ブルーム〜極甘CEOの包囲網〜》Bloom11 あなたとの路は縁のもの【3】

七月最後の日、私はようやくオーナーからもアシスタントとしての合格をもらえ、來週にはスタイリストデビューのための試験をけることになった。

殘念ながら最短の三ヶ月では合格がもらえず、南青山店でのアシスタント業を一ヶ月延長しなければいけなかったけれど、なんとか乗り切れてホッとした。とはいえ、気を抜くことはできない。

試験は八月五日から七日で、十日に結果が伝えられる。それに合格できれば、お盆休み明けからはドゥシュールのスタイリストだ。

けてくれるのは、ふたりのアシスタントスタッフと夏さんになった。審査する側の髪を切ることになるのは予想外だったものの、私に選択肢はない。

「おめでとう。これでまた一歩、スタイリストデビューに近づいたんだな」

帰宅後、すぐに翔に報告すると、彼は心底喜んでくれた。

「うん。試験のことを考えると張するけど、頑張るよ」

「志乃がドゥシュールでスタイリストデビューしたら、今度こそ一番最初の客になりたいな。さすがに仕事は休めないし、難しいだろうけど」

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「土日にデビューさせてもらえたらいいんだけど、たぶん難しいかな」

「そうだよな。そういえば、志乃がスタイリストデビューして一番最初に擔當した客って、どんな奴だった? もしかして男だった、とか?」

最後の質問の中にわずかな嫉妬が見え隠れし、クスッと笑ってしまう。

翔いわく、私の一番最初のお客様になれなかったことが、意外と悔しさとして心にあったらしい。再會する前は諦めていたものの、付き合うようになったことでそんな気持ちが芽生えたのだとか。

「一番最初のお客様は敦子だよ」

當時、私がスタイリストデビューできることを報告すると、有休を使ってまで敦子が來店してくれたのだ。張でいっぱいだった私は、十時前に店ってきた彼を見て心底ホッとできた。

『親友の一生に一度しかないデビューは見ておかなきゃと思って。失敗しても笑い飛ばしてあげるから安心して切ってよ』

そう言ってくれた敦子の明るい笑顔は、今でも鮮明に思い出せる。そのことを翔に打ち明けると、彼から複雑そうな苦笑を返された。

「まさかの赤塚か。俺の一番のライバルは赤塚かもしれないな」

「ふふっ、なにそれ」

「だって、結婚式のときに『志乃と付き合ってるのは諏訪くんだけど、志乃のことを一番理解してるのはまだ私だと思う』って言われたんだよ。正直、『そんなことない』とは言い返したけど、赤塚に負けてるかも」

クスクスと笑いながらも、私が知らないところでそんなやり取りがあったなんてなんだかしてしまう。彼はやっぱり、私の一番の親友だ。

八月五日から七日の三日間で試験をけた私は、結果が出る今日、言いようのないほどのに包まれていた。

今回の結果がダメだったとしても、またチャンスはもらえる。けれど、そんな気持ちでは結果がついてくるとは思えなくて、決死の覚悟でけた。

だからこそ、張も大きくなり、今朝は翔の前でも上手く笑えなかった。それなのに、彼はそんな私のことを抱きしめてくれた。

『志乃なら大丈夫。もっと自分を信じてもいいと思うよ』

翔は、玄関先で見送る私に優しい笑顔を見せ、いつものようにキスをした。自分自を信じるのは難しくても、彼のことは信じられる。

鎖骨で輝くネックレスにれて翔の笑顔を思い出せば心は幾分か軽くなり、お店の前に著くと一思いにドアを開けた。

「おはようございます」

「おはよう。悪いね、早く來てもらって」

先にオーナーと夏さんが來ていて、ふたりは顔を見合わせたあとで私を見た。

「じゃあ、あまり時間もないから結果を伝えるね」

オーナーの神妙な聲が、この場の空気を揺らす。

心臓がバクバクと脈打ち、無意識にこぶしを握る。オーナーを見つめ返しながら、息を止めてしまいそうだった。直後、オーナーの手が目の前に差し出された。

「おめでとう。來週から晴れてドゥシュール麻布十番店のスタイリストだ」

お禮を紡ごうとしたが震える。の奧からは激しい熱が込み上げ、鼻がツンと痛くなる。數秒も経たずに心は喜びで満ち、瞳に浮かぶ涙を拭ってオーナーの手を握り返し、頭を下げた。

「ありがとうございます……っ! これからも頑張ります!」

「志乃ちゃん、おめでとう。言っておくけど、私は甘やかさないから覚悟しててね」

むところだ。きっと、ドゥシュールでなら、私の夢をもっと輝かせられる。そのための努力なら惜しまないし、憧れの人のもとで働ける幸運をムダにする気はない。

「明後日から十六日まではお盆休みだし、今日はこのまま夏と麻布十番店に行ってもらうよ。十七日の午前中はし練習して、午後からはデビューだ」

來週のことを考えてワクワクした。不安もあるけれど、それよりもが弾んでいる。

翔に早く言いたい。また一歩進めたことを伝えれば、彼は自分のことのように喜んでくれるはず。そんな翔の姿を想像すれば、彼に早く會いたくなった――。

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