《めブルーム〜極甘CEOの包囲網〜》Bloom10 七転び八起きも、あなたの傍でなら【3】
「どんなじにしたい?」
「お任せで」
「えっ……」
困する私に、翔は「志乃の好きにしていいよ」なんて笑っている。どうやら、もう覚悟を決めるしかなさそうだった。
ビジネスショート風の彼の髪は今はしびているものの、普段は短すぎず長いということもなく、爽やかで清潔がある。前髪はいつも斜めに分け、綺麗な目元がしっかりと見えている。髪質はらかい方だから、あまり短くしない方がいいだろう。
髪をりながらしっかりと確認していき、脳でイメージを膨らませていく。容師だった頃、何度も何度も繰り返してきたことだ。
ハサミを持った右手がわずかに震える気がして息を吐けば、鏡越しに翔と目が合った。私を見つめていた彼は、和な表をしている。
その瞬間、背中を押された気がして、先にれたハサミの刃を下ろした。
シャキンッ……と小気味のいい音が鳴り、濡れ羽の髪が一センチ分ほど落ちていく。剎那、心とがビリビリと震えた。
この覚は知っている。小さな不安の中で悩んで、けれどお客様の反応を想像してはワクワクして、楽しさとプレッシャーに全力で向き合っていたときと同じものだ。
それからは無我夢中でハサミをかし、上下左右様々な角度から何度も翔の顔と髪を確認しながら作業を続け、自分の中にあるイメージに近づけていく。
張でドキドキして、それ以上にが弾んで。悩んで、迷って、それでも自分を信じて進めた。
「……どうかな?」
私の部屋から持ってきていた全鏡を翔の背後に配置して尋ねたとき、どれくらいの時間が経っていたのかはわからない。
ただ、鏡に見る彼の面持ちが満悅しているのは、答えを聞かなくてもわかった。
長さは普段と同じくらい。けれど、サイドをわずかに長めに殘して、前髪は左右はもちろん、センター分けにもできる。今日は髪を洗って綺麗に乾かしたあと、ひとまずセンター分けにしてワックスをつけている。
「うん、すごくいい。俺、この髪型好きだ」
お世辭じゃないとわかる聲音が、私の心を満たしてくれる。
「よかった」
「夢がひとつ葉った。ありがとう」
安堵と喜びが混じった笑みを零せば、翔がおもむろに立ち上がった。
「志乃」
私の両手を取った彼が、自の両手で優しく包み込んでくる。
「俺は志乃の手が好きだ。志乃が努力してきた日々は知らないけど、再會したときの志乃の手はすごく荒れてて、容師の仕事を頑張ってた手だって思った」
今はもう治ったけれど、確かにあの頃の私の手はとても荒れていて、ハンドクリームを毎日塗っていてもなかなか綺麗にはならなかった。
「この手がまた荒れても、俺は今と同じように好きだとじると思う。真剣に髪を切る志乃はかっこよかったし、人の目なんて必要ないほど惚れ惚れした」
手から伝わる翔の溫が涙をう。泣きたくなんてないのに、あっという間に視界が滲んでいった。
「志乃なら絶対に大丈夫だ。ちゃんと自分が決めた道を歩いていけるよ」
十八歳の私が背中を押されたように、二十七歳の私が前に進む勇気をくれる。
私の初を捧げた彼は、あの頃と変わらない真っ直ぐさを攜えた雙眸で私を見つめていた――。
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