《我が家の床下で築くハーレム王國》第57話お泊まり會は事実と共に 中編

我が家に帰宅してすぐ、俺は正志にずっと隠していた事を説明した。それを聞いた正志は、何もかもが衝撃的だったのか、しばらく黙っていたがようやく口を開いた。

「じゃあお前は、その為にハナティアちゃんとこの四ヶ月共にしてきたのか?」

「いずれ話さなければならない事なのは俺も分かっていたんだ。けど、それを話す為の時間が俺にも必要だった」

「雪音には話したのにか?」

「いや、雪音は元からその話を知っていてもおかしくないんだよ」

「何だよそれ」

雪音はトリナディアで過ごした経験がある以上、多はこの話に通じていた。それを証拠に、雪音は先程この話をするきっかけを作ってくれた。それに確か以前彼とはこの話をした記憶がある。

「昔雪音もトリナディアで生活していた、のか?」

「俺もそもそもこの話は、本人から語られるまでは知らなかったんだよ。俺もその話を聞いた時は驚いたよ」

「あれ、そもそも雪音もって言い方はおかしくないか? それだとまるでお前も」

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「トリナディアで暮らしていたよ」

「じゃあ本當は昔からハナティアちゃんの事を知っていたのか?」

「それがそうでもないんだ。俺は二十年前に一度記憶喪失になっていて、トリナディアの事どころかハナティアの事も忘れていた」

「記憶喪失だと」

キッカケはあの事故。全てを思い出すきっかけとなったあの場所で、二十年前に柚姉が命を落としてしまったあの事故。

俺も詳細にはその事を思い出せていないが、キッカケになったのはハナティアだ。そしてそれを彼は負い目にじている。

「正直俺には信じられない話だな」

「翔平君の言っていることは全部本當ですよ。信じられないかもしれませんが」

「だったら、何でそんな大事な事をここまで隠してきた」

「それだけは俺も悪かったと思っている」

「悪かったと思っているなら、何でお前は……俺達と別れる選択肢を選ぼうとしている。これまで通り一緒に大學通って、就活が始まってもこうしてたまに會えば、過去なんて何も関係ないじゃないか。それなのにどうして、お前は……」

「俺だって! お前達と別れるなんて選択はしたくないさ。でも、俺達はもうすぐ就活が始まり、それぞれの道を行く。だから俺も俺の道を選ぶべきだと思っている」

「それがお前の道なら、それは間違っている」

「何が間違っているんだよ! 俺はハナティアが好きなんだ。それならその道を選ぶ選択肢だって、間違っていないだろ!」

次第に言い合いになり始める俺と正志、正志の言う通り、毎日のようにはいかなくても時々こうして會って、笑って楽しい事をすればいい。むしろ俺の方が現実からかけ離れていて、間違っている。

それは俺だって理解している。

出來ることならそうしたい。

だけどもう俺が進む道は決まっていた。

「どうしたんだよ翔平。お前はそんなに頑なになるような人間じゃなかっただろ。何がお前をそこまでかすんだよ」

「儀式」

「何だよいきなり」

「七月にる前に、俺一週間休んだだろ? それはこれから生まれてくる子供の為に、儀式を行ったんだ」

「翔平君、それは」

「雪音も知っているだろ? 二十年前に俺の姉ちゃんがやっていた事を俺とハナティアは行ったんだ。それが何を意味しているか分かるよな」

「ちょさょっと待て翔平、これから生まれてくる子供のための儀式って、まさかお前……」

「ああ。ハナティアのお腹には既に新しい命が宿っているんだ」

俺はこれから生まれてくる子供のためにも、立ち止まる事なんてできない。それに俺はハナティアが好きなんだ。好きな人の為なら俺はたとえ……。

「だから俺は、あいつの側にいてやりたいんだ。これから家族になるために」

■□■□■□

「ハナティア様、今日は翔平様のところへは行かれないんですか?」

「今日と明日、翔平のお友達が泊まりに來ているみたいなの。だから私はお邪魔かなって」

「なるほど」

幽霊屋敷の出來事から一週間、私は翔平に會う事をし躊躇っていた。この一週間に何度かは會っていたけど、その時間もない。その事を心配してか、サクヤがそんな言葉をかけてくれていた。

「ねえサクヤ。この前の幽霊屋敷の一件なんだけど」

「やはりハナティア様も察していましたか」

「うん。翔平もきっと何かを察している」

「まあ、そうですよね」

例の幽霊屋敷の書斎で、あの本を見かけた時私はあの建の正に気がついていた。それは翔平もなのだろうけど、それを口にしてはいない。恐らく彼は気がついたとしても、何も話したくないから黙っているのだろう。

(でもそれと向き合わないといけないの、翔平)

「やっぱり私から翔平に話すべきなのかな。本當の事」

「それは私からは何とも言えません。でも翔平様にとって、その事実は今までの事以上に辛いことかもしれません」

「そうよね。翔平、分かってしまったからこそ自分で調べようとしているんだろうし。私に何か出來ることはないのかな」

「傍に居てあげればいいのでは?」

「そんなの當たり前でしょ」

「あらあら、すっかりハナティア様も……」

「な、何よ!」

私はただ當たり前の事を言っただけなのに、サクヤは先程からニヤニヤばかりしていて気持ち悪い。何がおかしいのだろうか。

「これは今後も期待できそうですね」

 

「何を期待するの?!」

「ハナティア様の大きな変化をですよ」

「私そんなに変わってないわよ!」

「翔平様と出會うまでは、ずいぶん変わっていましたから」

「あなたは私を何だと思っているのよ!」

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