《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》間章……リスティルとティフィ

デュアンとティフィは、數ない正式な騎士である。

その二人の父であるリスティルとミューゼリックも騎士となった。

その騎士というのは、この國には10人もいない。

そのの一人がクレスールである。

この國では騎士というものは稱號として存在し、普段は近衛兵団員という形で呼ばれるが、然程高位の者ではない。

だが本來は異國に留學し、その地で其れ相応の績を殘し、數年騎士団に勤め上げ、騎士の総帥、カズール伯爵と國王に一代爵位の男爵を與えられた者を言う。

ちなみに、上記の5人も同様に爵位を持っていたりする。

そして、騎士を養する學校はこの世界にはただ一つ、シェールドのカズール領の騎士の館。

その騎士の館では騎士といえど、基本的な學問に、初期の魔、武力を鍛えて剣の稽古以外にも、マナーレッスンはもちろん、レディーのエスコートに、果ては裝や、なりを変えて潛捜査をすることもある。

ちなみに母に似て可らしいデュアンと父親似の無表だが整った顔のティフィは、良く裝して、あちらこちらの夜會などで報を収集したりしていた。

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その為、今になっても……。

「母上!何ですか?これは!」

父や妹たちに取り囲まれ、著替えさせられたティフィは、珍しく激怒する。

今日は可い従兄妹たちに招待され、特にデビュタントの従妹のリティの、ダンスとマナーのレッスンの手伝いを頼まれていると言うのに、何故自分がドレス姿なんだ!

「リティちゃんがどうしても自信がないそうなのよ。で、一緒にレッスンをしてしいのですって。この子たちだけじゃなく、誰かいてあげた方がいいでしょう?」

「母上や3人がいればいいでしょう!叔母上だっていらっしゃるし!ついでに、クレスール先輩もいるんですよ!」

「良いじゃない。可いよ?」

真顔でリスティルは清楚な淡いブルーのドレス姿の息子につげると、

「父上?私が可いと言うことは、父上も可いんですよ?一緒に著替えましょうか?」

ガーン!

ショックをけたリスティルは、

「こ、琥珀ちゃん〜!ティフィが、こんなこと言ってるよぉ〜!」

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「あら、そうね。リーも著替える?」

「やだぁぁ〜!一人でいいじゃない。僕は伯父さんだもん!」

「だそうよ。ティフィ。教えてあげなさいな」

「じゃぁ、普通の格好でいいじゃないですか!」

真っ當なことを言ったティフィに、ニコニコと笑いかける。

「面白いじゃない。それに、私なんて最初からマナーレッスンの特訓に、ドレスにダンスに、王妃としての最低限の知識でしょう?本當に苦労したのよ。エレナと二人で泣きそうになっていたわ……でも、リティちゃんは一人でしょう?」

「ぐっ……」

唸る。

母のティアラーティアは、公にはなっていないが、父の従兄弟の娘である。

つまり、先王を稱していた男が、出仕していた侍だった元伯爵家の令嬢を無理やり襲い、子供が出來た。

しかし、戻る実家もなかった彼は子供を産み、育てつつ働いていたのを再び襲われそうになり、拒絶すると三階のベランダから突き落とされた。

それを見ていたティアラーティアは、息のあった母と共にボロい馬車に乗せられ城を追い出され、國境に置き去りにされた。

最後に自分の分が解るように、ペンダントを渡してくれた母は息を引き取り、母の骸を埋めて貰おうと國境近くの村にたどり著いたティアラーティアは、奴隷商人に捕まり売られかけたのを一回リスティルに助けられた。

その後、ある事で別れ、隣國の王宮の下働きをしていたところ、自分と同じ立場……國王の庶子……のエレナと仲良くなり、その縁でリスティルと再會し、現在に至っている。

エレナは現在隣國の王で、その王配がティアラーティアの異母兄でリスティルの甥のクリストファーである。

つまり、公にはしていないがティアラーティアは父親が先王だった男で、王家のを引いているのである。

「はい。それに、久しぶりに騎士らしく潛捜査をしているつもりでやりなさいな。お母さんはリーは裝してるの何度も見ていたけど、ティフィはそんなにないものね。楽しみだわ」

「やっぱり楽しんでるじゃないですか!」

「お兄ちゃん可いよ?」

ラディエルは目をキラキラさせる。

「お姫様みたい!お兄ちゃん、髪ばしてたの、この為?」

「違う。髪をばしているのは、暗殺者に首を狙われない為だよ!」

「でも、父上は肩までなのに、どうして腰までばしてるの〜?」

「同じ髪型したら、この変態父上に間違われたからだよ!」

父親を示す。

「失禮だなぁ。私のどこが変態なのさ〜」

「今じゃ皆は忘れてるけど、昔は私に仕事押し付けて母上と走するし!走してる間に、ラディエルが出來たじゃないですか!」

「だって、あの頃はそんなに仕事なかったしさぁ〜。私たちだって、しばらくハネムーン位しいよね。ね?琥珀ちゃん。結婚式だって自分たちで々準備もできなかったし〜」

「そりゃ、式前に私が出來ちゃったんでしょうが!つわりの酷い母上に準備も何もありますか!ついでに父上が走ばっかりするから仕事が山のように溜まってたんでしょ!自業自得ですよ!」

「そんなに走してないよぅ〜失禮な」

頰を膨らませるリスティルに、瓜二つだが裝が完璧のティフィが、持っていた扇を開き口を隠すと、ちらっと父親を見る。

「見合いからの走は三桁だそうですが?」

「うん、257だったかな〜?」

「伯父上に聞いたら238でしたよ!その次で母上と見合いで一目惚れじゃなかったんですか?」

「琥珀ちゃんは、その11年前から、私のお嫁さんだもん。探してたんだよ〜ね?」

にっこりと妻に笑いかける。

6歳のに一目惚れ……それを子供たちの前で言うというのも、度があるというか、自信満々なところを突っ込む気が失せてしまうのは何故だろうか?

「僕も〜!父上みたいになる〜!」

「やめなさい!ラディは父上の真似をしては駄目だよ!」

「えー、あ!じゃぁ、僕、リティお姉ちゃんをお嫁さんにする〜!」

その言葉に絶句するティフィ。

「叔父上にお願いしよう〜っと。父上、母上、いいでしょ?」

唖然とするティフィは、妹たちに引っ張っていかれ、馬車に乗せられたのだった。

後の馬車に乗った両親とラディエルの會話は聞けなかったのだった。

ちなみに、

「ラディ?リティお姉ちゃんは、今まで必死に頑張ってきたんだよ。ラディはまだ8歳で、リティお姉ちゃんは14歳。小さい頃から苦労してる」

リスティルは息子を見つめる。

「リティお姉ちゃんは、甘えることが苦手なんだ。今はミュー叔父さんの娘になって、叔父さんたちにようやく甘えることができるようになったんだ」

「うんっ」

「お父さんは、ラディのお嫁さんにリティは反対だよ」

「何で?叔父上の娘だから?」

してくれると思っていた父親の言葉に、拳を握る。

「僕、お姉ちゃん大事にする!それでも駄目なの?」

「まだラディが小さいからだよ。ラディが14歳で、リティが8歳だったら年が釣り合うから考えてもいいけれど……逆だから駄目なの」

「何で!母上!父上が!」

「私も同じよ。ラディ。貴方が人するまで後10年近くかかるわ。そうすると、リティは20歳半ば。その歳まで待って頂戴なんて言えないわ。それにね?リティは今まで頑張ってきたの。年上の守ってくれる強い人に甘えたいと思っていると思うわ。私もそうだったから解るの」

ティアラーティアは年の離れた末っ子を見る。

い子ではあるが、まだまだお子様な上、年の離れた兄と姉や周囲に可がられて育ったラディはし我が儘なところもある。

周囲は多の我が儘には目を瞑るが、苦労してきたティアラーティアはもうし厳しく育てた方が良かったかと思っていた。

長男のティフィはその點、手がかからない子だった。

大人しく、それでいて大人びていて、逆に構おうとすると、

「妹たちがいるでしょう?父上もお仕事頑張って下さい。僕はお勉強と剣の稽古です」

と素っ気なかった。

本當は甘えたかったのだろうとは思ったが、年の近い三姉妹に手がかかり、申し訳ないものの叔母のアリア夫婦に面倒を見て貰うことが多かった。

まぁ、そのこともあって、デュアンの暗殺計畫も即ティフィがある程度まで踏み込むことができ、未遂に終わったが、もうし構ってあげれば良かったと後悔もある。

「お母様は、ラディのお嫁さんには別のの子をと思っているわ。リティには年上の人をと思ってるのよ」

「あ、私は、ティフィのお嫁さんがいいなぁ」

「ち、父上も、母上も意地悪だぁぁ!わぁぁん!」

泣き出すが、リスティルは素っ気なく、

「ラディ。お前は噓泣き下手だねぇ。涙出てないじゃないか」

と言い放つ。

「まずは我が儘が許されると思っていることがすでに子供だよ。そんな子供がお嫁さんだ何だということも笑えるね。最低でも、勉強をサボったり、剣の稽古をだだこねしたり、周囲の目を盜んで街に行ったり……そんなお子様に嫁は早すぎるね」

「じゃぁ、真面目に勉強する!」

「もう遅い。私はお前の年ですでに剣を持ち、それから戦場に立ち二年間戦った。ティフィは戦場にこそ立たなかったが、王太子として會議に參加して大臣や僚の意見を聞いていた。そして留學をして知識を深めている。ラディ、第二王子とは言え、お前には王位継承権がある。今から何ができるんだい?」

目を見開いたラディは、俯き両手を握りしめる。

「……っ!」

「リティは諦めなさい。ラディ。お前は本當のというものは分かっていないし、お前がもし婚約者になったとしても、お前が一方的に甘えるだけで、リティが辛い思いをするだけだよ。お前にもっと努力する、長するきっかけがあればね……殘念だけど、今のままでは……ティフィにも負擔になる。もっとしっかりしなさい。王弟となるのだから、ティフィを支えるなら兎も角、甘えっぱなしになっては困るからね」

リスティルは言い聞かせる。

「良いね?これは私やミューたちもそう思っているから、変えることはないよ。お前が悪いんじゃない。皆は、リティを幸せにしたいと思っているんだよ」

「ぼ、僕じゃ、駄目なの?」

「ダメというよりも無理」

「それに、私はティフィにお嫁さんがいつ來るかの方が心配なのよ〜!年に産んであげたのに、素っ気ないし、言葉もないし、こうなったら遊んじゃいましょうって皆で著せ替えさせたのよね。似合うのが怖いわ〜我が子ながら」

ティアラーティアはため息をついたのだった。

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