《我が家の床下で築くハーレム王國》第88話信じたいけど信じられない

翌朝、し早めに起きた俺は一人で溫泉にる事にした。

(朝風呂も悪くないなぁ)

ふう、と一息つきながら溫泉に浸かる。それにしてもまさか、昨日あんな事が起きるなんて思ってもいなかった。

(あいつは何の考えを持ってあんな事を……)

昨日なかなか眠れずに起きていると、ハナティアが一人でこっそり夜中に部屋を出ていった。トイレなのかとは最初思ったが、どうやらそうではなかったらしい。

「私は何であなたがここにいるのか聞いているのよ、キャロル」

「たまたまに決まっているでしょ、ハナちゃん」

後を追って部屋を出た俺を待っていたのは、廊下でキャロルと向き合っているハナティアの姿があった。

「キャロル? どうしてお前がここに?」

「へ、平ちゃん?! えっとこれは、ただの偶然で」

「偶然の割には慌てすぎじゃないか?」

「そ、そんな事ないよ」

見るからに怪しげな挙をするキャロル。ハナティアはというと、何か怪しげな目線をキャロルに送っていた。

「あなた今日ずっと私達の後をついてきていたでしょ」

「そ、そんな事ないでしょハナちゃん。私は本當にたまたまここにやって來ていただけで」

「それにしては々持っているみたいだけど?」

「こ、これは」

ハナティアの言う通りキャロルは偶然泊まりに來たと言う割にはそぐわない恰好、そして鞄を手にしていた。あのバッグにれられるものとしたら、例えば……。

「キャロルが持ってる鞄にっているってまさか、パソコンか?」

「え、いや、その、この鞄にっているのは」

「パソコンって何?」

「俺の部屋にもあったと思うけど」

大まかな説明をハナティアにする。

「なるほど、全然分からない」

「まあ、そうだろうな」

まあそれは置いておくとして、何故地下暮らしのキャロルがそれを持っているのか疑問だ。ただでさえ姫であるハナティアが知らないのだから、キャロルが持っているのが疑問だ。

「こ、これは私が個人的に買っただけなの」

「それを百歩譲ったとしても、どうしてそれをこんな時間に持ち歩いているんだよ」

「そ、それは……。平ちゃんには関係ないでしょ!」

「あ、おいキャロル!」

自分が來た道をダッシュで逃げ出すキャロル。夜に騒いで迷をかけてしまうのもあれなので、俺達はそれを追うまでの事は出來なかった。

「何なのよ、キャロル」

「どうしたハナティア」

「どうしてあの子が私を……」

「ハナティア?」

「ごめん、もう寢る!」

それからハナティアとは一言も喋る事なく、今に至る。その一件があったせいで眠りにつけなかった俺は、今こうして眠気覚ましに溫泉に浸かっているのだけれど、思い出すのは夜中の出來事。

どうしてキャロルは逃げるように俺達の目の前からいなくなったのか。

偶然とは思えないタイミングでの遭遇。

そして彼が何故か持っていたパソコン。

どれも謎な事ばかりで折角の旅行が楽しめなくなってしまった。何よりハナティアが一番彼の事を気にしているだろうし、今日は早めにトリナディアに戻ったほうが正解かもしれない。

(折角の旅行、し殘念だな)

■□■□■□

結局ハナティアが目を覚ましたのはお晝頃。本當はもうし早くチェックアウトの予定だったのだが、こればかりは仕方がないと思っている。

「大丈夫かハナティア」

「大丈夫だと思う? 馴染に裏切られたのに」

「裏切ったわけではないだろ。そんなに悲観する必要はないんじゃないのか」

「そんなの分からないじゃない」

キャロルを信じられなくなったのか、先ほどからハナティアが言う言葉がネガティヴなものばかり。それに対して俺はどう言葉をかければいいか分からなかった。

「ねえ翔平」

「ん?」

「私もう一回翔平と二人きりで溫泉にりたい」

ハナティアの要を葉えるために、俺達は誰も溫泉にってないタイミングを見計らって、二人きりで溫泉へ。昨日みたいに誰もらないまま終わってくれればいいけど、果たして今日も功してくれるだろうか。

「翔平の言う通りまだ全てが決まったわけではないって、私だって勿論理解しているわよ。キャロルがそういう人間じゃない事も」

「だったらどうしてそこまでお前は」

「キャロルの両親がかつてそうだったからよ」

「……え?」

「翔平は何も知らないと思うけど、キャロルの両親はトリナディアの裏切り者なの」

溫泉に浸かりながらハナティアから語られたのは、俺が本當なら知るべきではなかった事実。確か彼は一人暮らしと言っていたが、もしかしてそれとも関係しているのだろうか。

「信じられないでしょ? キャロル本人がそうではないとはいえ、あの子の両親は私達の國を裏切っているの。だからキャロルも同じだって考えても変じゃないでしょ?」

「そう思うなら、どうしてキャロルをトリナディアに暮らさせているんだ? どうして城にれさせているんだ?」

「それは……」

馴染だから、だろ?」

「……うん」

「だったら信じてもいいんじゃないのか? キャロルはそうじゃないって」

「分かっている、分かっているわよ。だけど……それでも……」

それでもある言いよどむハナティア。

(これは相當重癥だな……)

この先何か起きそうで心配だな……。

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