《我が家の床下で築くハーレム王國》第118話語の始まりの場所

結婚式は城の外でのお披目と、城の大広間で行われる披宴の二つに分かれていて、まず午前中に國民へのお披目も含めた式が行われる。

という事で、本來なら朝はあんなりゆっくりしている場合ではなかったのだが、それもまあ良しとしよう。

「良くないですよ! クレナティア様が向かった時點で、本來なら遅刻なんですからね!」

「わ、悪かったって。昨夜は寢れなくて」

「何てはしたない!」

「何で?!」

実は起きた時點でもう寢坊確定だった事は、この際伏せておこう。

「もう、お二人は最後の最後まで人騒がせなんですから」

そんなだらしない俺達にサクヤはため息を吐く。今日この日を迎えるまでに彼には大変お世話になったのは確かだ。

「でも、ようやくこの時を迎えられて私は幸せです、お二人共」

「ありがとう、サクヤ」

「ありがとう」

だから今日は素直にお禮を言う。

「も、もう、そんな事を言われても、ゆ、許しませんからね!」

し涙聲になりながらそっぽを向くサクヤ。彼にとってハナティアは、もしかしたら本當の子供のような存在だったのかもしれない。

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その娘が今こうして結婚式を迎えるのだから、涙ぐましくなるのも當たり前だ。

(逆にハナティアにとっても、サクヤはやっぱり……)

「さあハナティア様、ウェディングドレスに急いで著替えますよ。翔平様もちゃんと著替えてきてくださいね」

「あ、ああ」

そんな事を考えているに俺はサクヤに追い出され、ハナティアとは一時の別れを迎える。

(次に會う時はドレス姿か……)

あのウェディングドレスを著た姿はまだ見てないので、期待にが膨らむ。

だがそんな期待が膨らむ中で、俺は予想できなかった再會を果たす事になった。

「へ、平ちゃん」

それは著替え部屋にる直前の事。久しぶりに聞いたその聲と、俺への呼び名。俺はそれに反応しながらも、背後を振り返らなかった。

「親友の祝い事なんだから、ちゃんと祝えよ、キャロル」

「え、でも私……」

「正直俺もハナティアも沢山聞きたいことはある。だけど、今お前がこの場所に立っていられるって事は、どういう事か分かるよな?」

「あ……」

「じゃあ盛大に盛り上げてくれよ、結婚式!」

俺は一度も振り返らずに著替え部屋の中にった。

どういう経緯で彼が今日この場所にこられたかは分からない。だけど今この場所に彼れたという事は、まだハナティアは彼を拒んでいないという事。

(親友だから、當たり前だよな)

九月の旅行の時、ハナティアはどうするべきか悩んでいた。あれ以來キャロルの事は一度もれてこなかったけれど、ハナティアはその事でもかなり悩んでいたのは確かだ。

そしてその結論が今にある。

「ハナちゃん……ありがとう……」

最後にドア越しでそんな聲が聞こえた気がした。

︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎

「……」

「何か言いなさいよ、翔平」

「……」

「ちょっと翔平?!」

「あ、わ、悪い。あまりにも綺麗だから」

お互いに著替えも終わり、いよいよ式直前。俺の著替えよりもかなり遅れて登場したハナティアは、今まで見てきたどんな彼よりも、綺麗で、しくて、つい言葉を失ってしまった。

「もう、それ以外に想はないの?」

「あるんだけど、ありすぎて言葉が出てこない」

「全くもう……」

ハナティアに呆れられてしまうが、それでもいい。その位に彼は、今までの中で一番しかった。

「というか張してないのか? もうすぐ始まるんだぞ結婚式」

張するに決まっているでしょ。こんな経験一度もした事がないんだから」

「まあそうだよな。なら」

俺はそっと彼の手を握る。ハナティアの手は僅かに震えていたが、それでも俺の手をしっかりと握ってくれていた。

「翔平」

「ん?」

「私ここまで頑張ってきてよかった。ちゃんとした未來を翔平と歩む事が出來てよかった」

「俺もだよ。でもまだこれからだろ?」

「うん、まだこれから。まだ私達に殘された事は沢山あるけど、これはまずその一歩だよね」

「そうだな」

俺がそう返事したほぼ同じタイミングで、外から歓聲が聞こえた。そしてこの日の為に用意したという祝福の鐘が鳴り響く。

「さて、行こうか翔平」

「行こうハナティア」

そして俺達の新たな道への扉が開かれる。眩しいが差し込むと共に、沢山の歓聲が湧いた。

「あれ?」

「え?」

でも開かれた先で待っていたのは、見慣れたいつものトリナディアではなかった。いや、トリナディアではあるはずなんだけれど、そこには空があった。

ないはずの空が。

「驚きましたか?」

呆気を取られている俺達にサクヤが聲をかけてくる。

「サクヤ、これはどういう」

「折角の結婚式なのですから、盛大にやらないと、と思いまして、しの間だけですが繋げたんですよ地上と」

「でもそれはもう出來ないはずじゃ」

「だから、特別だって言ったじゃないですか」

そう片目を瞑りながら言うサクヤ。いや、特別だからっていくら何でもやり過ぎな気がする。よく見るとトリナディアに住んでいた人達もいるし、大丈夫かこれ。

(てかよくそんな場所用意できたな)

若干狹いけど祝い事をするのには丁度いい場所だ。何故か隣に家が建っているけど……。

(ん? 家? てか、ここ庭か?)

俺は気づいてしまった。この場所がどこなのか。

ここは、

「なあサクヤ。俺気づいたんだけど」

とても見覚えがある場所で、

「今更ですか? 翔平様ならもっと早くに気づくと思ったのですが」

大學時代にお世話になった場所で、

「え? あれ、ここってまさか……」

と出會いを果たした場所。

そして、

「ここ俺の家じゃん!」

この語の全ての始まりの場所だった。

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