《我が家の床下で築くハーレム王國》第91話goodbye see you again

気が付けば殘された時間も殘り僅かになっていた。皆殘された時間は思い思いに過ごし、俺も雪音や正志に二人きりで話をしたりなど、とにかく殘された時間を大切にした。

「翔平様、もうそろそろです」

「そろそろって、あとどの位で閉じるつもりだ?」

「三十分くらいでしょうか」

「もうすぐじゃん!」

時計を見れば、もう夕方の時間ではなく夜の時間。確か夕方には閉じるって言っていたけど、何でだろう。

「これでもしだけ時間を延ばしたんですよ? 本當なら今日から行わなければならない事もあったんですから」

「それは……悪い事したな」

どうやらサクヤの気遣いだったらしい。

「三十分か。じゃあ俺達はそろそろ戻るか雪音」

「そうですね。話す事も沢山お話しできましたし」

「お前ら何でそんなにあっさり」

もっと駄々をこねるとは思っていたので、想定外の反応にしだけ驚く。そんな俺に対して、正志はこう返してきた。

「お前がさっさと覚悟を決めろとか言うから、俺達はお前が思っているよりも早くに覚悟を決めていたんだよ。だからこうやってパーティも行った」

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「さっさととは言ってないけどな」

「どちらにしても私達はもう覚悟も決斷もできています。だからその、あまりしんみりしたのは苦手なんです」

若干涙聲になりながらも雪音は言う。

(二人共……)

その後二人は荷をまとめ、トリナディア城の外へと俺とハナティアと一緒にやって來た。

「ねえ翔平、私はここで待っているかちゃんと最後まで送って行ってあげなよ」

「ハナティアは付いてこなくていいのか?」

「話したい事は沢山話した。それにもう會えないわけじゃないでしょ?」

「そう……だな」

「ハナティアちゃんとは、じゃあここでお別れか」

「うん、元気でね二人共」

「ハナティア!」

雪音がハナティアに抱きつく。

「もう、雪音ってば……」

しばらく二人は會話をわさず抱き合ったあとに、離れる。

「何かあったら私達を呼んでくださいね。ハナティアの力になりますから」

「ありがとう。いつか頼る時が來るかもしれないけど、その時はよろしくね」

「はい!」

しばらくの別れを済ませた二人は、ハナティアに背を向けて歩き出す。俺はそれについて行き、しばらく歩いた後に二人は改めて振り返りハナティアに向けて手を振った。

「じゃあなハナティアちゃん」

「必ずまたお會いしましょう」

「元気でね二人共! また會いに行くから」

こうして二人はハナティアに別れを告げ、トリナディアを後にする。

「翔平、絶対に幸せにしてやれよハナティアちゃんを」

「なにかあったら容赦しませんからね」

そして俺と二人の別れへの時間も刻一刻と近づいていく。

■□■□■□

俺が普段使っているトリナディアへと行く道が完全になくなるという事で、俺が二人を見送りに行ける場所も二つを繋ぐ道の口までだった。

「俺もここまでかな、見送れるのは」

「そうか。じゃあな翔平」

「また會いましょう」

「待て待て待て」

何のためらいもなくトリナディアから出て行こうとする二人を俺は慌てて引き止める。

「何だよ急に寂しくなったのか?」

「いやいや、あっさりしすぎだろ! しばらく會えないのに、また明日會うみたいな別れ方してさ」

「アホかお前は。長く一緒にいたら、別れづらくなるだろう」

「そう……ですよ……翔平君の馬鹿!」

既に堪えきれなかったのか雪音が泣き始めてしまう。無理に我慢していたのは分かっていたが、そんな事を言われてしまうと俺までもが辛くなってきてしまう。

「そうか。じゃあさっさと行っていいよ」

「お前って本當手のひら返すよな。まあ言われなくても行くけど」

「翔平君の馬鹿、絶対……絶対また會いに來てくださいよ」

「分かってる。だから泣くなよ……雪音」

ギリギリのところで涙をこらえ、俺は二人に背を向ける。

「俺が背を向けているに行くんだ二人共。そうすればまだ辛くないと思うから」

「翔平君、お元気で!」

「じゃあな、翔平! お前の分まで大學楽しむからな」

「余計なお節介だよ、馬鹿!」

と言って後ろを振り向いた時には、もう二人の姿はそこにはなかった。本當にあっさりとした別れだったけど、一生の別れをしたわけではない。俺はいつか必ず……必ずまたあの場所へと戻ってくる。今度はハナティアと子供を連れて、必ず。

「必ず……また會いに行くから……」

だから今だけはせめて一人で泣かしてくれ……。

■□■□■□

「サクヤ……もう閉じたの?」

「たった今閉じました。正志様と雪音様の姿も無くなったのを確認しましたから」

「そう……」

二人の見送りを翔平に任せ、しばらく何もせずに立っているとサクヤが隣にやって來て私にそう告げた。

「ハナティア様」

「何よ」

「私の、貸しましょうか?」

「……馬鹿!」

堪えてきたものを全て解き放つかのように私はサクヤのに飛びつく。そして聲をあげて私は泣いた。

「よく頑張りましたね」

「うわぁぁ」

一生會えないわけではない。でも二人としばらく別れるのはすごく辛かった。辛いから……とにかく泣いた。大切な親友との別れに、私は泣いた。

「また會えますから、絶対に」

「分かっている、分かっているけど」

こうして私は地上と親友二人と別れを告げ、明日からトリナディア王國の発展への新たな一歩を踏み出す。

大切な彼と一緒に。

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