《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》10……公爵家の娘。

リティは靜養しつつ、周囲はしずつデビュタントの準備を始めていく。

特に公爵家は、久々の大きな行事と言うことで、浮き足立っていると言うよりも、皆朗らかに笑っている。

リナとレナはリティがしずつ起きている時間が長くなると、邸を案してくれたり、初夏になりつつあると言うことで、庭の四阿でレディとしてのレッスン兼ティータイムを準備してくれる。

しかも、そのティータイムはティーパーティと言ってもおかしくないもので、忙しいミューゼリックや兄のデュアンリールは休日に、そして母のアリア、そして従兄弟のティフィリエルとマシェリナ、ミシェリア、ナディアラ、ラディエルという、國王の子供達が顔を見せるようになっていたのである。

ティフィリエルはリティの兄デュアンリールよりも7歳下。

ちなみに顔の兄は三十路も後半であるが、10代に見える程である。

ティフィリエルは今年30才だが、10代半ばのリティと変わらない年頃である。

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と、リティは思っているのだが、リティ自、年齢にそぐわぬ華奢さで、8歳のラディエルと変わらない位に見えることは知らない。

ティフィリエルの妹三人は、整った両親の良いところを貰った貌の持ち主で、ラディエルは母親に似ている。

そして、ティフィリエルは、唯一顔立ちと言い髪の、瞳も父親に瓜二つの冷たい貌とも呼ばれる鉄面皮に育った。

今日は、母と四阿でレッスンの後、仕事から帰ったデュアンとのダンスレッスンがあったのだが、ティフィリエルが非公式であるもののやって來た。

出迎えに向かい、丁寧に教わった挨拶をする。

「あ、お忙しいのにようこそお越し下さいました、お兄さま」

「いや、今日は、デュアン兄上が本當はリティのダンスのレッスンがあるけれど、仕事で無理だからと言われたんだ。突然済まない」

「いえ。來て下さって嬉しいです」

「あ、そうだ。これをプレゼントしようと思って持って來たんだ」

「何ですか?」

クリクリの瞳が小にしか見えないリティに、袋を手渡す。

「ありがとうございます。えと……、見ても構いませんか?お兄様」

「あぁ」

いそいそと袋を開け、目を丸くする。

「わぁ……香水ですか?」

「ラベンダーウォーターと薔薇水なんだ。ほら、私のハンカチーフにもし香るだろう?スプレーに移して、一回すると良いと思う。私は兄さんと違って、趣味が植を育てることで、ポプリとかもよく作るんだ」

「素敵ですね。ラベンダーウォーターは、ある地域で名産ですね。それに薔薇も」

「両方私の領地なんだ。アロマ用のローズオイルやラベンダーオイルも作っている。でもそのままつけるとに敏な人はダメだから、ラムダナッツオイルなどを混ぜるけれど、ラムダナッツオイルはシェールド特産だからね。今度シェールドに行った時に、叔父上や兄さんに頼んで買いに行くと良いよ。それに、あちらは固有の植が多い上に、絶対的な管理でグランディアの園があるんだ。見に行ってみると良いよ」

「そうなんですか!とっても楽しみになっちゃいました」

頰を赤くしたは、嬉しそうにプレゼントされた2つを見つめている。

「嬉しいです。瓶も可いです。使うのが勿無いです」

「いやいや、使って?又プレゼントするから。ね?リナ、レナ。よろしく頼むよ?」

「かしこまりました」

「お嬢様?四阿に」

「あ、はい。お兄様。どうぞこちらです」

して行く。

四阿には母のアリアもいて、

「ようこそ、皆。リティお疲れ様」

「ママ。お兄様に頂いたのです」

「まぁ、ありがとう。ティフィくん」

「いえ、本當は父が私の溫室からチェナベリーの苗を持っていけと言うので、叔父上や叔母上に伺ってからと思いまして」

「チェナベリー……」

従姉妹のは、目をキラキラさせる。

チェナベリーは、シェールドの野生のベリーの木である。

ハートの形の可い実が生るのだが、基本育つのは金の森が中心で、金の森は國王の直轄領地でその上野生の生きの寶庫である。

特に、ブラックドラゴンやナムグの生息繁地で猟となっている。

っても問題ないが過剰に搾取はダメ。

共存共栄である。

しかし、の程知らずはいるもので、ドラゴンやナムグの子供、果てはシェールドの民を拐し異國に連れ去ろうとするものが橫行した時代があったらしい。

その時代は、現國王の曽祖父の父の時代。

二人目の偽王ととして名前は消されているが、現在の王の曽祖父アルフレードの父は父王の次の王に選ばれなかったことに腹を立て、王に選ばれていた姉の長男を監し、父王を殺害したとも言われている。

姉が嫁いでいたのがマルムスティーン侯爵家……國王の側近の『五爵』の一家。

シェールドの第二の暗黒時代を終わらせたのは、正式な國王アルフレッド王。

そして、その従弟であるアルフレードに王位を譲り、自分はマルムスティーン家の當主として従弟を支えたのだと言う。

そして、アルフレード王は國が落ち著くと、末子で一人息子のアヴェラートに王位を譲り、混する國を王宮からではなく地域を飛び回り平定して行った。

アヴェラートは余り丈夫な質ではなかったのだが、これ又末子で一人息子のアレクサンダー・レオンハルトが、王位に就く前から王宮や養育されていた屋敷を抜け出しては悪事を調べ上げ締め上げ、それは王位についてからも変わらず、長男が人してすぐ王位を譲ると、妃と共に旅に出て行った。

ちなみに當時3歳になったばかりの雙子の末っ子たちも息子に預け、現在もあちこちで暴走しているらしい。

で、話は戻るが、チェナベリーは現在のシェールドの國王アルドリーの唯一食べられる甘味で、アルドリーはある原因で摂食障害なのだと言う。

リティは腰を下ろすとティフィを見る。

「あの。チェナベリー、ここで育つんですか?」

「うーん、森の中の茂みだからね。が強すぎてもダメだけど、なくてもいけない。風通しが良くて、寒すぎないところ」

「難しいですね」

「と言うか、ここの周りなら良いんじゃないかって父上は言ってた。ここに大きな木があるし、季節によってはが出來る。風通しもいいから最適だって……あぁ、ありがとう」

ティフィはリナに渡された紅茶に、お禮を言いつつ答える。

「まずはプランターで育ててみて、大丈夫なら植えようかと思ってる。土の問題があるかもしれないしね。デビュタントが終わってから、時間を見て調べるつもりだよ。その時には秋になるかな。その時期に植えるとダメだから、地植えは來年かな」

「凄いですね。お兄様。學者さんみたいです」

「いや、一応學位は持ってるんだ」

「そうなのですか!デュアンお兄ちゃんも、學者さんって……」

「兄上はシェールドの學位を取りまくっているけど、特に興味というか、うわぁ!ってなったのは、ミカを戴いてから、生きに……特に、フカフカしたものにはまっているみたいだね」

遠い目をする。

「ミカと彼らといると顔面崩壊……だし、あ、リティにもデレデレだよね」

「お兄ちゃんはとっても優しいのです」

えへへ……

頰を赤くする。

今回も、デュアンは餌付け功したらしい。

「そうだね。あ、叔母上。そう言えば父が、これを使ってくれないかと持ってきました」

「あら、何かしら?」

甥と娘の會話を微笑ましげに聞いていたアリアは、差し出された2つの皮袋に首を傾げる。

「実は、昔、父が発掘していた頃に集めていたもので、小さいけれど質のいいものだそうです。こちらがの開いているものですので、髪に編み込んだり、ドレスにいこんでも可いんじゃないかと。で、こちらはカッティングをして使ってしいと」

「まぁ!」

中を開けると、アリアは嘆する。

「素敵。綺麗ね。髪に編み込むのも、付けにこの石をちりばめて見てもいいかもしれないわ。お兄さまにお禮をお伝えしないと……」

「いつも母や父や家族がお世話になっていますので、いいと思いますよ?」

「ダメよ〜?本當にお兄さまにはご迷をかけているもの。それに、ティフィくんにも」

「いえ、私は全く。逆に私がリティのデビュタントのパートナーで良いのかと、迷をかけて大丈夫かと思うのですが……」

憂げに告げるティフィに、アリアは、

「本當にお願いしていたのは私たちよ。ティフィくんで本當に嬉しいわよね?レティ?」

「は、はい!お兄さま、本當に嬉しいです。よろしくお願いします」

「こちらこそ」

珍しいティフィの微笑みに、アリアはあらっと目を見開いたのだった。

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