《我が家の床下で築くハーレム王國》第28話と姉

「なあハナティア」

「……」 

儀式を始めて既に二時間。俺は早くも暇していた。ハナティアは先程から正座をして、ずっと目を閉じたままジッとしている。俺が話しかけても、反応すらしない。

(よく二時間もあのままでいられるよな)

全くかない彼に思わず心してしまう。でも俺はそれをただ見ているだけなので、ただ暇な時間を過ごしている。

(攜帯とかも妨げになるからって、置いてきちゃったし……本當に何をすればいいんだ)

それから更に二時間が経過した所で、ハナティアは一度休憩を取る。間もなく夕方になるので(地下に一応時計は置いてある)腹も空いてしまったらしい。

「よく四時間もあの態勢でいられるよな」

「一応翔平の知らない所で、そういう修行みたいなものはしてきたからね。でもまだこれで一日の半分しか終わってないの」

「半分ってつまり、あと四時間もやるのか?」

「うん。退屈かもしれないけど、もうしだけ我慢して」

「いや、まあ、うん」

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これをあと六日も続けるというのに、平然とした顔でいるハナティア。我慢する事は別に問題ないけど、やはりハナティアのの方が心配になってしまう。

(本當は心辛いんだろうな)

余計な事を考える。でも多分それは間違っていない。こんな小さなの子が、一日八時間も同じ態勢でいるのが辛くない筈がない。こんなまだ見た目小學生くらいの子かが……。

「今すごく失禮な事考えなかった?」

「いえ、気のせいです」

「小學生くらいとか考えていたでしょ?」

「お前はいつからエスパーになったんだよ」

「あ、やっぱり考えてたんだ。この馬鹿!」

ハナティアは疲れているところを見せないと言わんばかりに笑っている。だがそれを見ているとかえってこちらが辛くなる。

(でも止めろだなんて言えないよな……)

俺の中で々と葛藤しながらもその後再び儀式を再開。それを俺が見屆ける事更に四時間後。ようやく一日の日程が終了。時間はまだ九時くらいなのだが、明日も朝早いという事で、早めに睡眠をとる事に。

「何か寢づらいなここ。布団もないし」

「そういう所だからしかたないでしょ」

床が冷たくてなかなか寢付けない俺。おまけに暇の間にし寢てしまったりしているので、うまく寢れない。それに対してハナティアは、八時間の疲れからかし會話した後に眠ってしまった。

(まあ、當たり前か)

ハナティアの寢顔を眺めながら、ボーッとする。時間はまだ十時過ぎ。普段ならテレビ見たりして楽しんでいるのだが、今はそれもないのでとにかく暇だ。

(幸せそうに寢てるな、こいつ)

以前も思ったのだが、こう無防備になっている時ほど、ハナティアが可く見えてしまう。姫の立場も何もかも忘れて、無防備になっているこの時間こそが彼の平和なのだろう。

(子供、か)

考えてもいなかった。まさか自分に子供ができるなんて大學生になるまで考えもしなかった。というか普通は考えない。

(でもハナティアはきっと分かっていたんだろうな、こうなる事さえも)

本當は修行だってもっと前からしていたんだと思う。二ヶ月でここまでになるなんて考えにくいし、本當はずっと前からハナティアは……。

「……翔平? 寢ないの?」

ハナティアが突然目を覚ます。

「悪い、起こしちゃったか?」

「大丈夫……また寢るから」

「そうか」

「翔平もちゃんと……」

だが夢うつつなのか、しばらくすると眠りについた。また起こしちゃうと悪いし、俺もそろそろ寢るか……。

「おやすみ、ハナティア」

◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

目を覚ました時、自分はなぜここにいるのか分からなかった。親の名前も、自分の名前すらも。

そしてずっと近くにいたの名前すらも。

『しょう……へい?』

『そう。あなたのの名前は柏木翔平。私達の子供』

『……子供?』

『そうよ。だから私達の事はお母さん、お父さんって呼んでね』

自分には姉がいた。それは何故か僅かに覚えていた。でもその姉は死んでしまっていた。自分と一緒に大きな事故に巻き込まれたらしい。

『おおきなじこ?』

『そう。とっても大きな事故。それで翔平とハナティアちゃんはなんとか一命を取りとめたけど、柚ゆずは……』

『ゆずおねえちゃん?』

『そう。お姉ちゃんは柚って名前だったの。そしてもうひとりは……』

被害者は姉と自分ともう一人。その子とは昔から仲が良かったらしかったんだけど、もうしばらくは會えないという事らしい。

だから俺はその子と再會してもすぐに思い出せなかった。しばらくって言われても、いつ會えるか分からなかったから。

「柚姉ちゃん……」

朝目が覚めて出てきた一言目がそれだった。しばらく姉ちゃんとしか言っていなかったから、肝心の名前が出てこなかった。

(本當に何もかも忘れてたんだな俺……)

二日目の朝、かなり早く起きてしまった俺は目覚ましがわりにしだけ運をしてハナティアが起きるのを待つ。時間になったら、目覚ましが鳴ると言う事なので、起こさなくて大丈夫だろう。

(それにしても、何で俺記憶喪失なんかになったんだろ)

事故のショックでと言われれば納得できるが、何だかそこが引っかかる。事故に巻き込まれて記憶を失くすという話は、ありがちな話でもある。

しかしハナティアが何かをまだ隠していたりする辺り、もしかしたら意図的に自分で引き起こした可能もなくはない。そう、何が嫌な事を忘れるために。

「あれ……翔平、早いね」

そんな事を悩んでいる間に、ハナティアも起床。まだ起きる時間よりし早い時間だ。

「何か思ったより早く起きちゃってさ。そういうハナティアこそ、寢なくて大丈夫なのか?」

し早いけど……大丈夫」

眠い目をりながらを起こすハナティア。運を止めた俺は、彼の元へと寄る。

「あまり無茶だけはするなよ。見てるこっちが大変だから」

「翔平には言われたくない。それより、二日目からは翔平も同じ事をやる事になるけど、は大丈夫?」

「え?」

俺も同じ事をやるんですか?

「あの、修行とか全くしてないんですけど」

「頑張ってね翔平」

「まさかのごり押し?!」

地獄はここから始まるらしい。

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