ブルーム〜極甘CEOの包囲網〜》Bloom9 雲となり雨となるとき【2】

* * *

寒さが厳しくなった、十二月初旬の土曜日。

小さなカフェで、久しぶりに敦子と會えた。彼は引っ越しに加え、式場巡りや両家への挨拶で忙しい日々を送っていた。そのため、最近は電話とメッセージでのやり取りばかりだったのだ。ちなみに、結婚式の日取りは來年の七月らしい。

改まってお祝いを伝えれば、數日前に名字が赤塚から清水(しみず)になった敦子が照れくさそうに微笑んだ。

「これ、お祝い。こっちは諏訪くんと私から」

「諏訪くんからも 嬉しい、ありがとう!」

私からはプリザーブドフラワーがあしらわれた壁掛け時計、諏訪くんと共同のものは彼のお気にりのブランドのペアグラスにした。

「式場も決まってよかったね」

「うん、なんとかね。喧嘩が絶えなくてどうなるかと思ったけど」

「でも、幸せそうでよかった」

「その言葉、そのまま返すけど」

にんまりと笑った敦子が、「幸せオーラが滲み出てるよ」とからかってくる。

「諏訪くんからは、飲み會のときにはっきりと『協力してくれ』って言われたから、志乃は捕まっちゃうだろうなぁと思ってたけどさ。こんなに幸せそうな顔してる志乃が見れて嬉しいよ」

が心配してくれていたことを知っているから、その言葉には重みがある。自分でもわかるくらい、今の私は幸福を纏っている。

「それにしても、好きな人と同居してて手を出さなかった諏訪くんはすごいよね。忍耐も理解力もあるし、そういう男はなかなかいないよ。志乃とゆっくり向き合って、志乃に恐怖心をじさせずに墮とすなんて、よっぽど志乃が大切なんじゃない?」

第三者からそんな風に言われると、諏訪くん本人の口から想いを聞くよりも照れくさい。それでも嬉しくて、こらえ切れずにきれずに笑みを零してしまう。

「志乃、すごく可くなったね。もともと可いけど、されて満たされてるっていうか、笑顔が増えたし纏う空気がらかくなった。それに、すごく明るくなった」

「そ、そうかな……」

素直にけ取るのは恥ずかしいけれど、敦子があまりに穏やかな微笑を浮かべるものだから、否定しづらくなって苦笑がれる。

「うん。いいができてよかったね」

真っ直ぐな視線をけ止め、向けられた笑顔に同じ表を返す。大きく頷けば、彼は顔に安堵と喜びを混じらせた。

「ところで、もうキスくらいした?」

「……っ! ちょっと、こんなところでなに言ってるの!」

「あ、その反応はしたんだ。わかりやすいなぁ」

突然のことに平靜を裝う暇もなく、敦子に見かされたことにさらに揺する。慌てふためく私に、彼がふっと瞳を緩めた。

「よかったじゃない。正直、容師を辭めた頃の志乃はコンビニですれ違う男にもを強張らせてたし、うちを出たときは心配だったけど、の力は偉大だね」

「あ、って……」

「なにか間違ってる?」

自信に満ちた面持ちの敦子に、首を橫に振る。

なにも間違っていない。諏訪くんのが私を癒し、トラウマの中にいた私を救い出してくれたのだから。

「もう大丈夫そうだね」

トラウマと言っても、私はきっとまだ軽い方だった。そして、彼のおかげでしずつ立ち直り、今は心から笑えている。

それをわかっているからこそ、迷うことなく首を縦に振った。

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