《めブルーム〜極甘CEOの包囲網〜》Bloom9 雲となり雨となるとき【9】
「そんな風に思うようになったのは、志乃のおかげなんだ」
「……私?」
「うん。前々からうっすらとした目標ではあったんだけど、志乃と暮らすようになってもっと志乃との時間がしいと思った。それが俺の目標を後押ししてくれた」
「そんなの、私のおかげなんかじゃないよ。ただ、翔がすごいんだよ」
高校時代、翔と夢を語り合った日のことは今でもよく覚えている。彼の夢はあの頃から始まっていた。
記憶に焼きついているその姿は眩しくて、あの日の決意を思い出させてくれた。
(ああ、そっか……。きっと、これが答えなんだ)
私は、翔に見合う人間でいたい。ちゃんと隣で並んで歩ける、自立したになりたい。甘えるだけじゃなく、支え合える関係でいたい。
「翔、話があるの」
真剣に切り出した私の顔つきから、彼はなにかを察したようだった。優しい眼差しが私を真っ直ぐ見據えてくる。
翔を見つめ返しながら、ゆっくりと深呼吸をした。
「私……もう一度、容師として働きたい」
上手くできないかもしれない。また理不盡な目に遭って、環境や自分自に負けるかもしれない。それでも、私はやっぱり夢を諦めたくないと思った。
「できるかはわからないし、自信だってあるわけじゃない。翔のおかげでトラウマを乗り越えられたと思えるけど、きっとひとりになったら完璧に平気だとは言えない。なにより、一年近くスタイリストから離れてるから、腕だってきっと落ちてる……」
乗り越えなければいけない壁は、今想像できるものよりももっと多いだろう。
それでも、私は〝やりたい〟と目指してたどりついた場所に、もう一度戻りたい。
そのために、つらくても苦しくても立ち向かえる人間でいたい。
「志乃は、志乃が歩きたい道を歩いていけばいいんだ」
私を見つめたままの翔が、和な瞳をさらにたわませる。
「怖くても不安でも、志乃には俺がいる。つらいこともあるかもしれないけど、いつだって一番の味方でいる」
間を置かずして、彼は私の手をそっと握った。
「ずっと葉えたいと思ってた夢を、必死に努力して葉えたんだろ。志乃を傷つけるようなつまらない奴らのせいで、自分の夢を諦めることなんてないんだ」
翔の言葉はいつも、青春の日々のように痛いくらいに真っ直ぐだ。彼自のようにキラキラとまばゆくて、背中を押してくれる力強さがあって、踏み出す勇気をくれる。
「だから、もう一度頑張れ」
びてきた腕が、私のをそっと抱き寄せる。あの日とまったく同じ言葉をくれた翔は、そのまま力強く抱きしめてくれた。
が甘苦しいほどに熱くて、込み上げてくる熱をけれながら大きく頷いた。
「うんっ……!」
視界が滲む。不安も恐怖心もあるのに、自信はちっともない。
けれど、彼の溫に包まれる私の意志は固く、迷いは溶けていた。
聖夜が終わる頃、私たちは翔の寢室のベッドでを重ね合わせていた。
お互いの溫を掻き抱くようなきつい抱擁をわし、水音を響かせながら甘ったるいキスを繰り返す。骨張った手が私をで、節くれだった指がやかな戯れを施す。
熱気がこもったベッドは軋み、彼の素をたどる汗が私を濡らした。
他人が聞いたら陳腐に思えるの言葉も、蜂を練り込んだような熱い吐息も、を煽っていく。かすれた聲で名前を呼ばれるたび、おしさでが締めつけられる。
これほどの至福を與えてくれるのは、翔しかいない。彼じゃなければ、こんな風に心が満たされることはない。
私も同じだけ……できればそれよりもし多く、翔にを與えたい。
「翔……」
雄のを孕ませていた瞳が、私の聲でらかな弧を描く。
「好き……大好きだよ」
「……うん。俺も――」
してる――。
そう聞こえたのは、夢か現実か。その判斷がつかないままに瞼の重みに負けてしまい、私はこの上ない安堵の中で意識を手放した――。
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