」

見つめあった母はうっとりと目を下げ、……どうも私たちはお邪魔みたいだ。

その後、ひたすら有希がこうした、ああしたという巌さんののろけ話を、笑顔をり付けたまま聞いた。

新婚だからなのはわかるが、ちょっと甘すぎて焼けしそう。

夕飯までごちそうになって家路に就く。

「仁。

社長就任、おめでとうございます」

お腹いっぱいだし、仁は運転がうまくてつい眠くなっちゃうから、助手席で気は抜けない。

「いや。

まだ役員會で承認されたわけじゃないからな」

しくらい浮かれてもよさそうなのに、相変わらず仁は真面目だ。

「それにしても母と巌さん、本當にラブラブなんですね。

うらやましいくらい」

いまの母は、見ているこっちが嬉しくなるくらい幸せそうだ。

父と一緒だった頃、どうだったか思いだそうとするが、あれほどの笑顔ではなかった気がする。

「ああ、そうだな。

ああいう夫婦になれたら本當にいいだろうな」

仁も同意して、小さく頷いた。

「仁は婚約者がいるんですよね。

やっぱりふたりはあんなじですか」

「いや、僕らは……。

この話はやめよう」

一方的に話を切り上げ、仁がハンドルを切る。

振っておきながら聞きたくなかった私は、ほっとしていた。

日々は一見、何事もなく過ぎていく。

私は自分の気持ちに鍵をかけて奧底にしまい込み、仁の妹であろうとした。

「ただいま」

帰ってきた仁のが私の額にれる。

これに嬉しいなんてじない。

じてはいけない。

「涼夏にプレゼントだ」

仁から手渡されたのはいままでと違い、小さな紙袋だった。

そこにったブランド名からもう、嫌な予しかしない。

「ありがとう、ございます……」

そうじゃありませんようにと祈りながらも、それ以外ないとわかっていながら、中にっている箱を開ける。

予想どおりアクセサリー、一粒寶石の付いたイヤリングがっていた。

「仁……?」

テーブルの上に置いた袋をちらり。

あのブランドからいって、安いジルコニアとかありえない。

きっとこれは……ダイヤ。

しかも、そこそこのお値段がする。

「彪からもっとプレゼントを考えろって言われただろ。

だから」

だから、アドバイスに従ってこれにした?

仁の覚がよくわからない。

ちょっとしたプレゼントに高価なダイヤのイヤリングなんて。

「ダメ、だったか」

見たことがないほど、仁がみるみる萎れていく。

こんなの見ちゃったら、斷れなくなっちゃうよ。

「いえ、嬉しいです。

ありがとうございます」

「そうか、よかった!」

ぱーっと雲間から太が出てくるみたいに仁の顔が輝いた。

それだけで私も嬉しくなってきちゃう。

もらったものには複雑だけど。

こんなにキラキラしたの、地味子の私には似合わない。

わかっているのか……たぶん、わかっていないんだろうけど。

でもきっと、こんな高価なのは一回限りだろうし。

――なーんて考えた私が甘かった。

「涼夏、プレゼントだ」

「あ、ありがとう、ございます……」

紙袋をけ取りながら、笑顔が引き攣る。

今日も高級ブランドの紙袋、っているのはもちろん、高級アクセサリー。

「今日のはどうだ?」

「か、可いですね……」

あれ以來、週一の間隔で仁は私に高額なプレゼントを買ってくる。

いや、もしかしたら仁にとっては、私の數千円と同じ覚なのかもしれないけど。

でも私としては困るのだ、こんな高価なものをバンバンもらっても。

「……はぁーっ」

ため息をつきつつ、今日もクローゼットの中にもらったそれをしまう。

斷ればいいんだろうけど、それができない私が悪いのはわかっている。

けど。

「だって仁が、あんなに嬉しそうなんだもん……」

にこにこと、大好きなご主人様を見つけた子犬みたいな笑顔で差し出されて、斷れる人がいたら會ってみたい。

「せめて私が、人並みに可かったらね……」

見つめた鏡の中から、薄い顔の私がこちらを見ている。

誰の印象にも殘らない、地味な顔の私が。

「……はぁーっ」

寢て起きたら、仁と釣り合うくらいのに……なれるわけ、ないか。

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