ブルーム〜極甘CEOの包囲網〜》Bloom2 災い転じて同居が始まる【1】

近くにあった公園に著くと、諏訪くんは私をベンチに座らせてくれた。

「嫌じゃなかったら、これ羽織って」

「ありがとう……」

ジャケットを肩にかけてくれた彼に、どうにか微笑んで見せる。

諏訪くんはすぐ傍の自販売機でペットボトルを二本購し、「どっちがいい?」と訊いてくれた。お禮を言って、ミネラルウォーターを選ばせてもらう。蓋を開けてから渡してくれた彼が優しく微笑み、ベンチから一歩離れた場所に立った。その行に小首を傾げそうになった直後、ハッとする。

(そっか……。諏訪くんはきっと、自分が傍にいない方がいいと思ってるんだ……)

高校時代にも、同じようなことがあった。

三年生の二學期の文化祭のとき、知らない大學生ふたりに囲まれてけずにいたところに諏訪くんが通りがかり、『先生が呼んでたよ』と助け船を出してくれたのだ。もちろん、それは彼の方便。けれど、人気のない裏庭にごみを捨てに行ったときの出來事だったため、怖くてたまらなかった私にとってはヒーローのように見えた。

諏訪くんは私が落ち著くまで、し距離を置いた場所で待ってくれていた。彼の気遣いが私を怖がらせないようにするためだと察したとき、恐怖をじていた心が不思議と溫かくなった。そして今も、あのときと同じ優しさをじた。

「また、助けてもらっちゃったね……」

ぽつりと呟いた私に、諏訪くんが首を傾げる。

「諏訪くんはもう覚えてないかもしれないけど、高校の文化祭のときにも助けてくれたことがあったんだよ」

「覚えてるよ。遊びにきてた男ふたりに絡まれてた」

「うん……。あのときと同じだね」

「たまたまだよ」

彼はなんでもないことのように笑ったけれど、ちゃんと覚えてくれていたことも、偶然だったとしても助けてくれたことが嬉しい。あのときも、さっきも。

「ダメだね、私……。あの頃からからちっとも長できてない……。さっきも、容師だったときも、全然上手くあしらえなくて……」

「香月はなにも悪くないだろ。でも、それならなおさら追いかけてきてよかった。もし抜け出してこなかったら、香月のことを助けられなかったし」

そういえば、諏訪くんは飲み會を抜け出してきてくれたのだ。私はともかく、彼は『川本以外と會うのは久しぶりだ』と言っていたのに……。

諏訪くんが私を追いかけてきてくれた理由はわからないけれど、私のせいで抜け出したのなら申し訳ない。

「あの……諏訪くん、ごめんね。もしかして、私になにか用があったから抜け出してきたの? 私、みんなには黙って出てきちゃったから……」

「別にそういうわけじゃないよ。ただ、俺がもうし香月と一緒にいたかっただけ」

さらりとそんな風に返されて、思わずたじろいでしまう。彼に他意はないだろうけれど、どうけ止めればいいのかわからなかった。

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