ブルーム〜極甘CEOの包囲網〜》エピローグ【3】 Side 翔

二十一時頃に帰宅した志乃を玄関で出迎え、いつものようにキスをわす。左手の薬指に収まるエンゲージリングを目にし、荒んでいた心が優しい溫もりに包まれた。

「夏さんにすぐに気づかれて、質問攻めにされちゃった」

俺の視線に気づいた彼が、困り顔で微笑む。きっと、顔を真っ赤にして困したんだろうと思うと、その姿が見られなかったことが殘念でたまらなかった。

「でも、たくさん『おめでとう』って言ってもらったよ。指はダイヤが大きいからさすがに仕事中はつけられないけど、帰ってくるまでに何度も見ちゃった」

面映ゆそうだった志乃が、俺を見上げて破顔する。

くて、おしくて、どんなものにも代えがたい存在。自分の中にこんながあったのかと思うほど、彼といると甘ったるいことばかり考えてしまう。

けれど、喜びで満たされた心は幸福に包まれ、この上ない至福を抱いていた。

きっとこの先、俺たちは喧嘩をしたりすれ違ったりすることもあるだろう。殘念だが、人生は幸せや喜びばかりの日々ではできていない。

だからこそ、今ある幸福がいっそうおしく思えるのかもしれない。

「翔?」

「ああ、ごめん。し考え事してた」

「疲れてるんじゃない? 私もちょっと眠いし、今夜は早めに寢よう?」

「ああ。でもそれは、志乃を抱いてからね」

「……っ」

途端に頬を染めた志乃に目を細め、今夜はどんな風に彼そうかと思いを巡らせる。ひとまず、本能のままにらかなにそっとくちづけた。

俺の心の中にある香月志乃への初心は、この先もずっと褪せることはないだろう――。

【END】

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