《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》31……僕はデュアン、15歳
キョトン……
とした顔で、ベッドの上で起き上がっているのはデュアン。
手を見つめ握ったり広げたりを繰り返し、キョロキョロと周囲を見回すと、なじみの後ろから姿を見せた家族に笑顔になる。
「パパ、ママ、リティ!」
聲は変聲前のソプラノボイスである。
「デュアン!大丈夫か?」
「うん。でも、手が小さくなってるし、聲も高いね。うーん、でも、年が若くなっただけで記憶にも違和がないから大丈夫だよ」
「いいの?」
クシュナの問いかけに、
「あ、兄さん大丈夫だった?良かった〜心配してたんだよ?」
「……ごめん……」
「反省したならいいの。それよりもリティ!」
「お兄ちゃん!」
抱きしめる姿は、年の近い兄妹である。
「良かった!リティがいなくなってどうしようかと思ったよ。お兄ちゃん。ごめんね。怖い思いしたね……」
「ううん!ううん。お兄ちゃんが生きてくれるだけで大丈夫……ありがとう、お兄ちゃん」
「僕の方がだよ……本當にありがとう」
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「兄上。病人なのに大丈夫ですか?」
「……ティフィ?リティにベタベタしてしくないの?僕とリティ兄妹だよ?やだね〜?従兄弟にも嫉妬するんだ」
デュアンの一言に頰を赤くする。
「わ、私は……」
「パパ〜。無意識だよ〜タチが悪い。どうしよう。でもあげないよ〜」
妹とぎゅっと抱き合いながら、ティフィをけん制する。
「ダメダメ。ティフィは抱っこしないの。リティは僕の妹。一緒に寢る?」
「えっ?良いの?お兄ちゃん」
目をキラキラさせる。
「お兄ちゃんやパパとママと寢るの嬉しいです。パパ、ママ、伯父さま、先生。大人しくするので良いですか?」
「あぁ、良いぞ。寢ろ寢ろ。それに、リティだったか?ちょっと診察させてくれるか?」
「ここでぐんですか?」
ティフィの一言に、リスティルが手刀を頭に叩き込む。
「いたたたた!父上……」
「本當にアルスさま、すみません。うちの息子、アホなんで」
「大丈夫だ。もっとアホは、自分の嫁に毆られ蹴られても喜んで世界中回ってるぞ。その攻撃がだとか抜かしてな」
「攻撃が?」
首を傾げるリティに、デュアンはにっこりと、
「変なおじさんのことだから、忘れようね?それよりも、先生は橫になって、顔と手を見せてだって」
「はい」
兄の橫に橫になる。
するとアルスは、手首で脈を測りながら、目を見たり、舌を確認したりする。
そして、
「うん、完全ではないが回復しつつある。でも、多分骨格も華奢だしこれ以上は余りびないな。運も適宜、無理はしすぎないように。そうしないと治りかけているのに、また悪化する可能がある」
「解りました」
妹の髪をでつつ返事をする。
「それと、今は大丈夫みたいだが、臓が荒れていた跡がある。前にひどくストレスに曬されたり、胃が戻ってきて吐いたりとかはなかったかな?」
「えっと……昔……お家に、パパとママに引き取られる前までです。今は全然ありません」
「あぁ、それはよく分かってる。でも、胃腸が弱っていたと言うことは、またストレスで胃腸が悪くなったりするだろう。デュアンやミューゼリックも注意してあげてくれ。今度酷いストレスに曬されると、今度は臓にが開く」
アルスの一言で、周囲は青ざめる。
臓までは見て貰わなかった。
胃潰瘍寸前だったのだろう。
「他は……『今まで良い子で頑張ったリティに、祝福を……の神の名において、ファティ・リティの今後に幸あれ……』」
と額に手を置き囁いた。
フワッと額がひかり、そしてすっと消える。
「さて、リティ。デュアンは走魔だから一緒に寢ると良い」
「でも、ミカが!それに、紅月が!他に、うちの子達がぁぁ!」
「ミカと紅月と、リティのブルーローズはもうすぐ來る。他のは屋敷の者に見て貰っている。デュアンは大人しく寢ておけ。リティが眠そうだ」
父親の言葉に気がつくと、リティがムニムニと眠そうに目をこすっている。
「わぁぁ、リティ。眠たいんだね。目をこすっちゃダメだよ。ほら、お兄ちゃんと寢ようね?」
「……うん。お兄ちゃん、大好き」
兄に抱きつく。
「という訳だ。寢かせてやれ。それにデュアンも寢るように」
「はい。じゃぁ、パパ、ママ。ミカたちをお願い」
「まぁ、父親が遊ばせるだろう。寢てろ」
兄妹らしくなった子供達の頭をでる。
「お休みなさい」
こちらもあくびを一つして妹と一緒に眠ってしまう。
「……昔から寢付きはいいんだよなぁ……」
心したと言いたげに、クシュナは呟く。
その橫で、クレスールは、
「そうですか?デュアン先輩もリティも敏ですよ。クシュナ先輩みたいに図太くありません」
「何だって?この私が図太い?」
「だってそうじゃないですか。リティは、胃にが開く寸前ですよ?こので必死に7年間、ボロボロになるまで頑張ってきたんです。デュアン先輩も同じでしょう。だから特にリティは今が一番幸せだと思いますよ。優しい両親、兄、甘えていいんだ……嬉しいなぁって」
「何か面白いもの……そうだ!昆蟲!」
「まぁ、図太いのが悪い訳ではないですが、私が言うのも何ですが、繊細さのかけらもないですね、先輩」
ズバッと言い切る。
「悪かったな。この図太さで生きてきた」
「と言うか、リティ、蟲苦手なんですよ。芋蟲とか、自分たちの食べる為に置いていた食べを食い荒らすし、収穫前の畑をめちゃめちゃにされたり、昔の家は古いので蟲がよくり込んできて、涙目でよくいたそうです」
「うーん、紙を食べる蟲もいれば、汚れた部屋にいるな……」
「なので、芋蟲とかやめて下さいね。本気で泣きますよ?」
「自重しよう」
クシュナは頷く。
可い従姉妹に泣かれるのは辛い。
「でも、このパーティ期間に一度見せたい景がある。その時には招待するか……」
「クシュナのプライベートパーティだね。また蟲のことばかりだったら、泣くよ?」
「それをそっくり叔父上にお返しします。地層とか、鉱石の話ばかりだと、引きますよ?」
「蟲よりマシ」
リスティルの一言にグッと詰まったクシュナだった。
よく寢た兄妹は、目を覚ますと、看病でついていたのはティフィである。
本を持っていたのだが、それを見ず、ぼーっと考えごとをしている。
顔を見合わせると、2人は、
「ティフィ〜お腹すいた〜」
「ティフィお兄ちゃん、抱っこ〜」
「リティ、抱っこは僕がするから、ジュース貰おう」
「はい、お兄ちゃん、ジュース下さい」
「わぁぁ!何で2人で?しかも仕草一緒」
呆れるが、ビスケットと冷えた紅茶を出す。
「ジュースは、これから運んで貰います」
「それなら良いよ」
「お茶飲みます。わっ、お兄ちゃんつけすぎつけすぎ」
「まだまだ〜ジャム食べたいもん!」
自分のビスケットだけでなく、食の妹のビスケットにまで山盛りのジャムに慌てて止める。
「兄さん。自分の長期の胃袋と、リティの胃袋を考えて用意してあげて下さい」
「そっか……リティはどれだけ食べる?」
「えっと、ビスケット一口!」
「えっ?ジャムの量じゃないよ?」
「えっと、沢山食べると、お腹一杯なのです」
想像以上の食に、デュアンは、
「じゃぁ、リティは一口食べたら僕かティフィが食べるから、好きなだけ食べて良いよ?」
「わぁぁ……本當ですか?じゃぁ、じゃぁ、これが良いです」
デュアンスペシャルになりつつあるビスケットを示す。
「じゃぁ、アーン」
「アーン……」
必死にかじりつくが、ジャムでベタベタになる。
「わぁぁ、リティがベタベタ……ごめんね」
「顔を洗いに行きましょう」
「ティフィとじゃなく僕と行こうね」
デュアンの聲に、ムッとした顔のティフィ。
「兄上こそ、リティがベタベタになったんですよ?場所わかります?」
「分かってるもん」
「お兄ちゃん……垂れてる、どうしよう」
「わぁぁ!」
デュアンとリティとティフィのデコボコな三角関係はしばらく続きそうである。
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