《我が家の床下で築くハーレム王國》第37話それぞれの行く道

私はずっと待っていた。

いつか彼が私を好きって言ってくれる日を。

二十年、いやもっと前からなのかもしれない。

だから今、その想いが葉って、私は……。

「オッケーに決まっているでしょ、馬鹿。ずっと……ずっと待っていたんだから」

今にも泣き出しそうだった。翔平の気持ちがすごく……嬉しくて。

「ハナティア?」

返事は返ってきたものの、その後から一向にハナティアは振り向こうとはしなかった。街燈が彼を照らしているのだが、その地面には雫が溢れていってる。

「本當に遅いよ翔平。私を二十年も待たせて……」

「何か……ごめんな。でもそれが俺の今の気持ちなんじゃないかって、ようやく気づいたんだ」

「それが遅いのよ! 馬鹿」

ようやく振り返るハナティア。その顔は涙に濡れていた。

二十年

それがどれだけ長い時間なのか、俺には計り知れない。けれど彼は、俺が事故で記憶喪失になっても想い続けてくれていたのは事実。俺は今それが誇りにすら思える。

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「これから先が長くなるな」

「うん……。でも私心配事が一つあるの」

「何だよ」

「トリナディアはだらけの國だって前に言ったけど、翔平が浮気しないかなって」

「う、浮気って。そんな事俺がするわけないだろ」

そういえば今更ながら思い出した。俺が計畫に參加する事になったのって、トリナディアがばかりしかいないからというのもあったっけ。

(キャロルとミルだけでキャラが充分濃いから忘れてた)

でも、だからって浮気だなんて事は決してしない。それはここで斷言しておきたい。

「まあ、翔平はそういう事しないから、大丈夫だけど。むしろできるほどの度ないし」

「サラッと失禮な事を言うなよ!」

俺達二人の散歩はまだまだ続く。

◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

「翔平君がハナティアちゃんに告白? それは本當ですか」

「間違いないと思う。溫泉にっている時に話を聞いて、改めて分かったんだ」

正志君の口から告げられた無なる現実。でもそれは本當は私自が分かっていた事なのかもしれない。

それも最近の事ではない。

もっと前から二人は……。

「正志君」

「ん?」

「私本當は分かっていたのかもしれません……。いつかはこうなるんじゃないかって……」

「そうか……」

「でも分かっていても、やはり辛いんですよ。失って」

「まあ、そうだろうな」

視界が滲んでいく。まだ分かっはいない事だけれど、恐らく明日溫泉にった時にそれは分かる事。だから今のうちに泣いておきたい。

「だから……泣いていいですか」

「……ああ」

私は久しぶりに泣いた。悔しいからとか、そういうではなくて、ただ悲しくて。もうこの想いは屆く事はないんだって。

だから泣いた。

正志君のを借りてずっと。

(これで本當に終わりなんだ、全部……)

長く続いた私の想いの旅は、ようやく終著點へとたどり著こうとしていた。それは私のまない形だったけど、ようやく終わりを告げる。

長い長いの旅の終著點。

◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

「はぁ……」

約二時間近く二人で散歩して帰ってきた俺は、その足で二度目の溫泉にっていた。しかも今回も誰もっていないという何ともグッドタイミング。

(これでよかったんだよな、きっと……)

その答えは誰も分からない。けれど、多分これで良かったんだと俺は思う。

「何だよ翔平、帰ってきてたのか」

天井を眺めながら考え事をしていると、正志の聲がする。どうやら彼も俺と同じように溫泉にりに來たらしい。

「そういうお前達だって戻ってくるの早かったな」

「それは、まあな」

ずっと天井を眺め続けている俺に対して、を流している正志(シャワーの音がするので、多分そうだと思う)。しばらく會話はなかったが、正志から先に口を開いた。

「やっぱり駄目だったよ俺」

「振られたのか?」

「直接言われてないけど、雪音の反応を見て分かった」

「何て言ったんだよ」

またしばらくの沈黙。言うか否か悩んでいるのだろうか。

「お前がハナティアちゃんに告白するって言った」

「なっ! 何でそれを言ったんだよ」

予想外の言葉に俺は正志を見る。だが正志は俺の方を見ようとはしない。

「お前だって気づいていたんだろ。雪音の気持ち」

「雪音の……気持ち?」

『もし私が翔平君が好きだと言ったらどうしますか?』

ついこの前の冗談のような言葉。俺はその言葉の真偽は分からなかった。けど心の中ではもしかしたら思っていたのかもしれない。

雪音にその可能があるのかもしれないって。

「なあ翔平。お前これからどうするんだ? ハナティアちゃんに告白してオッケーもらったんだろ?」

「いや、俺まだ何も言ってないけど」

「見れば分かるんだよ、そのくらい。それで俺の質問の答えは」

「どうするって、俺はいつもと変わらずに」

「できないだろ。もう」

「いや、そんなの分からないだろ」

「俺は言っただろ、ケジメはつけろって。だからこの旅行は、お前にとってこれまでの暮らしとのケジメをつける意味を持っていたんだよ」

「何でそんな急に……」

正志が何を言っているかすぐには分からなかった。だけどよく考えれば答えなんてすぐそこにあったんだ。

「それぞれの想いを知ってしまった以上、俺達は多分これまで通りの関係ではいられない。それぞれが、それぞれの道を歩き出すんだからこれからは」

「正志……」

「って言っても、一切會わないなんてことはないよ。夏休みだって出かける約束だってしてるしな。でももうその時間も長くないって事は覚えておいた方がいいと思うぞ俺は」

正志はそう言うと風呂から出て行った。

「おい、正志!」

あいつ、まだ頭流してないのに大丈夫なのか?

「って、それを早く言えよ馬鹿!」

「いや、それの方が面白いかなって」

「面白くないわ!」

ずっと一緒だった俺達の関係は、今日この日を境に大きく変化し始める。それはきっと、誰もんではいなかったかもしれないけど、もう止まる事はできない。

それが俺の選んだ道なのだから。

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