ブルーム〜極甘CEOの包囲網〜》Bloom11 あなたとの路は縁のもの【2】

「翔は? 新しい企畫を遂行中だって言ってたけど、どんなじなの?」

優しい笑顔で私を見つめていた彼に尋ねれば、端正な顔が喜を浮かべた。

「上手くいきそうだよ。やっと理解してくれる會社が出てきたんだ」

「おめでとう! よかったね!」

今回の企畫は、電子書籍関連のアプリ開発なんだとか。

各サイトで購したものを纏めて表示でき、どの電子書店でなにを購したのかが一目瞭然になる、ありそうでなかったアプリだ。お知らせ機能もあり、新刊の発売日などの通知もしてくれる。電子書籍市場が大きくなった近年にぴったりのアイデアだ。

「まぁ、一年がかりでようやくスタートラインに立てたところだけどな」

ただし、これには電子書店との連攜が必要で、ライバル社同士の兼ね合いなどもあり、一向に前に進まないと聞いていた。『初めて話を持ち込んだときは、どの會社でも門前払いされた』と話していた翔の苦労は、私の想像以上だったに違いない。

「でも、試作はしてたから、あとはそれをベースにもっといいものを作り上げて、バグを潰すだけだ」

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これは鵜崎副社長と水面下で進めていたらしく、すでに試作用のアプリをふたつ用意しているとのことだった。そのため、リリースは早ければ半年以になるようで、翔と副社長はこの案件を最優先で進めているらしい。

「この件では、本當に篠原に助けられたよ。話を通すためのコネ作りや、アポ取りから先方の重役の格や特徴のリサーチまでやってくれたんだ」

篠原さんの仕事ぶりは相変わらずのようだった。以前までの私だったら、こんな話を聞けば不安や嫉妬を覚えたかもしれない。

けれど、今は素直に彼を尊敬している。

篠原さんがかけてくれた言葉を翔に話したとき、彼が上司のパワハラとセクハラで前職を辭めてエスユーイノベーションに來た……と彼から聞いたからだ。

『卑怯な人たちなんかのために、自分の意志を曲げてはダメよ』

それを知ったあとからは、篠原さんの言葉がより深いものとなり、改めて心に留めおいた。同時に、彼がなぜ最初に私に不快を見せ、厳しいことを言ったのか、さらに理解できた。

篠原さんは、つらい目に遭っても自分の足で再び居場所を見つけ、必死に努力した人だ。そんな彼から見れば、あの頃の私は甘ったれた人間でしかなかった。

篠原さんと比べてしまうと、どうしても自分の不甲斐なさが浮き彫りになって、ダメだった部分がよくわかる。つい落ち込んでしまいそうになるけれど、そうじゃなくて今後に活かせればいいのだ……と思うようにしている。

人生は々あって當たり前だ。それをどう乗り越えて糧にするか、それができなくてもどんな風に向き合うかで、きっと変わっていける。

最近になって、ようやくそう思えるようになった――。

* * *

目まぐるしい日々の中、七月も半分が過ぎようとしていた。

「うぅ……張する……」

豪華絢爛な披宴會場で顔を強張らせる私に、隣に座る翔が明るく笑った。

「何度も練習したんだから大丈夫だよ。深呼吸して落ち著いて」

彼の聲を聞くと安心できたものの、張はなかなか消えそうにない。

今日は敦子の結婚式で、さっき披宴が始まったところ。そんな大切なお祝いの場で、私は友人代表のスピーチを請け負うことになっている。

何度も原稿を書き直し、翔の前で練習してアドバイスをもらい、しっかりと準備を進めてきた。とはいえ、本番の張は想像以上で、高砂で幸せそうに微笑み合うふたりを見つめながら深呼吸を繰り返した。

「ほら、諏訪! 可い彼が困ってるんだから、もっと優しくめてやれよ」

そんな私と翔のやり取りに、同じテーブルの川本くんがニヤニヤと口元を緩めている。川本くんはどうやら、私たちのことをからかいたくて仕方ないらしい。

「川本、うるさい。ちょっと黙ってろ」

「志乃はあんたと違って繊細なの!」

「志乃、川本の図太さを分けてもらいなよ」

翔の言葉を皮切りに、同級生たちが川本くんに攻撃する。もちろん、それは冗談めかしたやり取りで、川本くんだって「子、怖いんだけど」と笑っている。

(こういう雰囲気、ちょっと懐かしいな)

「だいたい、ふたりのことは今訊かなくてもいいでしょ。どうせ三次會まで行くんだし、そのときに吐かせればいいじゃない」

「えっ……!」

張が解れそうだったタイミングでとんでもない発言が飛んできて、目を真ん丸にする。味方だと思っていた友達は、ひとまず追求せずにいてくれるだけらしい。

「だって、ふたり仲良く式場に來たと思ったら、付き合ってるなんて言うんだもん。々協力したとしては……ねぇ?」

「うんうん。諏訪くんのために貴重な子會に男子をれてあげたんだから、ビールくらい奢ってもらわなきゃ」

「いくらでも奢るよ。でも今は、志乃を困らせないでやって」

翔が私を庇うように微笑むと、陣は「イケメンは中までイケメンだわ!」とめき立ち、川本くんは呆れたように息を吐いた。

そして、敦子のウェディングドレス姿にし、無事にスピーチを完遂できたあとには、みんなからの質問攻めに翻弄される夜を過ごしたのだった――。

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