《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》21……リティが再會した人々
リティは、朝からドレスを周囲のメイドたちに著付けて貰う。
髪はザクロで瞳がブルーの為、淡いピンクのドレスと、髪飾りは伯父の國王陛下から下賜された小さな原石を使った可らしい蝶々柄、普段につけているピアスにも引っ掛けるように小さな蝶々がキラキラと輝く。
ちなみにこの裝飾を作ったのは、一月ほど前にシェールドから來たと言う端正な青年と、共に來たのは刀を帯剣した大きな瞳の男裝の麗人。
「お久しぶりです。フェルディさま。ガイア師匠」
「あぁ、久しぶり。ミューにアリア、デュアンも大きくなったねぇ」
「フェルディさま。私ももう三十路後半ですよ?前にお會いした時は一年前です」
「そうだったっけ?」
「フェイはもうジジイだからな。忘れてるんだ、デュアン。ジジイに付き合っている暇があるなら、俺と訓練するか?」
男裝の麗人と言っても、本當に大きな瞳に整った顔、そして華奢なをしているのに、スタイルはらしく出るところは出て、ウエストはくびれている。
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髪はキラキラとを纏うような金で、瞳は明るい空。
今ですらドキッとする程背徳的な印象だが、ドレスをにつけると誰もが振り向きそうな程の貌である。
「誰がジジイ?酷いじゃないか〜ガイア。確か、私の方が4歳年下だよね〜?だって、私、チェーニャの父親になった時、13だったもん。ガイア17だったよね?」
「どアホ!一いつの話だ!」
「私がジジイなら、ガイアは……」
「……それ以上言えば、どうなるか分かるよな?」
いつの間にか刀が抜かれ、フェルディの首筋に當てられる。
「あぁ、怖い怖い。ミュー、私は何時もこんなじでに敷かれているんだよ〜」
刀を突きつけられても笑っている青年は、銀の長い髪に瞳は青、顔立ちは絶世の貌だがひょうひょうとした印象である。
「フェルディさま。師匠に殺されますよ。に年齢を聞くのは失禮です」
「そうだねぇ、と言っても、もう、歳なんて関係ないと思うんだけどね〜。もう、何歳だったっけ?ガイア」
「知るか。俺に聞くな!それよりも死にたいなら今すぐ殺っても良いが?」
「もう、嫌だなぁ。ガイア。ほら、ドラゴン達の娘のファティ・リティの、デビュタントの為の裝飾を作りに來たんだよ。私を殺すのは後にして、ミューにデュアン達と遊んでおいでよ」
示された二人は顔を引きつらせる。
その様子を見たガイアはにぃ〜っと笑う。
「それが良いな。明日には、リーとティフィをしごきに行くつもりだったんだ。今日はよろしく頼む」
「は、はい……」
「あ、師匠、今、こちらに後輩のクレスールも滯在しているんです。一緒でも良いでしょうか?」
「あぁ、あのちょこまかして逃げ回ってたクレスな?いいぞ。ここ最近チェーニャと手合わせができん。アルドリーやチビシエラに、ちっさいリュシオンも楽しいがな」
ケラケラ笑うは笑う。
「じゃぁ、可いお嬢さん。またね」
リティに手を振り、アゴで二人を促すと歩き出した。
「ごめんね。ガイアは元々シェールドのカズール伯爵家の筋でね。口はああだけど、騎士らしい騎士かな?」
「いえ、えと、ご挨拶を忘れていました。私はファティ・リティ・ウィステリア・ルイシアと申します。お會いできて本當に嬉しいです」
マナーを自分のものにしたいと、ダンスのレッスン以外にも勉強などをしながら、母やイーフェ、そして時々遊びに來るティアラーティアのマナーを見て練習している。
それは、リナやレナが止めたり、疲れて寢っているリティを父親や兄のデュアンがベッドに寢かせる程。
必死に努力をする姿は本當に心するが、家族は心配していた。
「こんにちは。ファティ・リティ。大きくなったねぇ?それに綺麗になったかな?昔はこんなだったのに」
その頃の大きさを手で示すフェルディに、
「あ、お會いしたことが……?」
「あぁ、覚えていない筈だよ?君は遊び疲れて眠っていたんだ。君の名前をつけたマザー・ドラゴンと私達は友人でね。私の家に君を乗せて來たんだよ。『本當は可くてそのまま……とも思ったけれど、家族がいたら悲しませてしまう。家族を探してあげてしい』って、で、預かったんだよ。でも、私は親が見つからなければマザー・ドラゴンの元にと思っていたけれど、迎えに來てね。時々マザー・ドラゴンが來るよ。君のことを心配して」
「お、お母さんが?」
「デビュタントが終わったら、シェールドに向かうと聞いたけど、會いに行くかな?」
リティは母を振り返る。
アリアは微笑み頷く。
「あ、は、はい!お母さんに會いたいです。それに、ありがとうございます」
「うんうん。きちんとするのも後々にはいいけれど、今はそうやって笑顔の方が似合うよ。本當はもうし大人っぽい意匠も考えていたけれど、蝶がいいかな。髪飾りにはグランディアの蝶をあしらおうかな」
フェルディは微笑む。
しばらくして出來上がった髪飾りは、羽に小さな石がいくつも埋め込まれたプラチナの繊細な蝶。
そして、ピアスに引っ掛けるタイプの小さい蝶。
「わぁ……綺麗」
「これはね?グランディアのササキアという蝶なんだよ。で、小さいのはシジミアという小さくて珍しい蝶。確か、リティの従兄のクシュナが詳しいと思うよ。グランディアでも數がないらしいからね。シェールドの幾つかの溫室とこの國のクシュナの溫室、私達がこの後に行くリールの溫室にだけだったからね」
「わぁ、そんな素敵なものを私にですか?フェルディさま。ありがとうございます」
「いいのいいの。折角のデビュタントでしょ?シェールドのアルドリーが、絶対にリティには素敵なものをって頼まれたんだよ」
「えっ!アルドリー陛下がですか!」
目を見開く。
目の前のフェルディにもガイアにも似ている絶世の貌の持ち主と言うのは、シェールドの國王のことを指すだろう。
伯父のリスティルも貌だが年っぽさを殘す無表。
しかし、アルドリーは中的な貌をしていた。
長で用は大刀。
だがしなやかで、目も覚めるような貌。
小さい時に會った時にも、橫に並ぶ王妃ルエンディードと一対のしさにぼーっとしたことがある。
祖父に肩を叩かれ思い出し、慌てて挨拶をすると、近づいて來た國王はリティを抱き上げ、頰にキスをしてくれた。
ちなみに、
「リー兄さん。娘さん?あれ?ティフィと三姫の後は、最近生まれたラディエルだけだったよね?」
「うちの子じゃないよ。ほら、私の側近のルイスの孫。可いでしょ?ルイスが溺してね、連れて行ってもいいかって」
「本當に可い。ウンウン、ルイス殿が連れて來たいと思うの解る。ねぇ?ルゥ」
「あぁ、小さいお嬢さん。おばさんはルゥだよ、よろしくね」
「……おひめしゃま!おばしゃんちあうでしゅ。んっと、おねえしゃまでしゅ。初めまして、マリアでしゅ」
張し詰まりながらも、挨拶をした。
一目見た夫妻は、自分を生んだが育ててくれない両親よりもしく若く、優しかった。
また會えるだろうか……。
「リティ。準備はどうかな?」
扉をノックし、顔を覗かせるのは兄。
「お兄ちゃん!」
高いヒールもある為ゆっくりと歩き兄の元に向かうと、優雅にドレスの裾をつまみ膝を曲げ頭を下げた。
「今日はよろしくお願い致します」
「うぅ〜可い!可すぎて、見せたくないよ〜。でも、デビュタントだし、あぁ、でも……」
「こらこら、何を言ってる。デュアン。デビュタントだぞ」
後ろから姿を見せたミューゼリックとアリアも、娘のらしい姿に目を丸くする。
「……うん。パパもこの格好を見せるのは嫌だな」
「もう、ミューも、デュアンも。折角のリティの晴れ舞臺なのよ?本當に素敵よ。リティ」
「パパとママやお兄ちゃんのことを、場所をわきまえて、お父様とお母様、お兄様って呼びます。いいですか?」
首を傾げ、本人は無自覚だがお願いの上目遣いに、父と兄がメロメロになる。
「あぁ、構わないぞ。でも本當に、よく似合っている」
「旦那さま。そろそろお時間ですが」
執事が聲をかける。
「あぁ、そうだった。では、デュアン。リティを頼むぞ?」
「はい、じゃぁ、行こうか。リティ」
もうすでに第一バトルが発していたことも知らず、家族は用意されていた馬車に乗り、王宮に向かうのだった。
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