《我が家の床下で築くハーレム王國》第111話あの時の悲劇
俺が再び目を覚ました時には、儀式五日目が既に終わった頃だった。
「どう翔平、楽になった?」
「おかげさまでだいぶ楽になったよ。でも今日は何も手伝えなくてごめんな」
「いいの。翔平の調の方が大切だから」
流石にほぼ丸一日眠っていたからなのか調は先程よりも斷然良くなった。丸一日寢たきりになってしまった事には、し悔いは殘るものの、この調子なら明日には復帰できる気がした。
「それにしても良かった。翔平の調が良くなってくれて」
「完治とまではいかないけど、明日からは大丈夫だよ。心配かけて悪かったな」
「本當によかった……」
そう言うとハナティアは泣き出してしまう。
「ちょっと、泣くなよ。別に大きな病気を患った訳じゃないんだからさ」
「ごめん……。ずっと心配だったから」
「こんな事前にもあったんだから、俺だって簡単にくたばったりしないって」
確かゴールデンウィークの事件の後にも、こうして高熱を出して倒れた事はあった。あの時もこうやってハナティア は看病してくれたし、心配もしてくれた。
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とは言え、あくまでこれは風邪の一例なので、泣かれてしまっては俺が申し訳ない気持ちになる。
「ともかく明日も早いし、そろそろ寢ないとな。明日からはちゃんと俺も復帰するからな」
「そう、だね。私が調崩したら意味ないし、寢ようか。おやすみ翔平」
「ああ、おやすみハナティア」
こうして五日目は、俺は何もする事なく終了した。そして六日目は俺も積極的に儀式の手伝いをし、ハナティアも適度に休ませながら無事乗り越えられた。
そして儀式は最終日を迎える。
■□■□■□
「今日で最終日だな」
「うん、六月の時は七日目を迎えられなかったし、無事功してよかったね」
「そうだな」
最終日は夕方に全日程を終え、ここから出る事になっている。それまでに行う儀式はあと一回。し神的な余裕もできたので、俺はハナティアにずっと気になっていた事を尋ねた。
「なあハナティア、一応結婚式は今月末だけど、準備とかは大丈夫なのか?」
それは約三週間後に行われる俺とハナティアの結婚式についてだった。ここで本格的に暮らすようになってから、大きなきを見せていなくて、俺はしだけ不安になっていた。
ーー特に演説の際に彼が言っていた言葉だ
もしあれからその思いを完全に斷ち切れていないなら、ハナティアはもしかしたら……。
「結婚式はちゃんと挙げるよ、多分」
「多分って、一昨日も似たようなこと言っていたけど、お前はもしかして」
一昨日は言葉にしなかった言葉を俺は言うか悩む。けど心の中に殘り続ける未來への不安を拭わないと、先へ進めない気がした。
「今になって結婚するのをやめようとしているのか?」
だから俺はその言葉を発したのだった。
「そういうつもりじゃないよ、私は……。翔平と結婚するためにこうして再會して子供を授かったんだもの」
「だったら何でハッキリと答えてくれないんだよ、心配ないって」
ハナティアの言葉が本気なのは分かっている。けど、その想いまでは分からなかった。彼が何をじて、ハッキリとその言葉を言ってくれないのか。
(ハナティアはハナティアの考えがあるのは分かっている、だけど……)
この不安を抱えたまま當日を迎える事を俺にはできない。
「意地悪だよ翔平は。そうやって私の本音まで言わせようとして」
「別にそうじゃない。俺はただ」
「だったら」
ハナティアが何かを言いかけたその時、それは起きた。
「地震?」
最初にそれをじたのは俺だった。今までじたことのない、いや過去に一度じた事があるような大きな揺れ。一時的なものではあるものの、かなりの大きさの揺れだった。
「翔平!」
「大丈夫だハナティア、揺れは止まったから……」
「避けて!」
「え……?」
一瞬の油斷だった。だけどそれが命取りになることもある。俺の頭上からは、今の揺れでわずかに崩れた天井が瓦礫となって降り注いだ。
「翔平ー!」
俺はそれを避けることも出來ずに、飲み込まれていったのであった。
■□■□■□
「い、嫌。噓、でしょ」
あまりの一瞬の出來事だった。大きな揺れによって崩れた天井が勝敗を巻き込んで崩れた。今私の目の前には瓦礫が積もっている。
「翔平、しっかりして!」
名前を呼んでも反応がない。積もっている瓦礫が淺いので、聲が聞こえていないことはないはず。なら、気を失ってるかもしくは……。
「って、考えている場合じゃない!」
我に返った私は、瓦礫を退かして翔平を探す。かなり重いけど、迷っている暇はない。
早く、早く翔平を助けないと。
またあの悲劇を繰り返さないためにも、私が翔平を助けないと。
「翔平、今助けるから、頑張って……。私が、絶対に絶対に」
自分に言い聞かせるように、何度も何度も言葉を繰り返す。もしこの世に神様がいるならば、しでも私に力を……。
翔平を助ける力を……。
「あ」
だけど神様はあまりにも無で、再びこの場所に地震をもたらした。さっきよりも大きくはないものの、その揺れは確実に私の足元を崩した。私は転倒して不幸にも頭を打ってしまう。
「翔……平……」
結局私はあの時の悲劇を乗り越えられずに、その場で意識を失っていった……。
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