《同期の曹司様は浮気がお嫌い》

麗さんはスマートフォンを取るとどこかに電話をかけ始める。

「もしもしー」

數秒待つとスピーカーになった電話の向こうから優磨くんの聲が聞こえた。

「何だよ……今仕事中なんだけど……」

「今麗どこにいると思う? 優磨のマンションでーす!」

「は!?」

「今波瑠ちゃんとご飯食べてるのー」

「何!? 何かの冗談?」

「波瑠ちゃんが優磨のこと大好きだって」

「ちょっと麗さん!」

「え、本當にうちにいるの? 今の波瑠の聲?」

「ごめんね優磨くん、仕事中なのに……」

「いや、いいんだけど……姉さん今すぐ帰れ! 波瑠が汚される」

「何それ酷い! 帰らないもん! 今夜はお泊りするんだから」

「は? だめだって! マジでかえ……」

麗さんは言葉の途中で通話を切った。

「優磨、今絶対ブチ切れてるよ。麗の名前呼び捨てにしまくりだね」

ケラケラと笑う橫で私もおかしくなって笑ってしまう。麗さんに近づくなと言われているけれど、今とても楽しい。

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城藤の人は私とは全然環境が違って戸う。でも私はもっと知りたい。

私よりも先に麗さんが酔ってソファーで寢てしまった。を揺すって聲をかけても起きそうにないので布をかけた。

片づけをしてから先にお風呂にることにした。

バスルームから出るとリビングで麗さんの聲が聞こえる。起きて誰かと電話で話しているようだ。

「……だからーあなたは誰だって聞いてんのー!」

麗さん完全に酔っているな。まともに會話できるのかな?

「はい? お金ってなーにー? 波瑠ちゃんに何させる気?」

不穏な話に嫌な予がした。

麗さん?」

聲をかけても麗さんは電話に集中しているようで私への返事はない。

「あのさー、下田? あんたこそ何様?」

下田くんの名前に焦って服も著ないでリビングに行くと、麗さんは何故か私のスマートフォンを耳に當て電話をしている。

「ちょっと麗さん!!」

慌ててスマートフォンを奪うと「もしもし下田くん!?」と言うと既に通話は切れていた。

「んー……波瑠ちゃん……下田って誰?」

麗さんはソファーに橫になりながら目をる。

「あ……えっと……知り合いです」

「お金のことで電話してくる知り合いなの?」

「………」

どうしよう……うまい言い訳が思いつかない。

麗さんこそ、どうして私のスマホで電話してるんですか?」

「電話が鳴ったから麗のだと思って出ちゃったのー。が似てるし……ごめんねー……」

麗さんはまだ意識が朦朧としていそうだ。

「あの……この電話は忘れてください……」

「うーん……」

麗さんは再び寢てしまったようだ。

確かに私と麗さんのスマートフォンはが似ている。私は普段からロックをかけていないので酔った麗さんが簡単にタップできてしまったのだろう。

油斷していた。麗さんとの時間が楽しくて下田くんのことを失念していた。このままでは優磨くんにバレてしまうのも時間の問題かもしれない。

翌朝、運転手さんが迎えに來たので帰っていく麗さんを見送るとパン屋に出勤した。

夕方までの勤務を終えて、下田くんに呼び出されていつかと同じようにカラオケボックスにり封筒を差し出した。

「これでもう連絡してこないでください」

「は? たったこれだけ?」

封筒の中の數萬円を下田くんは馬鹿にしたようにひらひらと揺らす。

「言ったでしょ。私もお金ないの」

慶太さんの店で働き出して初めての給料を渡す苦渋の決斷だ。

「優磨の口座から抜けって言っただろ」

「優磨くんを巻き込むつもりはない。そのお金でも十分でしょ」

「なら城藤不産だっけ? 會社に曹司の人は不倫だってバラす」

下田くんは揺する私の顔をニヤニヤと見つめる。

「優磨ってされてるんだね。妬いちゃうよ」

嫌みのように囁く言葉に吐き気がする。

「本當にもうこれで諦めて……連絡もしつこくて誤魔化すの無理」

「波瑠がポンッと百萬くれれば連絡しないんだけど。まあ、毎日波瑠の聲が聞けて嬉しいよ」

「このままじゃ優磨くんに知られて困らせちゃう……」

昨夜も麗さんにバレそうで危なかったのだから。

「なら金を早く頼むよ。昔の波瑠は従順な良い子だったのにな。優磨がそう変えたの?」

「従順だったつもりはないよ」

「いや、波瑠は俺にいつも合わせてくれたじゃん」

下田くんはスッと立ち上がると私の隣に寄って座り直す。

「俺がめばいつも一緒にいてくれたよね」

離れようとした瞬間に腕を摑まれた。

「ちょっと!」

怒鳴ろうと口を開くと下田くんに腕を引っ張られ強引にを奪われた。慌てて抵抗しても力では敵わずにソファーの背もたれに押さえつけられる。

「んー!!」

片手でを押し返すと名殘惜しそうにが離れる。

「波瑠に手を出されたと知ったら優磨どんな顔するかな」

そう言うと首に強く吸いつかれた。

「痛い!! いやっ!!」

「まだ波瑠をしてる。止まんない……」

怒りが全を駆け巡り、手を振り払って下田くんの肩を思い切り押すとすぐに離れた。

「警察に通報するよ! 今のことも、私を脅したことも!」

一杯下田くんを睨んだ。

「できるもんならしろよ」

「っ……」

「俺を訴えるのも自由だよ。でも波瑠は優磨に迷かけたくないんじゃない? 俺とキスしたって知られてもいいの? クソ真面目な優磨はいい気分にはならないと思うよ」

「………」

その通りな気がして何も言い返せない。

「嫌ならまた金をよろしく。百萬には程遠いな。この分だと數年俺と會い続けなきゃいけないね」

下田くんは意地の悪い笑みを浮かべて腹立たしい。

私は震えながら無言でカラオケボックスを後にした。

もう私では手に負えない。潔く警察に相談するか、優磨くんにすべてを打ち明けるしかない。またしても迷をかけてしまう。今度こそ呆れられてしまうかもしれないけれど……。

マンションに戻るとすぐに顔を洗う。下田くんにキスされたを痺れるほど強くこすった。

鏡を見ると首に下田くんに付けられた赤い痣がはっきり見える。強く吸いつかれたせいだ。あれは確実に悪意を持っていた。お金で人はあそこまで変わってしまうのか。

「波瑠?」と廊下から優磨くんの聲がした。

しまった……優磨くんが出張から帰ってくる時間になってしまったのか。まだご飯の準備を何もしていない。

「波瑠どこ? 洗面所にいるの?」

「今出る!」

暗い顔を無理矢理笑顔にしてドアを開けた。

「ただいま」

「おかえりなさい……」

「會いたかった」

優磨くんは私を抱きしめる。そうしてスリスリと頬を私の頭にりつける。まるで長期間會えていなかったかのような行だ。

「姉さんが迷かけてごめんね」

「いいの、麗さんとのご飯楽しかったよ。ごめんね、夕食は今用意するから」

「大丈夫。どこかに食べに行こうか?」

「うん……」

「その前に、會えて嬉しいから波瑠を堪能したい……」

耳元で囁かれ顔が赤くなる。私も、優磨くんが帰ってきてくれて嬉しい。

「あのね、優磨くんに大事な話があって……」

言わなければ。下田くんとの問題で頼るのは申し訳ないのだけれど。

優磨くんのが私の額に優しくキスをする。そのまま眉間に、瞼に、鼻にキスをする。

「もう、優磨くん聞いて……」

「ごめん、聞いてるよ」

優磨くんのが私のに近づく。キスをされると思った瞬間下田くんにされた強引なキスを思い出した。

今の私は汚れている。このままキスをしたら優磨くんまで汚れてしまう気がした。

「っ……」

つい顔を背けてしまった。

「波瑠?」

「あ……」

これではまるでキスを嫌がっているようだ。優磨くんが驚いたような悲しんでいるような複雑な顔をする。

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