《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》1……下働きかと思ったら

ある程度のの回りのものを集め、じいやとばあやと3人で出てきたのだが、ティフィの乗ってきていた馬車に唖然とする。

「えっ?この紋章は……」

「あ、あの、第2公爵家の……」

「マリアどの、マリアどののじいやさん、ばあやさん、こちらですよ」

馬車の扉を者に開けて貰ったティフィは振り返る。

「あ、あの、私は、ドレスではなくて……」

継ぎまでは當たっていないが、くたびれたワンピース姿である。

その上元執事に、メイド頭である夫婦は分が違う。

「早く。確か、ギャンブル好きの子爵はもうすぐ帰ってくると思うよ?荷は後で全部引き上げるとしても、まずは貴方方がここをかないと引き留めるよ?」

ティフィは視線をかし、ティフィが呼んだらしい數人の侍や侍従がき回る屋敷を示す。

呆然としている母とルイが來る可能がある。

「お嬢様。參りましょう。お嬢様は頑張られました。先代様が亡くなられて7年……もう十分でございます」

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「私のお嬢様……この方のおっしゃられる通りです。私どもは歩いて追いかける……と言うことはさすがに無理です。馬車に、申し訳ございませんが同乗させて頂いても構いませんでしょうか?」

「どうぞ。マリアどののじいやさん、ばあやさんなら親も同然。どうぞ」

「お嬢様……」

「え、えぇ。失禮致します。ティフィさま」

者の手を借り、乗り込んだ中はしい刺繍と絨緞、裝飾に覆われていた。

ボーッと見いる姿に、ティフィは微笑み、

「亡くなられた叔父上が蕓家だったんだ。裝飾を手掛けられたのは全て叔父上。見たいならどうぞ。こちらに座るとよく見えるよ」

自分の隣の席を示す。

「で、ですが……」

「大丈夫。あちらにお二人が座るからね」

言いながら紋章を刺繍されたクッションを、マリアの居心地のいいように並べる。

「……凄いです……夢みたいです」

「あ、お茶とお菓子もここにあるから、しいなら言ってね?」

二人が座り、様子を確認し、大丈夫と踏んだティフィは小さい窓の向こうに指示をする。

いつもなら……いや、今年手放した馬車は、く時にかなり揺れるので有名だった。

いつも、小さいが跳ねるのを覚悟しつつ乗っていたのだが……。

「……揺れてません……でも、いてます……」

し振があるだろう?」

「今年手放した馬車は、かなり揺れて、跳び跳ねて頭を良く打っていたので……」

「馬車も手放したのかい?」

「馬も二頭して全部……二頭は私の馬なんです」

マリアは微笑む。

「飼い葉が高いと言うので、小さいのですが馬たちが食べられる飼い葉を育てて……あっ!連れてくるのを……」

「大丈夫だよ。伝えておくから」

いつの間にか肩に留まっていた深紅の小鳥に囁くと、翼を羽ばたかせ消えていった。

「えっと……」

「あぁ、あれは、。この國にはそんなに使える人はいないんだけれど、私の父が隣の大陸のシェールドに留學していて、私も習ったんだ。父ならシェールドのドラゴンを模したりできるけど、私は小鳥までなんだ」

……」

「うん。多分、マリアどのもの力、持っていると思うよ。でも、習っていないと暴発するから使おうとか思わないこと」

「はい。でも、どこに向かっているのでしょう?第2公爵家のお屋敷は南ではありませんでしたか?」

馬車の窓から見える景に首をかしげる。

「この馬車は、従兄弟に借りたから。向かっているのは私の家だよ。あ、そうそう」

突然、向かい合う座席の間に細長いテーブルが現れ、お菓子にティカップ等が現れる。

「お茶はここで淹れられないから、ボトル缶で持ってきてるけど、どうぞ。朝早かったから何も食べてないでしょう?」

「えっ……あっ!」

丁度、お腹が知らせてくれる。

「どうぞ。お二人も」

「ありがとうございます」

恐る恐る摘まんだお菓子は、甘く口の中で溶けていく。

味しいです……食べたことない……」

「異世界のお菓子だよ。シェールドで材料が作られるようになって、時々贈られてくるんだ。母が大好きで……ほら、綺麗な花の形でしょ?」

「本當です……」

「見て楽しむ、食べて楽しむのがいいんだって。父は作り方を覚えて材料を取り寄せたり、こちらでも育てられるか研究中だよ。本當はラミー家の地域が材料を育てるのに適してそうだって、頼もうかって言ってたんだけど……跡取りが彼とは……。私が聞いていたのは、當主は頼りないけれど、跡取りがしっかり者で、石榴の髪と瞳が逆にアイスブルーの子だって聞いたんだけど……」

マリアはため息をつき、

「馬に乗れるのは私だけだったので、領地を回る時には乗馬服でした。多分、そのせいだと思います。跡取りは、私と違って可い顔です。し違います」

「はぁ?君も可いじゃない。顔も整ってるし、髪もかだよ。著いたら、著替えを頼もうね?」

「メイドの服ですか?」

「何いってるの。母に頼むから、あれこれ著てみるんだよ?」

ティフィはお茶を飲みながら、

「お二人も、お仕事とかはなしで、私の両親の話し相手をお願いしますね」

と笑う。

マリアは、自分を拾った年の正は知らなかった。

しかし、初めて食べたお菓子に、いつの間にか夢中になっていた。

出てきた家では贅沢止と、まずは甘いものが消えた。

続いて、嗜好品、お茶とかパイプ等がなくなった。

それでも家族の贅沢はやまず、料理の品が減り、それと共に雇っていた使用人が一人二人と去っていった。

必死にそのを埋めようとするが、あちこち掃除されておらず、シーツなどの洗濯も怠るようになった。

これからどうなるのだろうか……。

ふわふわとする頭で考えるが、心地よい満腹と、何故か安堵に、堪えきれず手で口をおおいつつあくびをする。

「眠たいんですか?」

「あ、すみません。最近余り眠れなくて……」

「休んで下さっても平気ですよ?お部屋に案しますので」

「それはいけません。きちんと……」

座り直し、まばたきをしたりを繰り返していたものの、最後に首が下がり、目を閉じて船をこぎ始める。

ティフィは布をとり出し、マリアにかけると、眠っても大丈夫とゆっくりと橫たえる。

ティフィとの距離はクッションの膨らみのみ。

「ありがとうございます……」

「ん?なあに?」

ティフィは二人に笑いかけると、冷めてしまったお茶を飲んだのだった。

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