《我が家の床下で築くハーレム王國》第109話四ヶ月越しのリベンジ

最初は俺達より先にミルが起きて、何か用事があってどこかへ行ったのだと思っていた。

「サクヤもミルの姿を見てないの?」

「はい。でもたまたまだと思うのですが」

「まあそう考えるのが妥當だけど、何も言わずに帰るような格だったっけ」

けど、サクヤですら彼の姿を見てないと言った辺りから、何故か俺の中の不安は増した。この後何事もなかったかのように戻ってくるなら、それでいい。だけどミルは、昨晩別れる前に和解できて良かったと言っていた。

そしてその言葉の通り、翌朝彼は忽然と姿を消した。

「翔平も見てないの? ミルの姿」

「……」

「翔平? どうしたの考え込んで」

「あ、いや、悪い。俺も見てなかったから、どこへ行ったのかって考えていたんだ」

「もしかして翔平、何か知っているの?」

ハナティアが核心を突く質問をしてくる。俺は正直に答えるべきなのか考えるが、もしもの事を考えてそれはやめる。

「いや、俺は知らないよ。急用でもできたんじゃないのか?」

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そして不安を隠すように俺は適當な事を言ってみる。これで適當なタイミングで彼が戻ってくれば、噓が本當になる。

「ふーん、翔平も知らないんだ」

「何だよその疑いの目は」

「だって翔平、昨夜ミルと何か話しをしていなかった?」

「それは確かにしてたけど、特に大したことは話してねえよ」

「そう?」

寢るフリでもしていたからか理由は分からないが、ハナティアは昨日の會話の一部を聞いていたらしい。けどこの様子だと、肝心な部分は聞いていなかったみたいだし、ミルを信じて待つ以外はないのか?

「とりあえずミルのことは気になるけど、私達はこれからやるべき事があるわよ」

「やるべき事? 結婚式の準備とかか?」

「それもあるけど、もっと大切な事」

「もっと大切な事?」

ここまで結婚式の準備をろくにしてきていない気がするのだが、それ以上に大切な事ってあるのか?

「サクヤ、タイミングは今しかないしいいよね?」

「本當はオススメできませんが、仕方ありません。準備します」

俺が頭に疑問符を浮かべている間にもハナティアとサクヤの會話は勝手に進み、俺が置いてけぼりにされていく。

「なあ、結婚式以上に大切な事って一何の」

「リベンジよリベンジ」

「リベンジ?」

俺はその四文字を聞いて何かとても嫌な予がした。ハナティアがリベンジしたいことと言えば……。

■□■□■□

翌日の晝過ぎ、その準備は整ったとサクヤに伝えられ、俺とハナティアはある場所へとやって來ていた。

「なあ、本気で言っているのか?」

「前回失敗してそのまま今日までやらないできたけど、これからの未來のためにもしっかりしないとダメでしょ?」

「そうだけど俺はお前のの方が」

「そういう時に支えてくれるのが翔平でしょ?」

その場所はかつて子供の為に一週間儀式を行った場所。結果は六日目でハナティアが調を崩してしまい、一週間を乗り切る事ができなかった。

それがハナティアの中ではずっと心殘りだったらしく、子供の安全のためにもリベンジをしたいという事。

「それに前の時はまだ私達の関係も曖昧なままだったでしょ? でもあれから四ヶ月経って私達は大きく変わったんだから、今度こそ大丈夫だと思うの。私は翔平を信じているから」

ハナティアはそう言う。彼がここまで決意を固めたきっかけは、恐らくだけどここ最近起きた様々な事が力になったのだろう。

沢山の事をけ止めて、それをハナティアは力に変えた。だとしたらその思いに俺も答えてあげなければならない。

「お前が本気なのは分かったよ。俺もあのままだったら嫌だったし、六月の時よりも力になれると思う。ただ一つだけ約束してくれ」

「約束?」

「絶対に無理はするな。何かあったらすぐに言ってくれ」

「それはお互い様でしょ?」

「まあ、そうだけどな」

かくして俺とハナティアは、六月のリベンジを果たすために十月の頭にあの儀式を行う事になった。

ーー方法は前回と同じ

この閉鎖空間で、一週間定期的に祈りをする事。食事等の制限もあり、かなり厳しい狀況の中での儀式だが、これはこれからの子供のためのもの。

「もう子供は私の中に宿っているから、今回の儀式は子供の安産祈願みたいなものになるのかな」

「それも大切な事には変わりないだろ」

「うん」

そしてきっとこれは、結婚式よりも大切な俺達の絆を深めるための儀式になる。俺はそう思った。

「いいですか翔平様、もしもの事があったらすぐに連絡してください」

「分かっているよ。けど、今回はその心配はなさそうだけどな」

始める直前、不安を耳打ちしてきたサクヤに、俺はそう答えてあげる。サクヤとしても気がすすまないのだろうけど、ハナティアの決意を見て承諾したという事。

「どうしてそんな事が?」

「何となくだけどそんな気がするんだ。ハナティアはあの時よりも強くなっている、だから心配するな」

「……分かりました、信じて私は待っていますね」

「ああ」

サクヤの思いに答える為にも、俺もしっかりしなければならない。今度こそ……俺はハナティアを支え切る。

「ではお二人とも頑張ってください」

「ああ」

「うん」

俺とハナティアの長い一週間が再び始まる。

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