ブルーム〜極甘CEOの包囲網〜》Bloom11 あなたとの路は縁のもの【5】

* * *

ドゥシュールのスタイリストとしてデビューしてから、二ヶ月が経った。

擔當できるのはまだほとんどが新規客だけれど、最近はしずつ指名をもらえるようにもなり、徐々に手応えをじている。夏さんは相変わらず厳しい反面、たくさん褒めてもくれる。そんな日々は充実していた。

いつも通りに仕事を終えると、帰路には就かずに駅前のカフェで翔を待ち、車で迎えに來てくれた彼の運転で六本木に向かった。

翔が予約してくれていたのは、高級ホテルにあるレストラン。三十七階建てのホテルの三十六階に店を構えるフレンチ専門店で、何度もテレビや雑誌で見たことがある。

今朝、彼がフォーマルワンピースを著るように進言してきたのはこういうことだったのか……と合點がいく。いいお店に行くのかもしれないとは思っていたものの、予想以上のことに気後れした。

「ねぇ、ちょっと高級すぎない? 特になにかあるわけじゃないのに……」

今日は十月十五日。翔はもう覚えていないだろうけれど、高校生だった私たちが夢を打ち明け合った日だ。彼とのあの思い出に救われたことが何度もある。

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ただ、それは私の中だけの話で、他にこれといった記念日はない。翔の誕生日は四月十五日だし、私の誕生日は六月十五日。一年記念日は先月の十一日だった。

「いいんだ」

私を見つめる翔が、いつものように微笑んだ。彼の右側の大きな窓からは六本木の夜景が見下ろせ、店の雰囲気もロケーションも最高としか言いようがない。

シャンパンで乾杯すると、アミューズのスモークサーモンといくらの冷菜、じゃがいもと數種類のきのこを包んだオムレツがアントレとして運ばれてきた。

栗かぼちゃのポタージュは甘みが強く、素材の味を存分にじられた。

ポワソンには、真鯛のナージュ仕立て。ビシソワーズのような白いスープの中に真鯛のポワレがれられ、バジルソースとのコントラストがしかった。りんごとジンジャーのグラニテは、さっぱりとしていて口當たりがよかった。

ヴィヤンドゥは、薩仔牛を使用したフィレのロッシーニが振る舞われ、の上に載ったとろりとしたフォアグラがソースの味を引き立てている。

ふじりんごのコンポートのアヴァンデセールには赤ワインソースがよく合い、デセールの金糸のような飴細工が施されたモンブランは甘くてふわふわの食が最高だった。

とにかく「おいしい」としか言えなかったけれど、翔も共してくれていた。

「素敵なお店に連れてきてくれてありがとう」

笑顔が絶えない私に、彼も瞳をたわませている。

「俺も志乃と來られて嬉しいよ。なにより、志乃が喜んでくれてよかった」

翔は本當に素敵な人だ。自分のことよりも私を大切にしてくれ、いつだって私を幸福で満たしてくれる。

この先の未來を彼がどう考えているのかはまだわからない。

けれど、私は翔とずっと一緒にいたいと思っているからこそ、彼には私以上の幸せをじていてほしい。

「志乃」

不意に真剣な眼差しを向けられ、しっかりと向き直るように見つめ返せば、端正な顔に微笑が浮かんだ。

「俺は志乃が思ってるほど、いい奴なんかじゃない。甘やかすのは志乃だからで、志乃以外なら盡くそうとも思わない」

「突然どうしたの?」

強張っているような聲音に、わずかに戸う。それなのに、翔は私の質問には答えてくれず、微かな苦笑を零すだけ。

「どこか弱そうに見えて芯が強いところも、つらい目に遭っても立ち直ろうとしていた努力家のところも、俺に見せてくれる笑顔も涙もちょっと拗ねた表も……全部がおしいって思う。きっと、この気持ちはこの先もずっと変わらない」

が大きく高鳴る。じていた戸いなんてどうでもよくなって、唐突すぎる彼の話だけが鼓をくすぐる。

「志乃がつらいときは傍にいたいし、泣きたいときには抱きしめていたい。なにもかもから守るなんて無責任なことは言えないけど、いつだって一番近くで支えたい」

嬉しくてたまらないのに、の奧底から込み上げてくるのは涙が溢れる予。上手く笑えなくてが震えてしまいそう。

「だから……」

剎那、テーブルにベルベット素材の小さな箱が置かれ、私は言葉を忘れて瞠目する。

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