ブルーム〜極甘CEOの包囲網〜》Bloom1 縁は異なもの味なもの……?【2】

「やっぱり、なかなか募集してるところがないみたい。事務の経験がない上、引っ越しのこともあるから給料面は妥協できないし、とりあえずこの三件だけだった」

「……結構厳しくない? ここは都から通いにくいし、こっちは給料はいいみたいだけど休暇がないし。あと一社は、會社の最寄駅から遠いみたいだよ」

「でも、さすがに選り好みしてられないし、とりあえず全部けてみるつもり」

この三月まで、私は容師として働いていた。専門學校を卒業後、五年間務めた職場を辭めたのは、々あって調を崩してしまったから。

そこから再就職先を探しているものの、一向に目途が立たず……。追い打ちをかけるように住んでいたアパートの上階が火事になり、それを機に以前から大家さんが検討していたアパートの取り壊しが決まった。

そうして部屋を出るしかなくなったのが、ほんの三週間ほど前のこと。

行く當てがなかった私は、ひとまず同じ區に住んでいる敦子に『一晩だけ泊めてほしい』とお願いし、彼はしばらく同居することを提案してくれたのだ。

「私がもうちょっと一緒に住めたらいいんだけど、ここは來月で引き払うし……」

「ううん、今住まわせてもらってるだけで充分だよ。本當にありがとう」

ただ、敦子は來月いっぱいでこの部屋を出て、婚約したばかりの人と一緒に住むことが決まっている。籍はまだ先だけれど、まずは同棲を始めるのだ。

「あ、じゃあさ、いっそのこと住み込みで働けそうなところにしたら?」

「住み込みかぁ……」

「うん。志乃は絶対に事務がいいわけじゃないんだし、住み込みできるところならひとまず住居の心配はしなくていいでしょ? もしくは社員寮があるところとか」

確かに、社員寮や住み込みが可能な就職先なら、とりあえず住居に関する費用は大きく抑えられる。敷金禮金が不要なら、だいぶラクになる。

火事のときにスプリンクラーが作し、家や家電の大半が壊れたために荷ないし、そうすれば引っ越し費用はほとんどいらないだろう。貯金はあまり多くないため、先立つものが安定しない中で迂闊に資金をかけたくないというのはある。

埼玉県にある実家には、昨年結婚した兄夫婦が同居していてもうすぐ子どもが生まれるから、頼ることはできない。

最終的にはマンスリーマンションも視野にれていたものの、それよりは金銭面の心配をしなくて済むはずだし、彼の案はいいかもしれない。

「とにかく、今はできることから始めればいいと思うよ。もしどうしても無理そうだったら、志乃も私たちと一緒に住んじゃえばいいんだし!」

「なに言ってるの。さすがに結婚間近のふたりの邪魔をする気はないよ」

敦子はあながち冗談のつもりはない気がする。彼が本気で心配してくれていることはわかっているから、明るく振る舞って見せる。

不安はたくさんあるけれど、とにかく仕事先と新居を早く見つけるしかない――。

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