ブルーム〜極甘CEOの包囲網〜》Bloom10 七転び八起きも、あなたの傍でなら【4】

* * *

年末年始はあっという間に過ぎていき、一月ももう終わろうとしている頃。

篠原さんから呼び出されてミーティングルームに行くと、五分ほどしてから彼と鵜崎副社長が現れた。なんの用件かと構えかければ、にこやかな顔で「張しなくていいからね」と先手を打たれた。

「昨日、翔から聞いたんだけど、うちを辭める予定なんだよね」

「はい。々とお気遣いいただいていたのに、申し訳ございません」

「いや、それはいいよ。貴重な戦力を失うのは殘念だけど、この春には新規採用の募集をかけるつもりだったから、採用枠を増やせばいいだけだしね」

私が貴重な戦力だなんて恐れ多い。けれど、腰のらかい鵜崎副社長らしい言い方だった。

「それに、翔からは『期間限定の採用になると思う』って、最初から聞いてたし」

「えっ?」

「あれ? そういう話でうちで働くことを決めたんじゃなかったんだね。じゃあ、翔が勝手にそう思い込んでたのか」

驚く私に、副社長は不思議そうにしつつも完結させてしまった。

一方、私は翔がそんな風に思っていたなんてまったく知らず、そんな話をしたこともなかったため、なぜ……? という気持ちでいっぱいだった。

彼のことだから、きっと私がめば今後もエスユーイノベーションで働かせてくれただろう。明確に話したことはないものの、それは間違いないはず。

(翔は私には言わなかっただけで、最初から期間限定のつもりでこの話を持ち掛けてくれてたってことだよね。それって、もしかして……)

まだ確信はないけれど、翔は私を容師に復帰させるように導いてくれるつもりだったんだろうか。そうじゃなくても、彼の中にはなにかしらの思があったに違いない。

さもなければ、そんなことを最初から鵜崎副社長に話したりしないはずだ。

「そういうわけだからこちらとしては當初の予定通りだし、気にしないでね」

ひとり考え込んでいると、副社長は場を明るく照らすように微笑んだ。

「それで、退職は三月末でいいのかな? 希があれば調整できるよ」

「ありがとうございます。ですが、三月いっぱいで退職させていただきます」

東京にヘアサロンはたくさんあるし、正社員にこだわらなければ働くことはできるだろう。ここにいさせてもらえれば安心だけれど、スタイリストとして早く復帰するためには、たとえバイトであってもヘアサロンで働く方がいいはず。

これを翔に話すと、彼も賛してくれた。

「わかった。もしなにか困ったことがあれば、いつでも相談してね」

短期間しか働いていないのにこんな風に言ってもらえて、本當にありがたい。エスユーイノベーションのスタッフはみんな人柄がよく、信頼関係が築けているのがよくわかる。私の次の就職先もこういう場所だといいな、と思った。

「そういえば、香月さん話し方や言葉遣いがよくなったね。來客対応も何度かしてくれてたけど、最初の頃より笑顔も見られるようになったし」

「いえ、そんな……恐です。ですが、私の話し方や言葉遣いについては、最初に篠原さんが指導してくださったおかげなんです。あのとき、篠原さんがきちんと言ってくださらなければ、私は変われていなかったと思います」

笑顔で篠原さんを見ると、彼は一瞬驚いたように目を見開いたけれど、すぐに「當然のことを指摘したまでです」と返されてしまった。

「篠原さんに叱られちゃったか。彼は、俺や翔にもはっきり言うからね」

鵜崎副社長は肩を竦めたけれど、篠原さんを見る眼差しはとても優しかった。もしかして、と過った考えは口にはできない。ただ、なんとなく當たっている気がした。

は副社長の視線を特に気にする素振りもなく、なにか言いたげに私を見據えていたものの、口が開かれることはなかった。

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