《我が家の床下で築くハーレム王國》第3話マイダーリン
いきなり姫に一緒に眠ろうなんて言われた俺は、揺を隠せなかった。初対面の人にあんな事を言われた経験なんてむしろ今までなかったし、人生で一度あるかないかの経験なのも間違いない。
「そう、ハナティア様がそんな事を」
「だから帰らせてくれないか。俺いい加減大學にも行かないと怒られるし、彼には悪いけどここに居座るのはちょっと嫌なんだ」
「無禮な事をしたことについては私から謝罪させていただきます。一度帰るのも構いませんし、この騒を収めないと帰りたくても帰れなくなりますから」
「ああ、ありがとう」
サクヤに一通りの事を説明すると彼は理解してくれたらしく、俺が家に帰るのを許してくれた。あれだけ契約書とか言っていたのに、いざこんなに素直になられるとしだけ申し訳なくじる。
「では一度帰るなら、こちらをお持ちください。これを使えばあのようなを開かなくてもトリナディアに出りできますから」
サクヤが渡してきたのは小さな小型機械。スイッチが一つなところを見ると、多分空間移転裝置とかその類だろうか。というか、あの大きなは必要なかったの?
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「隨分騒がせたのに、こんな簡単に片付く問題なのかよ」
「私もここまで大きな騒ぎになるとは思っていませんでした。しかし、今後はそのような事は起きない事を私が保証します」
「いや、二度と起こさないでくれ」
「でも今後も出りする事はあるんですよね?」
「それは……まだ何とも言えないけど、俺の気分次第だよ。何せあんな事されたんだから」
「でもあれはハナティア様のそのままの気持ちを表しているかと思いますよ」
「直球すぎるんだってば」
「それがなんですよ」
「?」
(初対面の人間に対して示すものなのかそれ)
でもハナティアのあの言からして、まるで俺をあんな風にう事に抵抗をじていない。いくらそれがといえど、やはり間違っている。
「とりあえずもうし考えさせてくれ。俺にも事があるからさ」
「分かりました。いい答えが返ってくるのをお待ちしておりますね」
そう最後に會話をわした俺は、三日ぶりの地上へと帰還した。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
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地上に戻った後は々忙しくて(主に取り調べとか)、二日くらいはその事を考えられる余裕がなかった。勿論その間にも大學にも通わないといけないわけだし、苦労が絶えなかった。
「いきなり帰ってきたと思ったら、ここ數日浮かない顔してどうしたんだよ、翔平」
大學からの帰り道、高校からの親友である多田野正志が俺の顔を見るなりそんな事を言ってきた。彼はどちらかというとスポーツ系の人間で、元陸上部だったりする。
何かの縁あってか、こいつとは大學も一緒で今もこうして馬鹿みたいに絡んでいる。そこにはもう一人親友がいるのだが、今はこの場にはいない。
「取り調べとかで疲れているだけだよ。それにちょっと考え事しているだけ」
「考え事? あのも消えたんだから問題ないんだろ?」
「それが、そうでもないんだよなぁ」
「何だよその焦らし方は。話せる事なら話してくれよ」
「話せたら話しているっての」
こいつとはもう三年の付き合いになるが、何かと相談に乗ってくれて頼もしいところがある。だが、今回の事はちょっと特別なので、話そうにも話せない。
(ましてや子供の相談なんてな……)
「何だよ一人で勿ぶって」
「悪い。しだけ時間がしいんだ」
「そこまで言うなら俺も何も聞かねえよ。でも本當に困ったら話せよ」
「ああ」
途中で正志とは別れ、家に帰宅。だがその先で俺を待っていたのは……。
「おかえり、ダーリン!」
まさかのハナティア……ではなく、見ず知らずのの子だった。
「だ、誰っ!?」
てか、だ、ダーリン?
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「ええっ! ミルが地上に行ったの?」
「はい。先程確認しました。どうやら彼の存在を嗅ぎつけたみたいですね」
「何でよりによって……」
翔平が謎の第三號に遭遇している頃、ハナティアは一人焦っていた。まさか自分以外のこの國のが彼に接するとは予想していなかったからだ。
「ど、どうしようサクヤ」
「どうかされましか? ハナティア様」
「ミルってかなり積極的な子だし、見ず知らずの男に寄っていく格だから、翔平も簡単に……」
「それはハナティア様も変わらないと思いますが……」
「何か言った?」
「いえ。それよりここは様子を見てみるのが一番では。どう転んでも彼はここに來ますし」
「そ、そうだけどぉ」
不安ばかりがハナティアに募る。彼の気持ちを勿論理解しているサクヤだが、この國の事が事なだけに、こちらからはなんとも言えない。
(でもそこまで不安がる必要はないと思いますよ)
積極的な反面、こういうところが彼にあるのもやはり理解していた。
「そもそもハナティア様、彼をいきなりった割には次の行に移していませんよね?」
「そ、それは、し自重をした方がいいかなって」
「自重ですか? まあ彼の方も驚いていましたからね」
「そう。私嫌われたのかな」
しょんぼりしながらハナティアは呟く。初対面の男の人に対して、あれはやり過ぎたという気持ちが彼の中にはあった。
(でも翔平は何も分かっていないだけで本當は……)
でもやり過ぎな分、彼の中には絶対的な自信があったのも事実。ただ、それに彼が気づいてくれるのに、どの位の時を費やす事になるかは分からない。
「嫌われてなんかいませんよ、この私が保証します」
「本當?」
「はい! でもハナティア様、一つ忠告させてもらいますけど」
「何よ」
「常にになろうとする癖、やめた方がいいと思います」
サクヤの言っている事をハナティアは理解していた。
(でも私がになりたかったのは、これの方が翔平にインパクトを與えたかっただけで)
それが決して癖なわけではない。
「翔平にはその方がインパクトが強いかなって……」
「他の方法を考えはしなかったのでしょうか?」
「考えたけど、いいのが思いつかなくて……」
「それで服を買いに行ったのですね」
「うっ」
サクヤは理解していた。ハナティアが自分から長をしようとしている事を。だからこそ、彼は背中を押してあげた。
「努力するならそれなりの努力をするべきですよ。そうすれば彼もきっと」
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「へっくしゅ」
「ねー、どうしたのダーリン。風邪?」
「多分誰かが噂しているんだよ。それより、そのダーリンって呼ぶのやめろ!」
あれから一時間くらいが経ち、もうすぐ夕飯の支度をしなければならないのに、いきなり俺の目の前に現れた黒髪のミルというが付きまとって料理ができない。
「だってダーリンはダーリンでしょ? そう本に書いてあった」
「いくら地下の國でもそんなプライバシーの欠片もない報が載っている本なんてありません」
聞くところによると彼もどうやらあの地下の國の出らしいが、どういう訳か俺のところに來てしまったらしい。
「ダーリンは、この國の姫様と結婚するのぉ?」
「今のところはそのつもりはない。というか、まだ二日前にまともに會話したくらいだし」
「でもその機械を捨ててないという事は、もう一度訪れる気はあるんだよね〜」
「そ、それは」
「それにもう姫様の結婚の話は、國中に広まっているんだよ?」
「本人の了承もなしに?!」
でもミルが言った事はあながちまんざらでもなかった。
この二日の間、俺は一度たりともサクヤからもらった機械を捨てようとは思わなかった。これを壊してしまえば、俺から向かう事はないだろうし、最悪この家を捨てて、実家に帰るという選択肢もあった。
「ダーリンって意外にツンデレ?」
「誰がツンデレだ!」
それなのに俺はそれらを選ぶという考えはなかった。理由は分からないけど、何となくそれをするのは無しだと思っていた。
「悩んでるならここは思いきって、行っちゃうのが正しいと思うんだ私〜」
「そうは言ってもだな」
「それに向こうに戻れば、私とダーリンは見事ゴールインだし」
「誰がいつ、お前なんかとゴールインするか!」
「えー、忘れちゃったの? まあ仕方ないか」
「な、何だよその意味ありげな言い方は」
忘れたもなにも、初対面なのだからこんな事言われても俺は困る。あとさっきハナティアとの結婚の話を打ち出した張本人が、サラッと意見を変えようとするな。
「とりあえず帰ってくれないか? 俺これから夕飯食べて寢るんだから」
「じゃあ私も〜」
「誰がお前なんかと!」
「えー」
そう言いながらグーとお腹を鳴らすミル。
……。
「いいか、これ食べたら帰れよな!」
「ダーリン優しい! 私」
結局タダ飯を食べるだけ食べて、ミルは勝手に地下へと帰っていきましたとさ。
(何だったんだあいつは)
何だかもう一度また會いそうでし怖い。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
翌日、
「何だよ翔平、寢不足か」
「ああ、あの後も々疲れる事があってな」
「お前大學ってから急に苦労しだしたな」
ミルの騒ぎのせいで、寢不足になった俺はその日の講義が全く耳にってこなかった。最悪正志に助けてもらえば解決なのだけれど、今はそんな気分ではない。
「なあ正志、俺どうすればいいかな」
「どうすればって?」
「このままだと俺、大學通えるほど神もたないかも」
「何だよまだ大學始まったばかりだろ。そんな憂鬱になるなよ」
「憂鬱になりたくなるよ」
ため息をらす。ハナティアといいミルといい、キャラが強烈すぎてついていけない。更に言うならまだこれ以上のキャラが俺を待っているとしたら、ゾッとしてしまう。
「珍しいな、お前が元気ないなんて」
「そんな珍しい事でもねえよ」
こんなに憂鬱になるのって、今までで初めてかもしれない。
「なあ翔平、お前もしかしてさとかしてんのか?」
「いや、何でそうなるんだよ」
「誰にも言えない相談で、憂鬱になるくらいの事だからかなって」
「どこをどう繋げばそうなるんだよ」
(か……)
しばらくしていなかったな、そういえば。
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