《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》序章……もう嫌だ!
「な、何でぇぇ?」
朝起きたら、部屋の中のが又減っていた。
「あぁぁ!又あいつは!」
雙子の弟ルイは、貧乏子爵家の跡取りだと言うのに、昔のご先祖がしてくれたを持ち出しては、遊び歩く。
あたしの部屋は、數ない鍵のついた部屋で、鍵はあたしと頼りないものの父だけが持っていたのに、
「渡したの父さんだな!本當に、折角久しぶりに見つけたで、価値を調べようと思っていたのに!」
深紅の重苦しい髪をかきむしった。
あたしはマリア。
青い瞳は大きくつり上がっていて、髪の手れをする暇はなくただ縛っているだけ、は日焼けしている。
ルイは、雙子でもたれ目でが白く、髪も同じではないが手れされていて艶がある。
本當は、もうすぐデビュタント……同年代の男が、公に人したと王宮に出向く。
あたしたちは子爵家の人間だから、デビュタントへの招待狀は屆いている。
しかし、その會場である王宮に向かう為の馬車はない。
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去年売り払ったのだ。
すでに者となる人を雇うお金もなかったし、馬車をひく馬も飼える余裕はなかった。
當日レンタルするにも、同様の家から予約は殺到しているはずで、今更予約しても無理だろう。
それに、ドレスコード一式を揃えるのもお金がかかる。
あたしは14歳に見えない程背が低く、痩せているので、ルイ同様ぽっちゃり格の母のドレスを著ることができないのだ。
詰めても詰めても布が余る。
それに、流行に疎いあたしでも解る……母の趣味は酷すぎる。
「本當に、デビュタントが一人なら、まだ何とかなったのに、雙子だから……ルイだけ今年デビュタント出席して、あたしは一年間どこかに分を隠して働きに行こうか……」
起き上がったあたしは空腹を訴えるよりもキリキリとうずくお腹を押さえ、せり上がる胃を飲み込み、急いで著替えをして部屋の中のチェックをする。
「……あぁ!アイツバカ!持っていかれたら困るものと言うか、恥になるガラクタを持ち出してる。幾ら何でもリスティル陛下のサインつきとか言ういわくのメモのついた石の原石の箱、持ち出してどうすんのよ!売っても原石だから買い叩かれるし、リスティル陛下のサインなんて偽造やニセって取っ捕まるのに!」
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頭を抱える。
ここ、ルーズリアの國王リスティル陛下は、悪政をしいた先代國王の従弟であり、名君だった先先代國王陛下の雙子の弟亡きレアンベルジュ大公ハインレッド閣下の長男。
元々王位継承権に全く興味を持たなかったリスティル陛下は、公爵となった父と共に、當時10才余りで初陣。
さほど年の変わらない、ここから北にある小國リールの現在の國王と共に、戦場を駆け巡った。
戦場から戻った陛下は度々行方をくらまし、伯父や家族が探して連れ戻し、お見合いをさせようとしたものの、どんなに屈強な護衛をつけても、宮城の奧の奧に閉じ込めても走して行方不明になったらしい。
その行方不明の間は、々な噂があり、隣の大陸の竜の國に留學したとか、この世界アシエル中を旅したとか、この家にされていたゴロゴロの石のようなものを掘っていたとかあるらしい。
でも、旅はあっても、石の発掘ってどうなのよ?
お金が出てくるならいいけど、あのバカルイが持ち出したのはただの石!
ついでに一緒におじいさまが納めていたって言うサインつきメッセージって、
『はーいヽ( ・∀・)ノ
ラミー子爵~じゃなくてルイスどの~元気?
僕は元気だよ~あははヾ(@゜▽゜@)ノ
本當はルイスどのに勧めて貰った場所を、掘って掘ってとことん掘りたいんだけどね?
父さま達の探してる気配がしたから、引き上げます。
あ、これ、見つけた原石だよ~。
ルイスどのやステファニー様には本當に良くして頂いたから、贈ります。
もし何かあったら売ってね?
それか、王都のボクの家に持ってきて~?
よろしくね(^-^ゞ
レアンベルジュ公爵家長子リスティル』
って、絵文字つき!
幾つのお子さまですか?
だよね?
でも、一応、おじいさまから私にけ継がれただから、大事にしていたのに……。
そして周囲を見回す。
「あぁ、もう、売れるものないなぁ……本も売ったし、服もおばあさまから戴いた飾りも……売っちゃったし……。そう言えば髪を切ったら、かつらや付けに出來るって聞いたけど……あたしの髪は、珍しいからなぁ……。何故か、正妃様に似ているって言われるけど……」
リスティル様のお妃様は、名家の出。
王弟殿下ミューゼリック殿下の奧方の姪に當たられる。
見事な深紅の髪と、瞳はハチミツ。
お小さい頃から留學経験があるらしく、とても気さくで優しい方だと死んだおじいさまが教えてくれた。
「……本當に、どうしようかなぁ」
頭を抱える。
「マリア!」
貧乏な家には最低限のメイドしかおらず、母が扉を叩く。
「はーい!待って!すぐ開けるから」
しばかれたくなかったのか、しっかり鍵をかけ直してあった扉を開ける。
「どうしたの?お母様」
「ど、どうしたのじゃありませんよ!どうしましょう!どうしましょう!」
「どうしましょうじゃわかりません。お母様。何があったのですか?」
「あ、そうよ!マリア!ルイが!」
「何かしたのですね!」
真っ青になる。
「この部屋に侵して、おじいさまから戴いたをくすねていったのです。しばき倒そうかと思っていたのですが……戻っているのですか?」
「マリア!その勢いで行かないで頂戴!貴方はラミー家の長として……」
「借金だらけで、お父様はギャンブル、ルイは家の中のものを持っていく!もうこりごりです!」
母親を押し退け、突き進む。
そして、メイド頭であり、母であるイーフェが出てきた部屋の扉を叩く。
「失禮いたします。私はラミー家の長、マリアと申します」
扉を開けて室にはいるとお辭儀する。
顔をあげると、古いソファに禮儀正しく座っている同年代らしい年。
その橫に、のんきにお茶を飲んでいるのは、ルイである。
「あ、姉さん、おはよう!」
「……ルイ……歯ぁ食いしばってろ!」
「キャァァ!マリア!やめなさい!」
背後の母の聲を無視し、弟に駆け寄ると、襟元を摑んで引きずった。
ルイは重いが、怒りで怪力に開花したらしい。
拳を振り上げ、にっこりと微笑む。
「ルイ?あたしが怒っている意味、解るかしら?」
「えっ?えっと……石、持っていった事かなぁ?あはは?」
「そうね?それに?」
「えっ?えっと……姉さんが寢てるのを見計らって取っていった?」
「えぇ、そうよねぇ?それから?」
あたしは微笑みながら促す。
「あっ?えーと、姉さんの部屋の鍵はね?父さんから巻き上げたの。ポーカーで勝ったんだ」
「そうよねぇ?あたしの部屋にはってこないでって、鍵つきよねぇ?じゃないとルイやお父様がこの家の財産を食い潰すからって、お祖父様から言で渡されたの。お父様には、特別な時以外にはらないでといったわ。それに、貴方にらないでとは本當は言いたくないのよ?でも、ったら代々のご先祖様のされたもの全部持ち出すでしょう?」
「えっと……姉さん、とっても怒ってるとか?」
「えぇ。歯ぁ食いしばれ!」
と言い、逃げようとした弟のみぞおちに拳を叩きつけた。
「がはっ!」
「あんたは!この家の狀況が解ってないの?あんただけでも何とかデビュタントにと思って、毎日家計簿を見たりしてるのに、お父様はギャンブル、あんたはフラフラその年齢で何遊び歩いているのよ?跡取りとして全然ダメじゃないの!お母様はあれ買ってこれ買ってって……もういい加減にしてよ!」
ぶ。
「あたしだって15に來年になるのよ!なのにどうしてあたしが、毎日お金の計算に、お父様やあんたやお母様の我儘にいちいち付き合わされているのよ!家にはお金がないって言ってるでしょう?ばあやとじいやに無理言って庭師や料理まで、馬屋の番に!お祖父様からの恩があるからって、過労死させるつもり?いい加減にして!」
「姉、さん……ご」
「もう、いいわ!誰も全然あたしの言うことを聞いてくれない!口先だけ謝罪されても嬉しくない!あたしはじいやとばあやと一緒に家を出る!ラミー家とは関係ないからデビュタントに出なくていいわ!もう、お父様とお母様とあんたでやりなさい!じゃぁね!」
突き飛ばすように突き放すと、お客様を見る。
プラチナブロンドのようなふわふわの銀の髪とグリーンの瞳がしく、あたしには羨ましい。
でも、丁寧にばあやに習ったお辭儀をすると、
「申し訳ございません。お客様。私はラミー家を出る者です。後は彼とその母上にお任せしますので、失禮致します」
聲をかけて、もう一度深々と頭を下げる。
「あ、えっと、マリアどのだよね?」
「……ただのマリアです」
「えーと、これの正式な継承者は君?」
広げて見せたのは部屋から紛失した例の手紙……。
「さようでございましたが、そちらの方に盜まれましたので、私のではありません」
「盜んだんじゃないよ!姉さん!」
「私には弟はおりません」
たれ目の弟だった存在に冷たく言い放つと、ルイはショックをけた顔をする。
「ね、姉さん……」
「私は貴方など知りません。失禮します」
「待って!姉さん!謝るから!姉さん!」
抱きつこうとするのをよけ、倒れたルイを冷たく見據える。
「にむやみにれないで下さいませんか?幾ら分のないとしても……」
「姉さん!」
「失禮致します」
「ちょっと待って、マリアどの」
年は立ち上がる。
「じゃぁ、君この家を出てからどうするの?」
「……関係ない話かと思いますが?」
「一人で出ていっても大変でしょ?」
「じいやとばあやがおります」
「3人で路頭に迷うの?」
言葉をなくす。
すると、にっこりと微笑んだ年は、
「私はティフィ。父が君のお祖父様にお世話になったんだ。君をそのままにできないよ。父にも怒られる。だから私の家に來て下さい」
「貴方の家ですか?ご迷ではありませんか?」
「いいえ。母も喜びます」
「……仕事が見つかるまで……よろしくお願い致します」
マリアは頭を下げたのだった。
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