《我が家の床下で築くハーレム王國》第9話眠るが抱えているもの
先程の揺れにより、帰り道を塞がれてしまった俺とハナティア。おまけにその衝撃で、ハナティアが足に怪我を負ってしまった。
「歩けそうか?」
「ちょっと厳しいかも」
瞬間的に助けたとはいえ、完全に回避できたわけではなかったらしい。歩けるようになるまで、それなりの時間が必要かもしれない。
「困ったな、食料も何も持ってきてないし、ここでの長居は駄目だよな」
「私一応攜帯食料くらいは持ってきているけど、それも長くは持たないと思う。どうする? 私我慢してでも歩くけど」
「無理だけはさせたくないしな。ハナティアの怪我も見たじ捻挫みたいだし、すぐには歩けないだろ」
「ごめん……」
「謝るなよ。とりあえずしばらくは座って休んでろ」
「うん」
ハナティアを安全な場所に座らせて、俺は改めて瓦礫を見る。天井の一部が崩れたみたいだけど、これ変に刺激したら全ての天井が崩れてしまいかねない。
(助けを呼んでもここからじゃ無理か)
「ごめん翔平、私がこんな事を言いださなければ」
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瓦礫を眺めていると、ハナティアがそんな言葉をらす。別に謝る必要なんてないのに、彼は今回の事相當気にしているらしい。
「なんで何も悪くないお前が謝る必要あるんだよ。今回の事件はどちらかというと自然現象で起きたことだし、これを予測できなかった俺も悪い。だから自分だけ悪いなんて思うなよ」
「翔平は怒っていないの?」
「怒る必要なんてどこにあるんだよ。むしろ何度も謝るとそれに対して怒るぞ」
そもそも今回の件は、本來ならハナティア一人で行おうとしていたものだ。もしこの時俺がいなくて、彼が一人だったらって考えると背筋がゾッとする。
「私ね、本當は一人で調べるのが怖くて翔平をったの。地図にも載っていないような場所を一人で調べるなんて、相當勇気が必要だし」
「まあ、いくら姫でも怖いものは怖いよな」
俺は瓦礫から離れて、ハナティアの隣に腰掛ける。
(いくら姫と言っても、一人のの子だもんな)
しかも俺とさほど歳が変わらない、普通のの子。そんな子がこんな危険をおかして、窟へ一人で行こうだなんて想像できない。
「それでも私はやらないといけないと思うの。それがトリナディアの姫としての役目だから」
「役目、ねぇ」
俺にはその役目について、まだ理解できないよ。
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
それからどれ位の時間を過ごしたのか分からないが、気がつけば攜帯の日付は変わっていた。
「何それ」
俺の攜帯を見てハナティアが聞いてくる。そういえばこいつ、攜帯を知らないのか?
「攜帯って言って、これを使えば遠くの人と連絡が取れる。まあ殘念ながらここは圏外だから、助けを求める事はできないんだけどな」
「へえ、そんなあるんだ」
ハナティアと俺は同年代に近いのに、攜帯を知らないのはやはり地上と地下暮らしの差なのだろうか。
(今ここで更にスマフォとか言い出したら、もっと混するだろうな)
 そもそも地下の人達はどうやって連絡を取り合っているのか、それもし気になる
「なあハナティア」
「ふわぁ」
試しに聞こうと思ったタイミングで、ハナティアが大きな欠をする。どうやら眠くなってきてしまったらしい。
「もしかして眠いか?」
「うん……」
「じゃあ先に寢てろ。俺はあとから寢るから」
「分かった……」
ハナティアは俺に寄りかかるとそのままそっと目を閉じ、すぐに寢息を立てた。どうやらかなり疲れていたらしい。
(こんな事になったら、それは疲れるよな)
俺もこの一日で相當力を使ってしまった。あとどれくらい力が持つかわからないけど、長くは続かないのは分かっている。
(ハナティアも危険なのは分かってはいただろうに)
たとえあの揺れがなくても、この窟はただてさえ薄暗い。燈りを持って歩いているとはいえ、足場も不安定だし所々が崩れていたりして危ないのも分かっている。
(そこまでして果たす役目なのかな)
俺はそれだけが疑問だった。こうして寢ている間はただのの子なのに、起きたら一人の姫。そんな彼の姿を見ると、可哀想にすら思えてきた。
(本人はそんなの一切じてないだろうけど)
頭をでてみる。彼はピクッと反応しながらも、靜かに寢息を立て続けた。こんなに近くで寢ている彼を見ると、しだけだが可く見える。
(こんな子が本當に運命な子だなんて)
未だに信じられない、
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「つまりあんたは翔平が言っていた姫の、メイドさんって事でいいんだよな?」
「はい。たまに地上の方でバイトをしていたりしますが」
その頃、サクヤと偶然會ってしまった正志と雪音は、何故彼の部屋から出てきたのかなどを彼に尋ねていた。それに対してサクヤは全てに丁寧に答え、二人もなんとなくではあるか納得していた。
「それで翔平は、今どこにいるんだ?」
「翔平様なら先程からハナティア様と、ある場所へと出かけています。何とも境探しだとか」
「境探し?」
「実は私達の國からし離れた窟に、境があるとかいう噂があるんです。ただ、誰かがそれを見たという報などはございませんが」
サクヤ自もその噂について有意義な報を持っているわけではなかった。だが、ハナティアが二人で旅行に行きたいと言って聞かなかったので、二人を送り出すことした。
(しかし先ほどの揺れ、し気になりますね)
「私し気になります。その境というの」
「それは俺もだけど、俺達は行けないんだろ?」
「はい。そういう規則になっていますので。ただ、私先程から一つ気になっている事があるのです」
「気になる事?」
あの揺れと二人が向かった場所を合わせて考えると、もしかしたら何かの事故に巻き込まれている可能があるのではないかとサクヤはじていた。
その不安が彼自にも表れていた。
「さっきからサクヤさん震えていますけど、大丈夫ですか?」
そう彼に尋ねたのは意外にも雪音だった。彼はどちかというと控えめな格ゆえに、こういう言葉も滅多に言わない事を正志は知っていた。ましてや相手は初対面。
何かが彼を変えているのかと正志は思う。
「ふ、震えてなんかいませんよ。ただ、々不安でして」
「もしかしてさっきの揺れがか?」
「はい。お二人が向かったのは窟ですから、もし萬が一何かに巻き込まれていたらと考えると心配で」
「だったら、探しに行くのがベストなんじゃないか?」
「勿論行きたいですけど。二人の旅行を邪魔するわけには」
「別に邪魔ではないだろ。もしもの事が起きている可能だってあるんだしさ。それに何も起きてないなんて言い切れないだろ?」
「それはそうかもしれませんが」
「そ、そこまで心配しているなら行きましょうよ。窟に」
「お二人とも……」
サクヤが行くのを躊躇っていたのは、先程も言ったように二人の折角の旅行を邪魔したくないという事だった。それに今回の件をハナティアは、仕事の一環にしている。それを邪魔したら、きっと彼のプライドを傷つけてしまうと思っていた。
(でもそれよりも大切なことがありますよね)
二人に背中を押された彼は、決心する。
「そうですね。本當に何が起きていたら大変ですから。お二人も付いてきてください」
「え? でも……」
「非常事態とあらば問題ありません。お二人がご協力してくだされば、今後はハナティア様を助けた者として、私達の國へご招待も可能ですから」
「それは願っても無い事だけど。そこまで言ってくれるなら」
「も、勿論行きますよ」
「ありがとうございます、お二人共。では出発は明日の明朝にして今日はお休みしてください」
こうして波のゴールデンウィーク初日は幕を閉じ、二日目へと突するのであった。
「ところで今翔平は、姫と二人きりなんだろ?」
「はい」
「二人で一緒に夜を過ごすって、そういうフラグ立つんじゃないのか?」
「はて、フラグとはなんの事でしょうか」
「おいおい、そんなの決まっているだろ。エッ……」
「正志君、これ以上言ったらアウトです」
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