《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》29……大切なものは何?

先程まではしくしく泣いていた従妹は、ある程度落ち著くとメイドと母親になりを整えて貰い、顔を洗い、口をゆすいだ。

化粧はすっかり落ちてしまった姿は、髪は解け、ドレスもあちこち破れ凄まじく、その為、メイドたちは王宮にあった妹たちの小さい頃のワンピースを著せて戻ってきた。

リティはティフィに手をばし、抱っこをせがみ、今は膝の上で、隣に座る母と手をつないでいる様は、年齢よりもく見えるだろう。

連れてきた頃と重は余り変わっていないようだが、こけていた頰がふっくらとし、手足にもが付いている。

ただ、この年齢でこの長ということは、これから余りびないだろうという心配もある。

まぁ、それすらも今負った心の傷に比べたらまだマシだろう。

「叔母上。し休まれませんか?リティと一緒に」

「いいえ……私は大丈夫よ」

微笑むアリアだが顔は悪く、疲労のも濃い。

「では、し、何かを口にされては?リティ。お菓子を食べないかな?」

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普段は無表で口數のないティフィだが、2人に聲をかける。

「……お腹……空かないのです。ティフィお兄ちゃん。パパとお兄ちゃんが帰ってくるまで……」

と言いつつ小さくあくびをした。

口を押さえているのが可いと思ったのは緒である。

「頑張って起きてます……大丈夫です」

と、瞬きをし、目が閉じようとするのを慌ててハッとして、起きてプルプルと首を振り、と仕草がまた可い。

「叔父上や兄さんが帰ってきたら起こしてあげるから、眠って良いよ」

「駄目です。だって、パパとお兄ちゃんにお帰りなさいって言うのです」

と必死に頑張ってきたが、最後にはすぅ……っと寢ってしまう。

「疲れたのね……それにショックも……私も、こんなことになるなんて思わなかった……」

アリアは呟く。

「……デュアンが無事だと良いけれど……」

「大丈夫ですよ、兄さんは強いです」

「でも、誰に似たのかしら……もっとずるく立ち回っても良いのに……」

「叔父上と叔母上に似たんでしょう。やっぱり」

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苦笑する。

「苦労のところは似てしくなかったわ……」

「優しいところと芯が強いところですよ」

「そうかしら……だったら何故、あの子たちは……デュアンのように育たなかったのかしら……?何度たしなめても駄目だった……デュアンなら解るから、あの子達だって解ると思っていたわ。ただ普通に、子育てをしていた筈なのに……」

「それだけ、愚かだった。叔母上は悪くないと思います。あの者たちが変わってしまったんですよ」

昔のように自分を責めてしくなくて、そっと告げる。

本當に叔母はあの時、倒れ苦しむデュアンを見て、悲鳴をあげた。

そしてしばらく食事も取らず、デュアンに付きっ切りで、倒れた。

叔父は仕事をしながら、時間があれば2人の傍に付き添いやつれていた。

それでも、何とか7年間かかってお互いの心の傷を癒してきたのだ。

それなのに……。

と扉が開き、叔父が何かを抱え姿を見せた。

「貴方!」

「アリア、まだ休んでいなかったのか!」

「何も連絡がありませんでしたし……もう、終わったのですか?」

「……それが……」

口ごもる叔父、その後ろから、

「おい、デュアンを早くベッドに休ませろ!が効いているこの間でないと、き出したら困るんだ!」

と姿を見せたのは、シェールド王家専屬の醫薬師アルス。

博識な彼は、植研究をするティフィの師匠の1人でもある。

「アルス様!」

「挨拶してる暇はないんだ。デュアンにをかけた。急手をする。今一時的に時間を止めている。その時間が長ければ長い程、デュアンに代償が及ぶ。ではな。ミューゼリック。ベッドじゃなくて良い。そこら辺の床に寢かせて良いから、そうしたら出ていけ」

隣室の扉が一旦閉ざされ、しばらくして叔父が出てきた。

が青ざめ、叔父らしい笑顔がない。

「貴方?デュアンは?デュアン……」

「アリア……」

妻を……そして自分自を安堵させるように抱きしめ、告げる。

「……デュアンが……パルスレット公爵だった男に、を刺された……」

「なっ……」

「パルスレット公爵だった男は最初クシュナを刺そうとした。それを庇ったんだ」

「デュア……デュアン!」

アリアの悲鳴に、眠っていたリティが目を覚ます。

「デュアンお兄ちゃん、帰ってきたの?」

キョロキョロと見回すが、青い顔の父親とその腕の中で名前を呼び泣き崩れる母親に、敏は察する。

「お兄ちゃん……お兄ちゃん!お兄ちゃんはどこですか?パパ……ママ」

「隣室だ。お醫者さんに診て貰っている。リティ。メイドに頼んで部屋を用意して貰うから、ママと休みなさい」

「お兄ちゃん!」

「駄目だよ、リティ」

ティフィは抱きしめ阻止する。

「デュアン兄さんは大丈夫。それよりも、リティは休むんだよ」

「いや!それよりやっぱり、私のせいで……お兄ちゃんが……」

「それは違う!落ち著いて!君のお父さんもお母さんも言ってないでしょう?」

「だって……私が、連れ去られたから……」

「それは違うわ。パパもママもお兄ちゃんも思っていないわ!」

涙聲だがアリアは否定する。

「逆恨みなの。7年前に……ううん。パルスレット公爵様が亡くなった時に終わったと思ったのに……ううん、貴方ごめんなさい。貴方のお兄様なのに……」

「大丈夫だ!あんな奴、何とも思ってないし。アリアをあれだけ酷い目に合わせておいて謝罪もなければ、兄と呼ばせてやるだからな。死ねと思ったさ。それに、フェル兄貴が辛い思いして逝ったのに、された姉さんやクシュナにも謝罪もしなかった!リー兄貴が諌めても駄目だった。その結果だ。なのに逆恨み!私たちの……リティのデュアンを!」

「パパ、ママ!」

ティフィはもがく従姉妹をし殘念そうに下ろすと、両親に駆け寄る姿を見守る。

そして親子3人が抱き合っている姿になぜかモヤモヤする。

と、扉がノックされ、

「済みません……叔父上、叔母上いらっしゃいますか?」

と聲が響いた。

「クシュナ!無事だったのか?」

ミューゼリックは呼びかけるが開く様子がなく、

「申し訳ありません。私が……私が……刺されていれば……」

「なら、デュアンが泣くでしょ。おりゃ、ったった。外でうずくまるでかい図。邪魔だよ邪魔」

と扉が開き、甥を押し込みつつってくるのはリスティルである。

「ミュー。デュアンが元気になるまで出仕しないで良いから、と言うか、大丈夫と言われるまでここに滯在すること。反逆者が王宮の片隅に潛んでたなんて冗談じゃない。あの塔は、調べたら即取り壊す!もっと変えていかないといかない。許せない!」

「それなら、兄貴。余計私も……」

「と言うか、もう、私も王位をティフィに譲ろうかなぁ……すぐじゃなくて良いけど、ティフィ。覚悟しておくんだよ」

「と言うか、父上がいるからこの國がり立っていて、それに、私よりラディエルがいいと言う貴族も多いんですよ?この間も言われましたし……」

「お前が継がないのなら、この國滅ぼすよ」

にっこりと微笑みながらありえない言葉を告げる父に絶句する。

「ち、父上?今何て言いました?」

「聞こえなかった?お前が継がないなら、この國を潰すって言ってるの。ラディエルが継ぐ?あり得ないし。それに、私はレアンベルジュ大公家の継承権を持ってるからそっちに移って、ラディエルをパルスレット公爵にしてと思っていたんだけどね?」

「そんな突然!」

「突然も何も、お前にとてつもなく英才教育と帝王學教育、ついでに私もそうだったから留學させて向こうの國とこちらの國の違いを理解してきた筈だよ?お前は変に聡すぎる子だったから、アホになれとも思ったけど、まともに育ったのは何でだろ〜?」

「父上が破天荒だからですよ!」

ティフィは食ってかかる。

「突然仕事放置していなくなるし!」

「私がいなくても大丈夫か、テスト」

「はぁ?妹たち3人も置いていったのも?」

「それは、折角出て行くんなら琥珀ちゃんと遊ぼうかな〜って」

「遊ぶ方が優先じゃないですか!」

息子の聲に、リスティルは真顔で、

「だって、本気でしたら全部斷罪、大量処分しそうだったから」

と答える。

ソファに腰を下ろし、弟一家や甥を座らせると、

「私にしたらもどかしくてね。全部ちょっとした罪でも突きつけて弁明しろ!って言いたかったし。まぁ、あのバカを泳がせてたのはそう言う屑を集めて一気に潰そうと思ってたんだ。でも、こんなことになるならもっと早く潰しておけばよかった……クシュナ。そこでデカイを小さくできないから」

「……すみません……」

「謝るのは、エスティマにだよ。謝って來たとは思うけどね。これからだからね。私は今回の件が収まったらティフィに王位を譲ることを宣言する。まぁ、王位を継ぐまでには結婚するんだよ?ティフィ。折角琥珀ちゃんが綺麗な顔に生んだのに、何でモテないのかなぁ?」

瓜二つの息子を見て殘念そうな顔をする。

「それにその無表。もうし笑うとか笑うとか笑顔とかない訳?パパは心配です」

「ここで笑えと言うんですか?ここで?デュアン兄さんが隣で大変でしょうに!」

「よっしゃ。じゃぁ、デュアンが元気になったら笑って貰おうかな。それに、人1人もいないの?」

「いる訳ないでしょう。そんな暇があるなら、仕事と稽古に稽古に研究ですよ!それに王妃になりたいとか、私の次の王の祖父になりたいとか、堂々とチラつかせてくれるパーティに群がる蟲から探せとでも?……鬱陶しい」

苦々しい顔になる。

「それに、父上の跡を継ぐと言うのは重いですよ……失敗すれば賢王の息子が……ですよ」

「賢王?私はそうじゃないけどね。ボロボロにしてくれた従兄弟がいたから、この國を立て直すしただけだよ。後は長させる人間が必要なだけ。お前やクシュナ、デュアンになるね。そろそろ自立しなさい」

「……自立……」

この父親に言われるとは……と微妙な顔をする。

「そうだよ。幾ら外見これでもジジイだよ。本気で、孫やひ孫いてもいいもんね。それに、シェールドのコウヤとアオキのところなんて、孫だよ?孫!コウヤ達クシュナよりし上なだけで孫!」

拳を握られても、と、従兄弟を見るが、

「まぁ、アルドリー陛下とアーサー殿下は雙子ですけど、陛下はの子ばかりで、第一王の婿にアーサー殿下の第一王子を迎えたんですよね。元々王位継承を殿下にと言われた筈で」

「大だよ〜それ位しようね?ティフィ」

「知りませんよ。勝手に言ってて下さい」

「……どうしよう!ミュー!ティフィが、結婚しないって!それともこのクシュナやデュアンと一緒に育ったからそっちに!」

「父上!冗談もいい加減にして下さい!変なことは言わない!冗談じゃないですよ!」

食ってかかる。

「私はノーマルです!叔母上やリティの前で変なことを言わないで下さい!特に、まだ小さいリティがびっくりするでしょう!」

「そっち……?」

父の膝に座っていたリティは、キョトンと父親を見上げる。

と、ミューゼリックが慌てて、首を振る。

「何でもないぞ〜?知らなくて良いからな?……兄貴!リティに変なことを教えないでくれ!……リティ。忘れるんだぞ?特に、デュアンに聞いたらダメだぞ?寢込むからな?」

「聞くんなら、クシュナに聞くんだよ?リティ」

「伯父上!何言うんですか!私が従姉妹のリティにそんなこと言いませんよ!」

「學者さんじゃなかったっけ?」

「幾ら生學者でも、私は昆蟲を中心で、學はデュアンですよ!」

クシュナに、ミューゼリックは、

「そう言うものを言うなと言ったんだ、クシュナ!お前はほんっとうに、フェル兄貴が持っていた緒とか雰囲気にうといな!」

と説教を始める。

それを聴きながら、リティはウトウトとし始める。

「ほんっとに……おっと……疲れたんだな。リティ」

抱き直し、髪をでる。

「デュアンは大丈夫だ……疲れたな……お休み」

と優しく囁いたのだった。

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