《ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし》35……諜報部隊隊長ローズさま

リティは父の膝に乗ったまま、真正面に腰を下ろす貌のをチラチラと見ていた。

自分が14歳だがまだ10歳にも見えないのは、本當に殘念である。

スタイルが良くなりたかったし、背も高くなりたかったのに、今の長はヒナと変わらない。

もうし大きくなったら、パパやお兄ちゃん達とダンスをしてもおかしくないのに……と思っていたのである。

手足もひょろひょろで型なのもコンプレックスである。

しかし、本人はとても気にしているが、周囲から見ると手足が長く、華奢で、顔も小さいのに瞳はクリクリとして大きく、らしい。

瞳は青い、そして落ち著いているが豪奢なザクロの髪は見事で、この場にいるデザイナー兼ドレスコードの最先端を知り盡くす人からすると、悶えしそうな程々なデザインのドレスを作り、著せ替えをさせて貰いたい……ちなみに出費は自分かもしくは人のコの字もない、枯れたこの國の王太子に出させようと目論んでいたりする。

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それを表に出さず、優雅にクッキーを一口食べたは、

「まぁ、味しい。それにこのサイズだったら私達にも口にしやすいわ。ここの王太子殿下が作らせた……訳はないわね。食べられたらいい、毒は慣らしておけば大丈夫と思っているんだもの」

「これは、リティやクレス達の子供たちが作ったんだ。リティは食だから沢山食べられるように小さく、な?」

「これは可いし素敵ね。それに味しいもの」

「あの……味しいですか?」

「えぇ。リティちゃんが作ったのでしょう?とても味しいわ」

微笑む。

頰を染めて、

「ありがとうございます。お姉さま」

「あらぁぁ……本當に可いわぁ。ラルディーン公爵。本當に私の息子の嫁に下さいません?」

「だからやらんと言うのに!リティ。2人には近づくなよ?連れていかれるぞ」

「そんなことしませんよ。ミューゼリックさま。先輩。本當に怪しい行は慎んで下さいね?」

「嫌ねぇ……私のどこが怪しいのかしら」

コロコロとローズは笑う。

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すると遠い目で、アルトゥールが口を挾む。

「ウェイト兄ちゃん。完璧なりきるのやめねぇ?リティが、本気で間違えてるぞ」

「あら。私は仕事と趣味を兼ねているからいいのよ。普段は普段だけれど、暑苦しいルーやエリオット達を締めて、徹底的に再教育させるのって本當にうざいのよねぇ……普段見ているのがアルとかルゥお姉さま方でしょう?脳のアホを徹底再教育って馬鹿らしいししくないわ。可いファーや姫さま達とうふふ、きゃははってしている方が癒されるんですもの」

キョトンとするリティは父親やティフィを見る。

ティフィは、驚かせないように答える。

「この方は、シェールドのマルムスティーン侯爵の従兄弟叔父のレイル・マルムスティーン侯爵ウィリアム・ロズアルド卿だよ」

「従兄弟叔父……お、お姉さまじゃないのですか?」

別は男で、ちゃんと結婚して子供も孫もいるのよ。これは趣味と実益ってところかしら」

違和なくにっこりと笑う。

「私、6人兄弟の下から二番目なのだけど、上の姉4人と妹も父親によく似て、きつい顔立ちなの。まぁ、すぐ上の雙子の姉の1人は私に似ているけど、そのナーニャお姉さまは仕事上大半は男裝で過ごしているから。私は母親に瓜二つのこの顔と、昔はとてもが弱かったから、父親やデザイナーの姉達に著せ替えをさせられて、小さい頃からドレスで生活していたのね。一応、このカイも馴染みになるわ」

「……それは聞いたことねぇぞ?にいちゃん」

「だって短い間だったもの。それに、シエラが誰にも緒でカイのところに、剣を教えに行っていたのよ。で、私も習ったのよ」

首をすくめる。

「一応、レイルの家はマルムスティーンの一族の中でも諜報部隊を率いるのだけれど、私の代はそんなにいい人材はいなかったのよ。で、それじゃぁ、私がこの姿でダンスパーティに潛しようと思って……ふふふっ。馬鹿な男はすぐにベラベラ喋ってくれるし……私のしさに嫉妬するお姉様方にはドレスのデザインの話とか、私の姉達の経営しているお店を紹介したり、いい化粧品をお勧めするだけで同士しか話せないお話を聞かせて下さるのよ」

「この姿でも、本當はシェールドの騎士団に在籍していて、デュアンやティフィ、そこのクレスールにアルトゥールの上司でもあったんだ。カイはカイで本當はこっちに來るのはじられているんだが、急にと言うことであちらの陛下が許可を下さったんだ」

「カイお兄さま……?」

「パパやクシュナのようにリティの伯父さんのリスティル兄貴が王で、この國は王の兄弟や甥に、王を支えてくれとパパ達は兄貴が王になった時に、王族爵位と言って公爵を與えられたんだ。元々パパは侯爵だったのを位が上がったんだな」

ミューゼリックは説明する。

「でもシェールドは、國王の弟のこのアルトゥールも王弟と言うだけで、爵位は騎士の爵位しかないんだ。代わりに、國王の側近である五爵がある。マガタ公爵、カズール伯爵、マルムスティーン侯爵、ファルト男爵、ヴェンナード子爵。そして、一般爵位の10公爵の一つの當主がこのカイ。カイの奧さんが向こうのアルドリー陛下の叔母で、グランディアのお姫様だ」

「お姫様!すごいです……」

「それに、このローズ……ウェイトの奧さんはこの世界中の職人の仕事を一手に束ねる職人、技者ギルドの頂點、通稱歯車公爵のご令嬢。やたらめったら嫁自慢して、リリー公がもうやめて下さいって泣くらしいな」

「ファーは本當に可いのですもの。自慢して何が悪いんです?それを言うならカイは、普段はボケーっとしているのに、綾姫には『もう、これ以上はやめてくれないか……恥ずかしくて歩けない……』と泣かれたらしいじゃないの」

「可いねって言っただけですよ。自分は不用だからと、が不自由なのに必死にや子供達の為に努力する姿はおしいです」

微笑む。

が不自由……?」

「小さい頃、実の親達に待されて、両手と両足の骨が砕かれているんだ。お兄さんのハヤトさんに連れ出されて、今の両親に引き取られたの。や切開手も何回もして……両手の親指がかせるようになって、歩くのも手すりに伝いながらしずつね。普段は車椅子」

リティは目に涙をためる。

「カイお兄さまの奧様……努力家で頑張り屋で優しいですね」

「ありがとう。自慢の妻なんだ。リティちゃんは本當に優しいね」

「……優しいのはパパ達や、育ててくれたじいやとばあや……クレスールお兄ちゃんです。私は、何もできなかった……お兄ちゃんや、ティフィお兄ちゃんが大変な目にあっても、何もできない……」

「そんなことはないわ」

ローズはリティを見る。

「リティちゃんは連れ去られる時に、普通はそのまま連れられていく弱いお姫様じゃないわ。逃げようとしたでしょう?どうして?」

「ぱ、パパとママとお兄ちゃん達のところに……行きたかった。帰って、抱っこしてしかったのです……」

しゃくりあげる娘を抱きしめ、

「偉いぞ……パパとママと約束したもんな?」

「お兄ちゃんに、緒だけどお兄ちゃんの仕事場と休憩室の地図を見せてあげるって……覚えたのです。廚房の皆さんにごめんなさいもしたのです……パーティの邪魔をしたから……」

「クッキー、そんなに作ったのか?」

「ううん、パパ。バウンドケーキにスイートポテトに、フルーツケーキと……あっ!おじいちゃんとシェールドに行った時に作った、ヨウカンじゃなくてシグレって言うのも作りました!アズキがあって、あまり使っていないって言っていたので。ご飯用のお米じゃなくて、もちもちしたお米と混ぜて蒸すんです。味しくできたら、リー伯父さま達に食べて貰えたらなぁって」

「シグレ……こっちでも早々作らないぞ」

ローズは素で喋る。

ちなみに、シグレは『志ぐれ』と書き、小豆を炊いて砂糖に一晝夜漬け込み、うるち米と混ぜてセイロに広げて蒸しあげる。

羊羹よりもモチモチとした食と小豆あんが甘すぎない素樸な味のお菓子である。

「おじいちゃんが大好きだったんです。それに、じーっと見てるだけだったのに、作ってくれた黒髪で黒い瞳のおじさまとお姉さまが、『手伝ってくれてありがとう』って頭をでてくれました」

「黒髪!」

「はい。おじさまがえっと、お父様って呼ばれていて、お姉さまはイ、イジュ、イジュミ?さま……」

「……えっと〜。その黒髪のじいちゃん……俺のじいちゃん……」

アルトゥールが指で示す。

「一応と言うか、俺の母さんの父。グランディアの言葉で『月の』っていう意味の清影せいえいが本名。じいちゃんの嫁であるばあちゃんが、マルムスティーン侯爵家のを引いていて、今のカズール伯爵であるシエラシール父ちゃんの異母姉。その夫婦の三番目で長が母さん。下に4人養子養がいて、その1人がカイ兄ちゃんの奧さん」

「黒髪……」

「じいちゃんはグランディアの直系。綾姉ちゃんもそうだし、清泉いずみさんって呼んでただろう?清泉さんは、カズール伯爵の奧さんで、じいちゃんの従兄弟の子供。俺の育ての親みたいなものかな。母さんあれだし……それに、ばあちゃんと母さんは破壊魔神や魔王を超えてるから……じいちゃんは繊細で多趣味で穏やかな人なんだけど……白髪はないのに、疲労だけが溜まるらしいよ」

「えっとあの……『柘榴姫』っておじさまが言われました。ザクロには花言葉があって、優したしさ、子孫の守護と言うそうです。髪のが自分の家族にはいないって言うと、おじいちゃんのおじいちゃんがその髪のだったのかもしれないね、そのおじいちゃんたちが私を守ってくれているよって」

「じいちゃんが名前をつけた!しかも喋った!」

愕然とするアルトゥールに、こてんっと首を傾げ、

「おじいちゃんとおじさまがよくお散歩してました。お庭に珍しい花が咲いているって、見せてくれたのです。えっと、フジ、ホタルブクロ、ハナショウブ、アヤメ、サツキ、ツツジ……サツキも綺麗な花で、すごいなぁって思ったのですが、私はザクロのに似てるからって言われたのです」

「……じいちゃんが名前をつけたってことは、本気で、世界中から來るぞ……」

「……お菓子を食べに來るのですか?」

「……顔はキリッとしててしっかり者の印象なのに、素でボケてる……ウチの姉さんみたいだ……」

「レイ・ディーアさまか?アーデルハイドさまか?」

ローズの問いに、

「リジー姉さんだよ。ネガは、顔だけ兄ちゃんに似てて、素はマイペース。さー姉さんよりも見た目も格もおっとりしてるのは六槻姉さんで、さー姉さんは図太いもん」

と答えるアルトゥール。

「それよりも、ミュー叔父さん、一回さぁ、リティ連れて來た方がいいって。婚約者もいないままだったら、絶対危険だと思う」

「と言うかデュアンが無理。もしシェールドに留學させたりしたら、自分も付いていくと思う」

「……うん、リティ溺してるから」

叔父甥は、ジュースを飲んでいるリティを見て頷いたのだった。

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