《我が家の床下で築くハーレム王國》第82話悲劇の序章

思わぬ壁にぶち當たる事になった俺。別に覚悟がないわけでもないのに、何故か反対されてしまった。

だがここまで言われても俺だって簡単には引き下がれない。

「まだ俺の話は終わってないぞ、父さん」

「お前が言葉の意味を分かるまで何も聞かない。聞いてしければまずおのれを見直すんだな」

「何が父さんに分かるんだよ! 父さんと母さんこそ、重みを知らないくせに」

これ以上の話に踏み込むか踏み込まないか正直俺は悩んだ。でももう殘されている時間だってない。だから俺は、今までよりも更に一歩踏み出すことにした。

「何が言いたい」

「俺は知っているんだよ! 父さんも母さんも、俺が記憶喪失になったあの日からずっとにしている事があるんだって」

「っ!? お前、その話をどこで」

「やっぱりそうだったんだな、父さん」

俺は怖かった。この先本來知らない方が幸せだったかもしれない話を、今この場で聞くことになる事を。だからカマをかけてみたんだけど、どうやら俺の考えている事は間違っていなかったらしい。

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(信じたくはなかった。だけど……)

この話にも決著つけなければ、トリナディアで暮らす事もできないと思う。

「俺はずっと父さんと母さんが、本當の家族だって思っていた。けど、違うんだよな」

「ち、違くはない。お前は俺達の立派な子供だ」

「だったら、この寫真をどう説明するんだ?」

俺はあの寫真を父親の前に出す。そこに寫っているのは子供の頃の俺とハナティア、そして俺の両親ではない二組の夫婦。これが示しているものは何か、俺はずっと考えたくなかったけど忘れる事ができなかった。

「その寫真をどうしてお前が」

「それはどうだっていい。それよりここに寫っているのは誰なんだよ。どうして父さんと母さんじゃないんだ」

たまたまでは説明がつかない。二組の夫婦のうちの片方は恐らくハナティアの両親だろう。そっくりだし。そしてもう片方の夫婦は……。

「翔平、ごめんね」

何の前れもなくそう口を開いたのは、父さんではなくハナティアだった。

「ハナティアさん、その話はまだ」

「もういいんです、翔平のお父さん。十五年間黙っててくれて本當にありがとうございます」

いつものハナティアとは別の口調で父さんに話すハナティア。それだとまるで、この一件ハナティアが悪い事したみたいな言い方じゃないか。

「翔平、いつか私に言ったよね。自分に聞く覚悟ができたその時に、話してくれって。寫真も私に預けたくらいだし」

「言ったな」

「今がその時だと思うの。だから話すね本當の事」

「本當の……事?」

「翔平と柚お姉ちゃんの本當の両親、それは……」

その家族はトリナディアのとある大きな屋敷で幸せに暮らしていた。屋敷が大きい分それなりのお金持ちの家で、王家から一目置かれていたという。

「ハナティア様、さあご挨拶を」

「わ、私ハナティア。え、えっとあなたは?」

「僕は柏原翔平。翔平って呼んで」

「しょうへい?」

「こら翔平、この子は次期王様なのよ? 禮儀正しくしなさい」

「痛っ! 毆る事ないだろ姉ちゃん」

その屋敷に住む姉弟と次期王の出會い。それは全ての原點であり、のちに起きる悪夢の幕開けだった。

「その寫真に寫っている二人なの。そしてその二人はある事件に巻き込まれて既に亡くなっているの」

「とある事件?」

「それも全部今から説明する。だからちゃんと聞いてしいの、あなたの全てを」

「……分かった」

そしてその悪夢の全てが今ここに語られる。

■□■□■□

「私もまだ小さかったか詳細な話は覚えていないんだけど、當時翔平と柚お姉ちゃんは私の遊び相手として城に招かれたの」

「遊び相手? でもハナティアって馴染が二人いるだろ? その二人とは遊ばなかったのか?」

「キャロルとミウも勿論一緒に遊んでいた時もあったよ。翔平も小さい頃に何度も會っているし」

「マジか! じゃあミウが俺をダーリンって呼んでいるのって」

「そう。小さい頃からミウはそうだったのよ」

翔平、ハナティア、ミウ、キャロルの四人は同じ年齢だった事もあり、仲良し四人組と呼ばれる程の仲良しだった。翔平の姉である柚はその保護者代わりとなり、四人の安全を守るという大きな役目を擔う事になっていた。

「そっか。姉さんそんな大事な事任されていたんだ」

「翔平の両親はそれなりに信頼されていたし、すごく仲のいい夫婦だって有名だったんだって。サクヤが言ってた」

「そういえば大きな屋敷に住んでいたって言ったけど、それってこの前の」

「うん。私はあの時から、ううん、本當はずっと前から気づいてたの。あの屋敷がそうなんじゃないかって。でも本來ならそんな事あり得ないの」

「あり得ない? どうしてだよ」

「それは翔平も分かっているんじゃないの?」

俺の両親がもうこの世にいないなら、考えられる理由は一つしかない。けど、だとしたら何故あの屋敷はあそこまでしっかりとした形で殘っているのか。それが説明つかない。

「何かの事件で燃え盡きたとかなのか?」

「合ってるって言えば合ってるけど、ちょっとだけ違うのよ」

「違う? どういう意味だよ」

「いい? 翔平。これから話すのは本當に起きた事で、噓偽りもない話だからちゃんと聞いてほしいの。どうしてあの屋敷が消失したのか、そしてなんでこの話をずっと黙っていたのか。それを今から全部話すから」

これは二十二年前に起きたある一家を襲った悲劇を綴った一つの記録である。

「え? 隣國の王家が私の家にですか?」

「はい。どうやらあちらの國王が柏原家に興味を持たれたようで」

「俺の家に興味を? 一どうして」

「あなた、もしかしたら」

「まさかあれを狙って」

それはまだ子供だった彼らには到底理解できない、とてつもなく大きな事件の一端。

「お父さん、お母さん!」

「翔平、柚、ごめんね……。あなた達だけでも逃げて」

「嫌だ!嫌だよ!」

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