《めブルーム〜極甘CEOの包囲網〜》Bloom3 遠くの親類より再會した初の人?【6】 Side 翔
◆ ◆ ◆ Side 翔
高校の同級生の香月と再會したのは、先週のこと。
あの頃、かに彼に片想いをしていたのに、俺は最後まで自分の気持ちを伝えることなく高校を卒業し、ずっと後悔していた。
俺たちは、特別仲がよかったわけじゃない。俺は一年生のときから香月のことを知っていたけれど、きっと彼は俺のことなんて眼中にもなかっただろう。
可らしくどこか儚げな香月は、男から見れば守ってあげたくなるような庇護をそそるタイプで、學した直後から一部の男子たちの注目の的だった。『香月志乃は男子が苦手らしい』という噂とともに……。
真実を確かめようと香月に近づき、彼を泣かせたり怯えさせたりした男子がいれば、たちまち話題になった。
震える香月は、男の庇護だけではなく征服も刺激するらしく、決して本人には言えないような妄想で盛り上がる奴らを何度も目にしたことがある。そんなとき、俺は決まってバカバカしい……と思っていた。
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俺の気持ちが変化したのは、一年生の二學期が終わる頃のことだった。部活の練習で怪我をして保健室に行くと、保健委員の彼がいたのだ。
男子が苦手だという噂通り、香月は揺をあらわにしてぎこちない態度を取り、校醫がいないことだけを口にした。怖がらせるつもりはなくても、勝手に恐怖心をじてしまったらしく、彼の顔はどんどん強張っていく。
なんだか可哀想になって『自分で手當てするから』と告げれば、香月は首を小さく橫に振って、『私がやります……』と弱々しく言った。
本當に大丈夫か、と思ったのも束の間。震える手で手當てをしようとした彼は、俺の予想通り消毒を落とし、ピンセットでガーゼを摑むこともできない。
けれど、聲をかければ怖がらせる気がして、じっと待つことしかできなかった。
なんとか俺と距離を取りつつも手當てをする香月は、いっそいじらしかった。
當時は、俺を見て騒ぐ子たちに辟易していたため、周囲の子とは全然違う彼にしだけ興味を抱いた。
一方で、男子が苦手なのに一生懸命手當てをしてくれる姿に好を持ち、本當はとてもいい子なんだろうと思った。同時に、こういうところが無意識に男を惹きつけるんだろうな、ともじ、おもしろくないような気持ちになった。
時間をかけて手當てをしてくれた香月は、任務を全うできたことに安堵したのか、わずかに表を和らげた。俺もつられたように頬を綻ばせ、『ありがとう』と告げる。その直後、彼は嬉しそうに瞳を緩め、らかな笑みを浮かべた。
墮ちた――という表現が、きっと一番的確だっただろう。俺はこのとき、異として香月を意識したことを自覚し、彼にをしたのだ。
子なんて面倒くさい生きだと思っていた。よりもサッカーがしたかった俺にとって、練習の邪魔をしたり試合のたびにピッチの外できゃあきゃあ騒いだりする子たちは、ストレスの対象でしかなかった。
それなのに、目の前にいる香月だけはまったく違い、彼に対しては抗うことのできない激しさで〝〟を意識させられた。
の奧底から熱が込み上げてくる覚と、に覚えのある。男のさがを決して悟られたくないのに、このままなんの接點もなく立ち去りたくない。
『あのさ……』
意を決して口を開いたとき、香月が肩を大きくびくつかせた。
怖がらせたんだ、と気づいて揺し、他の男子たちと同じようになりたくない一心で思いとどまる。そのせいで、もう一度お禮を言い、保健室から離れるのが一杯だった。
抱えたばかりのを持て余し、どうすれば彼との距離をめられるのか悩みながら過ごす日々は、とても歯がゆく切なかった。
香月の姿を見れば、れたくなった。誰かが彼を泣かせたと知れば、毆ってやりたい衝に駆られた。
そうしているうちに香月との距離をめられないまま三年生になり、幸いにも彼と同じクラスになった。
千載一遇のチャンスか神様の采配か、なんてバカみたいなことを考え、どうすれば香月と仲良くなれるのかということばかり考えていたのに……。何度も男子に脅える彼を見ていると、結局は自分の想いを押しつけるようなことはできなかった。
その後、何年経っても後悔するとも知らずに――。
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