《我が家の床下で築くハーレム王國》第71話何も知らなかった

結局俺は夜のにトリナディアから離れ、自分の家に帰った。家に帰るまで一度もハナティアの姿を見なかったが、恐らくどこかにはいると思う。

(もう二度と會いたくない、か)

俺はただハナティアにこの先も生きてしいって願っただけで、彼の事を嫌いになったとかそんな事なかったのに、言葉足らずのせいで彼に誤解を生んでしまった。

(俺はただ、ハナティアを失うのが怖いだけなのに、どうしてこんな事に……)

好きだからこそハナティアには分かってほしかった。己の命を賭してまで子供を産むよりも、ずっと長生きしてほしい。當たり前の事なのに、何故それが當たり前にならない。

『翔君には冷靜になって考えてほしい。國の未來の描き方は他にだってあるだろうし、ハナティアの事を思っているなら迷いなんて必要ないでしょ?」.

クレナティアさんの言葉を思い出す。迷う必要がないからハナティアにはその選択肢を選んでほしいと言ったのに、彼はそれを俺が彼を好きなのは噓だと捉えてしまった。

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一度の誤解を解くのなら簡単だけど、今すぐハナティアに會っても話を聞いてくれない。

(それに……)

隠している事を話せないので、このままだとずっとが埋まらないままだ。

(俺はどうすればいいんだ)

ハナティアの命を取るか、生まれてくる子供を取るか。その究極の選択は、この先も苦しめ続ける事になる。

■□■□■□

「それでそのまま喧嘩別れをしてしまったと」

「だって翔平が……」

翔平と喧嘩したまま部屋を飛び出した私は、まだ起きていたサクヤの元に泣きついた。

「確かに最近の翔平様の行には、謎が多い事がありましたが。それがハナティア様を元から好きではなかったという事にはならないと思いますが」

「違う、そうじゃないの。翔平は私に子供を産まないでもらいたいって言ったの」

「それは……」

私の言葉にどこか複雑そうな顔をするサクヤ。もしかしてサクヤも何か隠し事を私にしている?

「サクヤも私を裏切るの?」

「裏切ろうだなんてそんな。でもハナティア様にこの話をするのは……」

「どういう意味よ!? 私は待ち続けてきた幸せを手にれようとしているのに、それを今になって手放せっていうの? 今まで隠し事はなしにしてきたのに、サクヤまでそんなじだったら私……」

「そうではないんです! ただ……」

「ただ、何よ」

「翔平様は真実を知ったからこそ、ハナティア様を守ろうとしているのかもしれません。私も普通ならそうするべきですから」

「何よそれ。サクヤまで私にそんな事言うの?」

信じられなかった。この計畫をそもそも推奨したのはサクヤだというのに、その彼を私は信じてきたのに。それなのにどうしてサクヤまでが……。

(どうして皆、信じてきたのに。こんな裏切り方……)

あまりにも酷いよ。

「ハナティア様、落ち著いて聞いてください。今回の件は翔平様もハナティア様も何も悪くないんです。本當に悪いのは……」

「もういい! 聞きたくない!」

「ハナティア様!」

私はついにサクヤの元からも飛び出してしまった。もう何も信じられない。私が好きな人も、ずっと側にいた人も。皆私に隠し事をして、幸せだけを奪おうとする。皆私を裏切るんだ。

(もう私は誰も信じられない)

私は気が付けば城すらも飛び出して、行き先のない放浪の旅に出かけていた。

■□■□■□

「ハナティアが行方不明?」

「ああ。城や國中探しても見つからないらしいんだ」

「あいつ、まさか」

喧嘩の翌日、トリナディアから帰ってきた正志からハナティアが行方不明になっている事を知らされた。原因に思い當たる事はあるけど、まさかこんな大きな騒になっているなんて……。

「誰か探しているのか?」

「今雪音とサクヤさんが探しているよ」

「そうか」

「ところで一つ聞いていいか」

「ん?」

「お前何で勝手にトリナディアから自分の家に帰っているんだ?」

「それは……」

「それに何でハナティアちゃんが行方不明なのに、お前は今すぐにでもかないんだ?」

正志の言う通り、ハナティアが行方不明だという話を聞いてすぐにかなかった。そんなの周りからしたら不自然なのも分かる。

(俺だってかないと駄目なのに)

がすぐにかない。

「ハナティアちゃんが行方不明の原因、お前にあるんだろ?」

「……」

「おい、翔平!」

「……確かに昨日ハナティアとちょっとした喧嘩はしたよ。でもそこからは知らない」

「お前喧嘩したのに、のうのうと自分の家に帰ってきたのか?!」

「そうだけど」

「馬鹿か! 何ですぐに謝って、仲直りしないんだよ。お前らこれから結婚するんだろ?」

「するよ」

「だったら、何でお前は」

「分からないんだよ」

「分からないって何が」

「おれはこの先どうすればいいか……分からないんだよ!」

一晩俺はずっと考えていた。何をどうすれば本當の幸せを手にれられるかを。誰も不幸にならず、誰もが幸せになる方法を。けどクレナティアさんの話を含んで考えると、何も見つけられなかった。

「これから俺とハナティアは結婚をして、子供も生まれて、家族になって幸せになるはずなんだ。けど、全てを手にれる事なんて最初から出來なかったんだ」

「どういう意味だよ、それ」

「俺はただ幸せになりたかっただけなんだ。けどそれは……元からできない話だったんだよ」

全部知っているようで何も知らなかったんだ。この國の事も、ナティアの事も、全部。

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