《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》32……お兄ちゃんは健康です。

デュアンは數日は妹のリティと大人しく眠っていたのだが、飽きてベッドを降りたいと言い出した。

騎士であり、稽古をしたいと訴えたのである。

外見年齢が元々20代にも見えず……顔の家系と垂れ目、そして騎士の割にはがっしりした格ではなかったから、若返っても大丈夫だろうと呑気に考えている所もある。

それに細で溫和な格もあって、部下からも慕われ、上司……と言っても、現在母の実家の侯爵を名乗る為、上司はごくわずかだが……息子や孫のように可がられている。

今回、もあったが、一応鍛えてきたこともあり、すぐに元気になったデュアンの訴えだが、両親……特に父のミューゼリックが反対した。

「まだベッドから出るのはダメだ!寢ていろ!」

「でも、パパ。もう、何ともないんだよ?」

「ダメだ!」

「そうですよ。先輩」

クレスールが聲をかける。

クレスールは、クシュナが塔から連れ出した……にワイン瓶が突き刺さったままのデュアンを見た本人である。

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その後はデュアンと揺するクシュナの代わりに、混する現場を落ち著かせかしていた。

まみれのデュアンが心配ではあったものの、このままでは罪人に逃げられたり、無駄なきをさせては衛兵や後から駆けつけた近衛たちが何もできない。

國王のお膝元の王宮でのこの事件を、これ以上大きく他國に知れ渡ってはいけない。

かなり、クレスールは頑張っていた。

その為、その様子を見て気にった近衛隊副隊長ロビンソンが國王に頼み込み、近衛部隊に隊することになった。

クレスールはデュアンの手腕を知っている為、まぁ、デュアン先輩の復帰までいようかと思っている所である。

「先輩、完全に治ったと、先生の許可は貰ったんですか?」

「うっ……」

口ごもる。

実は、主治醫のアルスは昨晩、

「薬が足りないから、一回家に取りに戻る。大人しくしておけよ?」

と言って帰ったばかりである。

その隙にベッドから出て家に戻り、可いペットたちの顔を見に行きたい。

モフモフしたをブラッシングしたり、ゲージから出して遊ばせたり、リードをつけて散歩がしたい。

乗獣の三日月ミカだけでは、足りないのである、モフモフが……。

「パパ〜!お願い!家に帰って、サチとタロの散歩がぁぁ〜」

「世話はお前の屋敷の侍従に頼んだし、クレスールの子供たちが嬉しそうに散歩と言うか、庭で遊んでいる。お前はここにいろ」

「でも〜」

「死にかかったって聞いたけど元気そうだな〜、デュアン兄ちゃん」

と言う聲に、デュアンはげっとした顔になる。

「な、何で、ここにいるの?」

「ん?來ちゃ悪いのか?じゃぁ、ヒナ?帰るか?」

「えぇぇ〜!ヒナ姫來てるの?」

「アルス先生に聞いたんだよな?ヒナ?」

リティは、長のブルーシルバーの髪と青い瞳の青年が、の手を引いて現れたのに首を傾げる。

明るい金髪、父親は々つり目なのだが垂れ目でまん丸な緑の瞳の可らしいの子である。

二人はこの國とは違う形の服を著ていて、そして、耳には繊細な、前にフェルディに貰った蝶々のようなピアスをにつけていた。

「あれ?デュアン兄ちゃん。彼?」

「違うよ!妹です!全く……リティ。あの方は、シェールド國王アルドリー陛下の弟王子で、アルトゥール・クラウス殿下。そして、その長で僕の婚約者のアーセルディア・シルヴィア王。ヒナ姫と言うのはグランディアの名前です。あ、アルトゥール殿下にもグランディアの名前があって『ノゾミ』って言われるよ」

「……その名前言うな!もう三十路近いのに、何で兄貴たち以外にも言われなきゃなんないんだよ」

アルトゥールは渋い顔になる。

「お名前、嫌いですか?」

「グランディアでは一般にの名前になるんだ。『希』って言う意味のグランディアの文字の1つで、もう1つは雙子の姉の名前になってるんだ。『希ねがい』って言う。まぁ……付けたじいちゃん達に文句は言えないけどな」

「わ、私は、昔の名前はマリアージュと言って……好きな名前じゃないです……ファティ・リティって、お母さんにつけて貰ったのです」

「ファティ・リティ……って、ちょっと待て!確か、マザードラゴンさまの……し子……あ、れ?ヒナの生まれる前、うちに來てた子だよな?えっ?ヒナが7歳で、この子、幾つだ?」

「あっ!申し訳ありません。私はラルディーン公爵ミューゼリックの末っ子のファティ・リティと申します。14歳です。このような姿で、殿下や王殿下に失禮致しました」

リティは、兄と一緒に寢ていた為、頭を下げる。

「14……14〜!デュアン兄ちゃんと一緒に若くなったのか?」

「ど阿呆!」

ミューゼリックは頭を叩く。

ミューゼリックは、アルトゥールの父親も問答無用で叩く數ない人間である。

「リティは若返ってない!全く!父親も馬鹿なら息子もか!孫であるヒナはお利口なのにな?」

「あっ!ミューパパ!」

父親の手をほどき、ミューゼリックに駆け寄る。

ミューゼリックも慣れたように抱き上げる。

「大きくなったなぁ、ヒナ」

「はい!7歳になりました」

「そうかそうか。ほら、デュアン、リティ」

ミューゼリックは子供達のベッドにを座らせる。

「わぁ〜久しぶり。ヒナ姫」

「お兄ちゃん、こんにちは。それに、リティお姉ちゃん、ヒナです。よろしくお願いします」

「えっと、王殿下……?」

「ヒナで、良いですよ?あ、お姉ちゃんって呼んでも良いですか?」

「う、あ、はい!嬉しいです。ヒナちゃん」

リティは頰を赤くする。

お姉ちゃんと呼ばれるのが嬉しくて仕方がないらしい。

「あ、パパ。お見舞い、お兄ちゃんとお姉ちゃんのお見舞い!」

「ハイハイ……最近、ヒナはパパに冷たくなった……」

「ルゥママとアオパパは、もっとやれって言いますよ?コウヤパパとリジーママと、ママは笑ってます」

「……くぅぅ……」

嘆きながらもアルトゥールは荷をベッドの上に置いた。

大荷のそれを引っ張ったヒナは、中から袋を2つ取り出す。

「えっと、こっちがお兄ちゃんにです。で、お姉ちゃんにはこっちです」

1つ1つ丁寧に渡された兄妹は、け取るとリボンをほどき、中を出すと、

「わぁ!ヒナ姫。良いの?こんなに可いの」

「えへへ、頑張ったのです」

デュアンの手には紙で作られたものが沢山っている。

それはグランディアの遊びで、ヒナは伯父國王や、もう一人の伯父に教わったらしい。

鳥や花などがあり、も大きさも違う上に、一所懸命折ったのか、何度も折り直したあともある。

そして、

「わぁぁ、本!綺麗な絵……、あ、しおりがあります。お花?」

「絵本はルゥママが一緒に選んでくれたのです。しおりはリジーママとママに教えて貰ったのです」

「ありがとう。ヒナちゃん。嬉しいです。大事にしますね……あっ、私は何も……」

「お見舞いなのです。お姉ちゃんとお兄ちゃんが元気になったら、ヒナと遊んで下さい」

ニコニコと笑うに、リティは笑いかえす。

「ありがとう。嬉しいです。元気になります」

「僕も!それより僕、一番嬉しいかも。隣がリティとヒナ姫でしょ?仲良し〜」

「じゃぁ、お兄ちゃん。ヒナとお姉ちゃんと一緒に遊んで下さい」

「今から?」

「これです!パパが昔遊んでたのだそうです。えっと、『すごろく』『百人一首』『カルタ』『囲碁』『將棋』です!それに、おままごとセットなのです」

見知らぬものを見て喜ぶリティの周囲では、愕然とするアルトゥールに、ア然とするミューゼリックとクレスール。

「重いと思った……ひでぇ……蒼記兄ちゃん……鬼だ。にっこり笑って、碁盤に將棋盤まで……」

「……お疲れさん」

「お疲れ様。トール」

「ひでぇ!クレス兄貴まで!」

嘆くアルトゥールよりも、初めて見るものに興味がいくリティ。

「これは何ですか?」

「すごろくって言います。コマを選んで、始まり、に置いて、このサイコロを振って出た目に文字が書かれているので、それに従うんです。あがりが到著になるんですよ。コマも沢山あるので家族ででもできるのです」

「あ、こっちは絵と文字……えっと、この文字は……」

「グランディアの文字で、歌になっているんだよ。こっちの絵がある方が全部の歌を書いてあって、こちらの方は下の句と言って、下側の14文字が書かれているんだ」

デュアンは説明する。

「お兄ちゃんは読めるのですか?」

「うん、シェールドに留學していたから。それに、ノゾミはここ生まれだけど、お母さんの先代王妃殿下はグランディア出で、國王陛下と雙子の弟殿下、その二歳下のマルムスティーン侯爵夫人はグランディア育ちで、陛下たちのおじいさまたちに、こう言ったことを教えられたって伺ったよ」

「……私も読めるようになりますか?お兄ちゃん、ヒナちゃん」

「この14文字は教えてあげられるよ。ね?ヒナ姫」

「はい。ヒナも今、勉強中なのです。お姉ちゃんも一緒に勉強しましょう」

3人はすごろくをした後、ノートとペンを持ってきて貰い、グランディアの文字を勉強するのだった。

「……俺、一応、國賓なのに、扱いひでぇ……」

「ま、良いんじゃない?それとも、大掛かりな儀式全部してあげようか?」

「そ、それは、面倒……」

「じゃぁ我慢しな。こっちも、馬鹿を締めるのに忙しいんだよ。なんなら手伝え!」

拗ねるヒナの父親のアルトゥールは、ルーズリアの國王リスティルにバッサリと切られたのだった。

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