《TSしたらだった件~百合ルートしか道はない~》「何この連鎖………埒が明かない」
薫くんからの逃走中、俺は自分の限界を完全に超越していた。
命が掛かってる気がしたのも大きいかもな。人間ってスゲー。
だがしかし、そんな限界を超えた逃走なんてものは長くは続かない。オートカウンターがあるからけなくなっても即やられるって訳じゃないだろうが、しかし………解決法を早くかんがえないと結果的にやられることには変わりないだろう。
だから俺はこの狀況に対して何かしらの策を立てようと思う。
何かあるか?
………何もない。解決法、存在しない。というか今やゾンビもかくやというとんでもない形相で追ってきている薫くんをどうにかする方法なんてそれこそ武辺りに取り押さえてもらってからの説得くらいしか思いつかないぞ?
しかも今武は部活中(多分)だからこの辺にいる可能は低いし、ここから學校に戻ったところで戻る最中にやられるだけだろう。
どうにもならないな。なくとも武には頼れない。
それじゃ他に頼れる相手で、この周辺に居る奴………誰だ?
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今居る場所の周辺に居るかもしれない知り合いの顔を全部思い浮かべる。
そして、一人だけ頼れるかもしれない男の顔が思い浮かび………諦めた。
いや、実は郁馬の家がこの近辺にあるからそこに逃げ込もうかなんて考えはしたけどさ、よく考えりゃアイツの母ちゃん今病気に罹ってるらしいしなぁ………流石に頼るわけにはいかないか。
仕方ないからここは今度こそあの変態どもを利用しよう。
俺は意を決し、さきほど変態たちがたむろしていた地點へ近付こうとした………その時。
「お、由!一緒に帰ろうぜ!」
武怪力神が目の前に現れた。
學校のカバンを背負っていることを考えると部活帰りなのだろう。好都合だ。
俺は現れた武に『助けて、コイツを抑えてくれ』とジェスチャーで伝え、武の傍まで近寄って全力で後ろに隠れる。
コイツならきっと薫くんすらも抑えられるに違いない。
心ほくそえみ、しれっと武の背後まで最後の力を振り絞って隠れる。
すると武は狀況を理解しないままに薫くんを見て、俺を見てから………
全力でぶん毆った。
「おいお前何してんだ抑えろって伝えたよな!?」
「ん?あれって気絶させてけなくしろって意味じゃないのか?」
「違うわ!」
俺は予想をいい意味でも悪い意味でも裏切ってくれた武に文句を言ってから呆れ、しかしそれでもさっきより狀況は改善したと判斷し、とりあえず薫くんがいつ目覚めても大丈夫なようにしておくことにした。
何をするかと言うと………単純に薫くんの制服を上手く使って薫くんの腕を縛り付けるだけだ。
本來なら結束バンド辺りがしいところだけどな。贅沢は言えない。
その後、薫くんの腕を無事縛り上げることに功した俺に武が話しかけてきた。
「ところで由よ」
「なんだね武」
わりかしいつも通りのやり取りだが、今はこのいつも通りがありがたいよ。
最近異常とか異常とか異常とかしかないし、こんな普通のやりとりすらも懐かしくじてしまう。
というかトラブル多すぎて覚がマヒしてきてるなぁ………
そんなことを考えていたら、不意に武が弾を投下した。
「今からあっちで茶でも飲まないか?」
そう、さきほどのコワモテ逃げ友くんのごとく、ある意味で誤解を招くようなことを言ってきているのだ。
「お前そういうタイプじゃなかったと思うんだが………ハッ!まさかお前は偽か!?」
「ハハハ、そりゃあお前は可いからな。いたくなってもおかしくはないだろ?」
「俺は男だッ!」
しかも普通に弾は一個じゃない。クラスター弾(1つの弾の中にたくさんの弾が仕込まれているやつ)タイプの連続攻撃かつ神的広範囲撃だぜこいつぁ………
つーか武よ、いくらお前がヴァカすべきバカとはいえ元男である俺にそれを言うとは思わなかったぞ?
それくらいなら環奈辺りを口説いてた方がまだ建設的だろ。
しかも俺には後輩ちゃんと言う彼が居るからなぁ………
「でも今はだよな。それにお前の格は正直直球どストライクだ」
「お前それで良いのか人として!つーか俺彼いるからな!?」
「大丈夫だ、話し合い(理)には自信があるぞ」
「お前と後輩ちゃんの頂上決戦なんざんじゃいないですけど!?」
「ならお前の彼と話し合って………とりあえずお前に貢ぐことから始めてみようと思う」
「一周回ってなんでそうなったか理解出來ねぇよ!」
埒が明かねぇ………なんで薫くんと言う目の前に迫った理的危険が去ったと思ったら武とかいう最悪級の面倒さを誇るやつに絡まれなきゃいけないんだよ………ざっけんな!
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