《我が家の床下で築くハーレム王國》第122話振り上げたこの手
結婚式から二日後、ついに十一月になり今年も殘り僅かとなった。
「ほらハナティア、晝ご飯食べに行くぞ」
「うん……」
そんな中ハナティアは、キャロルの事をずっと引きずっていて元気がなかった。俺は何とか彼の元気を取り戻そうと考えたが、どれもことごとく失敗して、結局あの時のまま時間だけが過ぎていった。
「はぁ……」
晝食を食べ終わった後、ハナティアは自分の部屋にこもってしまったので、俺は一人になってしまった。こんな時も聲をかけるべきなのは俺なのだが、今の彼にどう言葉をかければいいか分からない。
「翔平、元気ない」
そんな様子の俺に、聲をかけてきたのは珍しくフウカだった。ここしばらく彼と會話をしなかったせいか、彼の存在が久しぶりにじてしまう(結婚式にはいたけど)。
「フウカか。ちょっと俺達に々あってな」
「そう。サクヤも皆、心配してる」
「心配させてしまっているのは分かっているよ。でもそれは、フウカ、お前もじゃないのか?」
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俺の質問にフウカは何も答えない。九月の半ば頃、彼が何かを探して城の外を出歩いているという話を聞いた。
それが失われている記憶を取り戻すためなのかと聞いたところ、彼は記憶を取り戻さなくていいと答え、そのまま俺を突き放した。
「サクヤに聞いたぞ。あれからもずっと何処かに行っているんだろ?」
「関係ない」
「そう言うから皆心配しているんだってば」
「……別に勝手に心配すればいい。私は私でくから」
「だからそれが矛盾しているんだって、どうして分からないんだよ!」
イライラした俺は、思わずフウカに強く當たってしまう。それでもフウカは何一つ反応を見せなかった。
「分からなくてもいい。私は私だから」
「そんなに勝手なことばかり言うくせに、どうしてお前はこの場所にいるんだ。助けてしいならそう一言言ってくれよ!」
その冷めた反応に俺はさらに自分をコントロール出來なくなる。ハナティアの事、キャロルの事、トリナディアとセレスティアナの事。
沢山の事を一度に考えすぎた俺は、もはや自分が何をしたくて、誰を助けたいのか分からなくなっていた。どれも自分の手で何か出來そうなのに、出來そうにない。それがどうしても俺を苛立たせて、
「助けはいらない。出て行ってしいなら出て行く」
「いい加減にしないと」
『私を……殺すの?』
あの時のキャロルの言葉が思い浮かぶ。俺はあの時何をしたかった。説得ができないなら、それ以外に何ができた?
今のこの狀況みたいに俺は……。
「翔平様、やめてください!」
俺の事をサクヤが止めにる。そして俺はようやく自覚した。俺は今フウカに対して、この手を……。
「うっ……うっ……。えっぐ」
「え?」
そして俺は我に返って気がつく。さっきまで冷酷な態度をとっていたフウカが、今俺の目の前で泣いている事を。
「翔平様、それだけは駄目ですよ。いくら何でも小さい子に手を挙げるのは」
サクヤの言葉に俺は困を隠せない。振り上げられた己の右手は、力なく垂れ下がる。そしてそのまま俺は、その場にへたり込んでしまった。
「何をやっているんだ俺は……」
「翔平様?」
「悪かったフウカ、許してくれ!」
俺はフウカに対して頭を下げた。俺がやろうとした事は、明らかに超えてはいけない一線。
歯止めがかかったとはいえど、一つ間違えれば俺は確実に何かを失っていた。
「いい……。私も……翔平達を……もっと頼りたい……から」
「何かあったのか?」
「私……一人で調べてるうちに……怖くなった。取り戻したくないと思っていても、勝手に記憶が蘇るのが……」
「やっぱり何か思い出しているのか?」
「まだ……全部を取り戻してない。でも私、翔平達にずっと噓ついていた。心配してくれているのに、記憶を取り戻したくないとか言って……」
「最初からそう思ってたなら、素直に言ってくれよ」
そうすればいくらでも協力できたのにと思ってしまう。でも俺自も彼を避けていた所があった。
「でも……翔平が記憶を取り戻したのを見て……怖くなった」
それがフウカが俺の記憶の事を知っていた事。この前も同じ事を言っていたから、気にしていたけど何故彼は俺の事を知っているのか、それが不思議だった。
「何でフウカは俺が記憶を失っていた事を知っていたんだ? 俺が記憶を取り戻したのは、フウカと出會う前だったぞ」
「知ってるの、私」
「え?」
「分からないけど知ってるの、翔平の事を」
フウカはまるで困したかのように言う。ただ俺の記憶の中では、彼の存在がない。それだというのに何故彼が俺の事を知っているのか。
もしかしたら、そこに彼の記憶喪失と何かしらの原因があるのかもしれない。
「やっぱりフウカの事は、俺達も協力するべきだな。サクヤ、しだけ頼まれてくれないか」
「私は構いませんが、翔平様は?」
「フウカの事も大切だけど、それより先にハナティアを立ち直らせないと」
「大丈夫ですか? 翔平様お一人で」
「多分俺にしかできない。俺達はもう夫婦なんだから」
「そうですね。……お願いします」
怒りをフウカに向けてしまっては、フウカの事も何もできない。だからまずは、ハナティアを……。
「じゃあちょっとハナティアの部屋に……」
とき出そうとした時、俺のは突然としてけなくなった。まるで人形になったようにから力が抜けて、その場に座り込んでしまう。
「翔平様?」
「翔平?」
二人の呼びかけにも答えられない。そして同時に俺の頭を急激に頭痛が襲い、耐えられなくなった俺はそのまま地面に倒れてしまった。
(な、何だよこれ……頭が割れて……)
そのまま俺の意識は、気付かないうちに失っていった。
だが意識を失っただけでは終わりじゃなかった。次に俺を待っていたのは……。
(これは……あの時の……)
久しぶりに蘇ったあの時の記憶だった。
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