《TSしたらだった件~百合ルートしか道はない~》「嫌いって言ったの撤回する………だから常識的な道を頼む」
うーっす。オレオレ、由でーす。
現在の俺は、誰へと言うわけでもなく自己紹介をするほどにぐったりしていた。まぁ仕方ないよな。
まるでモノのように扱われてて、しかもそれがものすごく揺れてて何か考えてないと酔いそうな狀態でぐったりしない奴はいない。俺の偏見と獨斷によるがな。
つーかマジな話になるけどさ、武よ。俺を持つのは良いけど持たれ心地とか考えて走りやがれ………今は凄く怖いからと目を瞑ってるけど、俺の想像と現在肩のあたりを襲う何らかのによれば、今のところコイツは獣道(主に道の広さ的な意味で)を通っている気がするし、明らかに足音がほとんど聞こえないのに浮遊と風をじる時があるのですが。
………俺は、なんだかあまりの恐怖に頭のネジが切れたのか、それとも純粋な怖いもの見たさか、武に運ばれている景を見るために目を開けようかどうしようか三秒ほど悩み、目を開いた。
「ひぁっ!?」
しかし………それは愚行の中の愚行だった。
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まず目を開けた俺が捉えたのは明らかに武の長を超えているであろうなんらかの建の屋。こいつ、人の家の屋を走ってやがる………怒られるぞ、というか常識的な道を走れよ、なぁ。
まぁ、正直なところ俺としては今すぐ武による輸送便?を降りてやりたい気分であるのだが、このまま俺のただでさえ遅いのにTSにより弱化した可能のある足で走っていったんじゃ遅刻する可能が濃厚、いや確実なので降りるわけにはいかない。なんだこの嫌なジレンマ。
とにかく、このままじゃちょっと怖くて考え事を続けるのすら困難そうなので一度目を閉じようか。
蠻勇だったんだよ。さっきの開眼は。だから閉眼。
そして何か考えていよう。余計過ぎてなんの意味もないような、そんなことを。目を開けて現狀を知ったのは良いけど余計に怖くなって酔いそうだし、さっきの景から目をそらすんだ。
例えば………あぁ、そうだ。
學校に著いたあと後輩ちゃんにどう説明するかを考えておくべきか?
突然神にTSさせられたとかって言っても多分信じてはもらえないだろうし、なんか別の理由を考えよう。
………真実を信じてもらえないとか微妙だけど。
案1、とりあえず変な薬飲んだらこうなったって言ってみる。
どうあがいても頭が悪すぎるな。ダメだこりゃ。保留。
案2、なんか気付いたら。これはアウト、完全にダメだ訳が分からないことになる。
案3、いっそのこと真実を伝える。
アホだね俺。これがダメそうだからってことで噓を考えようとしているのに、真実を伝えようとしてやがる。
バカじゃないのか俺。いやでも実際今通ってるとこに現役合格できたのも、たまたま今年は定員を増やしたから微妙に倍率が低くなってたからということもあるし、順位はギリギリだったから………バカなのは事実だな、うん。
何故か誤魔化しの言葉を考えていたはずの俺は、気付けば自分を罵倒するようなことを考えていた。
「由!著いたぞ!」
だが、そんな時不意に武が停止した。學校に著いたらしい。
個人的にはもうちょっと普通の道を走ってしかったなと思いつつも、おうそうかありがとうなじゃあ降ろしてくれ………と、ようやく極限狀態をしたという謎の安堵から間がまったく空いていない言葉で降ろしてくれと言おうとしたが、武は俺のその言葉を聞くまでもなくさらにき出した。
「でもあんま時間ないから教室まで連れてくぜ!」
「おいちょっと待………」
俺の悲痛なびは、屆かない。助けを求める聲は、屆かない。
待っているのはただの、フリーランニングも同義の全力ダッシュ。
えっ、ちょっ。ヤバいこれは流石にまずいって………
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「運ばれていた瞬間の記憶がおぼろげだぞ………」
一時限目と二時限目の隙間、移中。
俺は武に文句を言っていた。確かに謝はしたがな。今日は擔任が休みで副擔で育教師かつ鬼とまで呼ばれるあの井上が教室で待ってたし。
井上は遅刻について………だけでなく他の大抵のこともだが、とにかく生徒に厳しいからな。
今回は武が超特急で運んでくれたからなんとか3分ほど余裕をもって到著できたのは數ない幸運の1つと言えるだろう。
いやしかし、まさか井上は俺のTSに気付かないとはね。
るなりお前は誰だ。とかの臺詞は貰う覚悟だったが、気付いていなかったのか何も言われなかった。正直笑いたかったね。骨なのに気付かないんだもん。
「ぐぅ………まぁ間に合ったんだから良いだろう」
「そりゃそうだがな、まずいんじゃないか?主に通ったルートとかがさ」
俺たちは、次の授業である理科のために理科室へ向かいながらも、不な會話を続けていた。
もちろん、意味のない會話がまともに続くわけもなく、俺の文句はいつの間にか何気ない日常會話に変化しており、特に意味もないところで付き合いの長さが証明されていた。
悔しいよ………しかし俺のこの怒り、どこにぶつければ?
あぁそうだ。神様にぶつけとくか。よしくたばれ神様。
「しかしさ、お前はなんでになった途端絶世のになったんだろうなぁ?」
「知らん」
「その容姿の1パーセントでも環奈のやつにでも分けてやればいいのに」
いいアイディアだな。だが斷る。俺のものは俺のもの、そして俺は心が狹いのだよ。
殘念だったな、環奈。………そういやアイツ、最近彼氏に振られたとか言ってたけど今日はちゃんと學校來てんのか?気になる所だな。
俺たちは、そんなくだらないことを考えながら理科室へと進んでいったのであった。
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