ブルーム〜極甘CEOの包囲網〜》Bloom11 あなたとの路は縁のもの【4】

* * *

お盆休みは初日だけお互いに実家に帰り、二日目はその足で溫泉旅館で一泊し、三日目の夕方に家に戻った。四日目には真夏だというのにテーマパークに行き、ふたりしてクタクタになるまで遊んだ。

ふたりの休暇が丸々重なったため、普段できないことをしようと決めたのだ。五日目の今日はさすがに疲れ切ってしまい、まだベッドから出られないのだけれど。

「もう一時半か」

「そろそろ起きない? お腹空いたでしょ?」

「もうちょっとこのままがいい」

ぎゅうっと抱きしめられ、素れる翔のの面積が大きくなる。著したふたりのにはなにも隔てるものがないから、つい昨夜のことを思い出してしまう。

けれど、甘えたような彼が可くて、お腹の蟲が鳴かないことを願いながら逞しい板に頬をすり寄せた。

「……そういう可いことするのか」

「ダメ?」

「別にいいよ、志乃がこのまま俺に抱かれたいならね」

「……っ!」

低い聲で紡がれた囁きには、香がしっかりとこもっていた。吐息がれた耳朶からゾクゾクとしたものが走り抜け、うっかり流されそうになる。

「ダ、ダメッ! そうなったら夕方になるでしょ!」

「ふぅん、志乃はそんなに濃厚なのがご希ですか?」

「ちがっ……! そうじゃないからね!」

甘ったるくなった空気を変えるように、「お腹空いたね!」とを離す。翔は楽しげに笑うと、再度私のを引き寄せた。

「わかったわかった。今はしないから、あと五分だけ抱きしめさせて。ゆっくりできるのは今日までだし、明日からはお互いまた忙しくなるんだからいいだろ?」

私の髪を一でして「な?」と瞳をたわませた彼が、私の頬とにそっとキスを落とす。それだけで言い包められてしまう私は、なんて簡単なんだろう。

惚れた弱みって、きっとこういうことを言うんだ。そんなことを考えてはいても心は幸福で満たされていて、お盆休み最終日は優しい空気に包まれながら終わった――。

翌日、翔を見送り、三十分ほどして私も出勤した。

「いよいよ今日からね。午後一番に早速カットにってもらうわよ。新規だから指名をもらえるように頑張って」

夏さんの指示に返事をしてから普段通りに準備を終え、バックヤードで練習を始めた。お盆休み中も家でしは練習したけれど、やっぱりお店の方が気が引き締まる。

あっという間に午後になり、予約の確認をしようとレジカウンターに行ったところで、ドアが開いてお客様がってきた。

「いらっしゃいま―― 」

「こんにちは。カットの予約をれてる諏訪です」

「……っ、なんで……」

「だって、志乃の再デビューの一番最初の客になりたかったから」

そう言って笑うのは翔で、會社にいるはずの彼が目の前にいることに驚きを隠せない。目を白黒させていると、手が空いた夏さんがやってきた。

「彼ね、志乃ちゃんのデビューが決まった翌日に連絡をくれて、『緒で予約させていただけますか?』って。事を訊いたら人だって言うから協力しちゃった」

にこにこと笑う彼と翔に、サプライズを仕掛けられてしまったみたいだ。まだ平靜を裝えなかったけれど、なんとも彼らしい。

「仕事は大丈夫なの?」

「半休を取ったんだ。タケには呆れられたけど」

肩を竦める翔は、私が思っている以上に〝一番〟にこだわっていたようだ。嬉しいけれど、夏さんに人を紹介するのは恥ずかしかった。

「ほら、早くご案して」

「は、はい……。それでは諏訪様、こちらへどうぞ」

に案して、椅子に座った翔と鏡越しに目が合う。悪戯が功した年みたいな顔をした彼は、まるで高校生の頃の〝諏訪くん〟だ。

「今日はどのようにされますか?」

「お任せします」

けれど、私は無邪気さを覗かせた笑顔に弱いのだ。仕事中だというのにときめいてしまい、そんな自分を叱責しながら「かしこまりました」と微笑んだ――。

    人が読んでいる<秘め戀ブルーム〜極甘CEOの蜜愛包囲網〜>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください